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セカンド・ストーリー・オンライン 理想の魔女目指して頑張ります。  作者: 彩帆
第一幕

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34/130

34・のんびり店主のミランダさん

 扉を開けると華やかな店内が出迎えてくれます。花柄とピンクの内装は店主の性格を表したよう。売っている商品は実に様々。ポーションなど冒険に必要な品々から日用品、一体どこで使うのか分からない品物まで。


「いらっしゃいませ~」


 そしてのんびりした店主の声が客を出迎えます。この品物の管理をきちんとできているか、少し心配になりますね。まぁこの人なので、きっとできていると思いますけど。


「こんにちは、ミランダさん」


 気がついたら常連になっていた雑貨屋の店主、ミランダさんにあいさつをします。ミランダさんも私に気がついて笑顔を返してくれました。


「あっクロエちゃんいらっしゃい~。何か探し物? それとも売りに?」

「売りですね。ポーションをいくつか作ったので買い取ってくれますか?」

「もちろんだよ~」


 のんびりした印象を受けるミランダさん。だけど仕事は早く、すぐに出したポーションの数を数えて精算してくれました。


「んーっと全部で三万三千Gだね~これでいい?」

「ええ、それでお願いします」

「まいど~」


 ふわふわっとした笑顔をしながら代金を渡してくれました。


「クロエちゃん、もう初心者ポーションから卒業したんだね」

「気づいたんですね」

「だって売りに来たのが初心者用じゃないもん、誰だって気づくよ~」


 ふわっと笑っていたミランダさん。だけどその笑顔がなくなりました。


「……そっか、もうそこまで成長したんだね。クロエちゃんもこれから王都に行くんでしょ」

「これから王都に? いえ行く予定はありませんよ」

「えっ行かないの?」


 なんだか驚かれました。


「どうしてそう思ったのか分かりませんが、私は先程も言ったように行く予定はないです」

「そうなの? ほんとに?」

「ええ。少なくとも今のところは行く目的がありませんし」

「そうなんだ! そうなんだね! やった~!」


 笑顔が戻ったミランダさんに両手を掴まれてブンブン振り回されました。


「どうしたんですか、いきなり」

「あ、ごめんね。なんだか嬉しくて。えっと、初心者を卒業した子のほとんどはみんな王都に行くから……クロエちゃんもそうなのかなって思って」


 あーなるほど。確かにレベル二十を超えるとプレイヤーはこの街を離れていきますね。なんでも最初から受けられるチュートリアルクエストの続きから始まるクエストにそって進むと、王都の方に行くらしいです。そうでなくても、この初心者の街より王都の方に行きたい人の方が多いらしい。田舎の人が都会に憧れるアレと同じですね。


「せっかく仲良くなってもみんな王都の方に行っちゃってそれっきりって人が多くて……。だからクロエちゃんが行かないって言ってくれて嬉しかったんだ~」


 ふわりとした笑顔でミランダさんが言います。こう言われてしまうとここから離れられなくなりますね。


「そういえばクロエちゃん、パーティを組んだんだね」


 ミランダさんがアールを見て言います。アールは先程から物珍しそうに商品を見ていますね。


「いえ、あれは従者ですよ」

「あ、従者だったんだ~。ということはこの前買ってくれた【従者契約書】使ってくれたんだね~」

「まさかこうも早く使う事になるとは思いませんでしたけど」


 アールとの出会いは突発的でしたからね。そういえば契約の内容を変えていませんでした。今のところアールの方から不満はなさそうですけど、雇い主として無賃金で働かせるわけにはいきません。考えておきませんと。


「そうだ、ミランダさん。かばんは売っていますか?」

「あるよ~どんなタイプが欲しいの~?」

「そうですね……ポーションを取り出せるサイズで腰のベルトに付けられるタイプと肩掛けのかばんをお願います」

「了解だよ~。クリン、倉庫にそれっぽいものあったよね~?」


 ミランダさんがバイトの少年くんの名前を呼びつつ、店の奥に引っ込んでいきます。


 実はかばんが欲しいと思っていたんですよ。アイテムの出し方はインベントリを開くとできます。ですが他にも方法があったみたいなんですよ。それがかばんを使ったアイテムの出し方。


 かばんに手を入れてインベントリにある物を思い浮かべれば、それがかばんから取り出せるみたいです。いちいちインベントリを開く手間が省けます。それにかばんから取り出すのも、ゲーム感が薄れて良い。良いこと尽くめです。


 ただし、出す物の大きさはかばんの開け口から出せるサイズでないと出せないことや、インベントリにある物の詳細を記憶しておかないといけません。


 ミランダさんが持ってきたかばん二つを受け取ります。一つは腰につけるタイプの物。ポーションなどなら問題なく出し入れできますね。もう一つは大ぶりの肩掛けかばん。そこそこの大きさの物でも問題なく出し入れできそうです。


「こっちの小さいのは五千Gで肩掛けの方は八千Gだよ~」

「分かりました。では両方共買います」

「まいど~」


 買ったかばんはその場で装備します。腰につけるかばんを装備。これで戦闘中にいちいちインベントリを開く手間が省けますね。大きな肩掛けかばんはアールに渡します。そのかばんの中にいくつかポーションを入れていく。これで何かあった時にアールもポーションが使えますね。


「ちなみに【従者契約書】をもう一枚買う予定はある?」

「ありません」


 さすがミランダさん。気を抜くとこの人にあれこれと買わされます。


「それではこれで失礼しますね。これからまた森の方にポーションの材料を探しに行きますので」

「森って……もしかして黄昏の森の事?」

「そうですけど」


 ミランダさんが心配そうな表情をしました。


「あのね……さっき店に来たお客さんからの話なんだけど。あの森には今強い魔物がうろついているって話なんだ」

「強い魔物ですか?」

「そうそう。その人達も命からがら逃げてきたんだって。だから行くなら気をつけてね」


 強い魔物ですか。この前の白い森のことと関係がありそうですね。


「ご忠告、ありがとうございます」

「うん、また来てね~」


 心配そうにしながらも、手を振って見送るミランダの店を後にします。



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Gzブレイン様より出版しました!
大筋は変えず色々加筆修正やエピソードを追加してあります。
kaworuさんの超綺麗で可愛いイラストも必見ですので、どうぞよろしくお願いします!
i328604
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