35・金ピカ集団
夜を待ってから黄昏の森にやってきました。この森も攻略する人達がいなくなり、ずいぶんと寂しくなりましたね。いや、この静けさが普通なのでしょう。
盗賊や白い森の出来事、さらにあの謎の強い魔物。以前よりも危険度が増した森の中を歩くのはなかなかスリルです。まぁ、あの白い森にさえ近づかなければ大丈夫でしょう。あの強そうな魔物もそこで出会いましたし。盗賊に出会ったら運が悪かったと思いましょう。
「アール、気をつけてください。そのクモに噛まれると猛毒を受けますよ」
森を歩くとさっそくモンスターとエンカウント。今回は三匹ものクモが一斉に出てきてしまいました。これも人が少なくなった影響でしょう。
「ニルは上空から援護。アール、引きつけるだけでいいので相手してください」
それぞれに指示を出します。ニルは空を飛び、相手のステータス監視。そして必要とあればいつでもダークミストを撃てるように待機です。アールには盾と棍棒を持たせました。
まずは足を奪いましょうか。アールが引きつけている間に【ダークバインド】を詠唱します。【闇魔法】のレベルアップ効果で拘束時間が十秒に増えました。詠唱完了にすぐに発動。三体とも闇の鎖に巻かれて動けなくなります。しかも【ダークバインド】の効果でダメージ入り。レベルが上ったのでそのダメージも結構良くなりました。
すぐにそのうちの一体に【シャドウアロー】を撃ちます。【二重詠唱】効果で【ダークバインド】と一緒に詠唱していました。足を奪った後にすぐに攻撃に移れるのはいいですね。
さらに【ウィンドカッター】でその一匹にとどめを差します。あと二匹ですね。
まだ【ダークバインド】の効果は続いています。その間に次の詠唱を開始。新しく覚えた【暗黒魔法】の【ドレイン】を使用してみましょう。あと一緒に【サンドランス】を詠唱。
その間に狙いを定めていたクモから糸玉の攻撃。すでに二つも魔法を詠唱しているので、防御スキルの【ウィンドシールド】を発動できません。ここは受ける事になりました。
あぁダメージが痛い。しかも【拘束】効果を受けました。これで移動ができなくなりました。
【ドレイン】は詠唱二秒でこちらが先に発動。糸玉をしてきたクモを対象にその体力を奪い、自身の体力を回復します。さっき減らされた分が回復しましたよ。スキルレベルが上がるとその量も増えていくようですね。
一緒に唱えていた【サンドランス】をそのクモに撃ちます。【ダークバインド】の効果と【ドレイン】効果で体力が少なくなっていたそのクモはその一撃で倒れました。
さて、あと一体ですね。すでにその敵は【ダークバインド】の効果が切れて動けるようになっていました。
そのクモはアールが攻撃していました。先程から攻撃をしていたのでクモの体力は残り僅かです。……いや、ちょっと待って、アールの体力が半分くらいになっているんですが。相手は今まで動けなかったはずですよ。今もまた攻撃食らっていますし、あー攻撃外しました! そして糸玉喰らいました!
「【アースシールド】!」
クモの糸で【拘束】状態になったアールを守るように土壁を出現させます。よし、クモの攻撃を防ぎました。あとは【ウィンドカッター】で倒します。
「危なかった」
体力が危ないアールをポーションで回復してあげます。
「アール、あなたは戦闘が得意ではないのですね」
アールは小さく頷きます。今の戦いを見て分かりました。アールはオークですが、どうやら戦闘が苦手みたいです。東の森で見かけたオーク達と比べてアールの動きは悪いですね。
そんなアールはしょんぼりと肩を落としていました。
「そんなにがっかりしないでください。最初の方はしっかりクモ達の注意を引きつけてくれていましたよ」
そう言ったら立ち直ってくれました。あなたは立派に仕事をしましたよ。そこで寝ている白い奴と違って。確かにあなたも十分仕事をしていましたが、戦闘が終わったからって寝ないでください。
その後は採取をしつつ時々現れるモンスターと戦いました。【土魔法】がレベル10になったので、新しい魔法の【クエイク】を取得。
そして【暗黒魔法】がレベル5になり、【闇の代償】を取得。常時発動型のパッシブスキルで、状態異常中に攻撃力が上がるようです。しかも数が多ければそれだけ威力が上昇するとか。……そういえばこの前状態異常を十個も付けてくれたスープがありましたっけ。
「……ニル、どうしました」
頭の中で素晴らしい考えをしていた時でした。ニルが辺りを警戒するようにキョロキョロとし始めました。こういうときは大体よくない気配を察した時。
背後の草木ががさりと揺れます。思わず横に避けると、私の目の前を鋭い赤い爪が通り過ぎ、そして大きな巨体も通り過ぎていった。
「グルルルゥ」
獣の唸り声が静かな森に響く。それは赤いドロリとした液体を被った四足の獣のような形をしています。体から滴る赤黒い液体は落ちた地面を焦がしていた。
「……なんでしょうか、アレは」
あのモンスターはこの森で見たことがありませんし、聞いたこともありません。いや、もしかしてミランダさんが言っていたのアレなのでしょうか。
あっ思い出した。見たことがないと思っていましたが、アレは一度見ていました。そうです、私を白い森で殺したあいつです。まさかこんな所で出会うなんて思っていませんでした。てっきりあの白い森にしかいないモンスターだと思っていたのに……。
ニルの識別ができていない。体力が見えていません。明らかに私達よりレベルが高いモンスターです。
「あぁ、この前の借りが返せそうです」
さぁアールも覚悟を決めてください。高レベルモンスターに出会おうが、私に逃げる選択肢はないんです。死に戻り確定コースですけど、ここは立ち向かいますよ。
それに今回はまだ死んでいませんからチャンスがあります。一撃、一撃入れれば勝てるかもしれません。そのための材料ならここにありますから。
「いたぞ! 赤い獣だ!」
人の叫び声が聞こえてきたかと思うと、今度は雷魔法が飛んできた。それはあの獣に当たります。その一撃を喰らった獣は逃げるように私達の前から居なくなりました。
「チッまたか。追え、逃がすな!」
草むらの陰から怒号と共に現れたのは金ピカの集団。パーティを組んでいるようで、八人。その全員が金色の鎧や服装をしていました。数人が獣を追って走っていきます。
「ん、なんだテメーは。まさかオレ達の獲物を横取りするつもりじゃねーだろうな」
その集団のリーダーらしき人物に話しかけられました。さて、どう答えたものか。
「横取りをするつもりはありませんでした。ただ、アレには個人的に倒したい理由があります」
「そうか、じゃあ悪いが諦めてくれ。アレはオレ達の獲物だ。というか先にオレたちが見つけた奴だからな」
「……アレは私が先に見つけました」
「じゃあ、証拠でも見せろよ」
……悔しいですがそんな証拠はありません。仕方ありません。ここは引きましょう。これ以上言ってもトラブルになりかねません。
他人が戦っていたモンスターに、攻撃を仕掛ける横殴り行為は基本的にダメですからね。この場合だと私の方が横殴りをした形でしょうから。
それに私がアレを相手にしても倒せる確証は限りなく低いです。
「あ、一つ聞いてもいいでしょうか?」
「なんだ、文句でもあるのか?」
「いえ、さっきの魔物の正体をご存知ですか?」
「いや、知らねーよ」
「知りもしないのに倒そうとしていたのですか」
「見たことない奴だからレアドロでもしそうだと思っただけだ。というかお前だってそういう魂胆だろうが」
残念ですね、こちらは純粋な復讐ですよ。
「チッとにかく邪魔だけはするなよ」
金ピカのリーダーさんは他の仲間と共に森の奥へ消えていきました。
それにしてもあの人達は見たところ普通のプレイヤーですね。普通とはロールプレイヤーではないという意味です。普通のプレイヤーとあまり関わりがなかったので、ちょっと新鮮でしたね。
名前:クロエ
種族:人間
性別:女性
【生まれ:ブラッドリー子爵家】
【経歴:家出し旅に出た】
LV20 残りSP19
基本スキル
【両手杖LV20】
【魔法知識LV20】【魔力LV20】
【闇魔法LV20】【暗黒魔法LV5】
【風魔法LV20】【土魔法LV10】
【月光LV15】【下克上LV13】
【召喚:ファミリアLV20】【命令LV17】
【暗視LV20】【味覚LV20】
【鑑定:植物LV20】
【採取LV18】【調合LV20】【料理LV10】
【毒耐性LV13】【麻痺耐性LV13】【睡眠耐性LV12】
【言語:スワロ王国語LV12】
ユニークスキル
【言語:ヘイス地方語】
【身分:エンテ公国・ブラッドリー子爵家】
【野宿】【土地鑑】
称号
【ベリー村の救世主】
名前:ニル
種族:使い魔
性別:オス
LV20
基本スキル
【闇の知恵LV20】【ダークミストLV13】
【看破LV15】【冷たい視線LV13】
ユニークスキル
【森の賢者】【夜行性】




