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セカンド・ストーリー・オンライン 理想の魔女目指して頑張ります。  作者: 彩帆
第一幕

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33/130

33・魔女らしさを求めて


 /////////////////



 【デュオ地方総合情報Part121】



 こちらはデュオ地方での総合情報板です。

 デュオ地方での情報のやり取りなどにお使いください。



 ////////////////



 120://ななしの二人目さん

 せっかくデュオ地方から出られたのに言語で躓いたし……


 121://ななしの二人目さん

 >120 俺も躓いたわ……テッセラ地方の言語ってなんだよ

 デュオの地方言語だけでも厳しかったのに


 125://ななしの二人目さん

 ゲームで言葉が不自由になるとは思わなかったな


 126://ななしの二人目さん

 >115 おまえヘイス地方の奴だな!公女様よこせ!


 127://ななしの二人目さん

 ヒツジもふもふ……もふもふ……


 128://ななしの二人目さん

 これだから現代っ子は


 135://ななしの二人目さん

 王都の騎士団入団試験受かる気がしない


 137://ななしの二人目さん

 >135 俺と一緒に地方兵士になろうよ。門前に立って村名を言う簡単な仕事だぞ?


 138://ななしの二人目さん

 もふもふしてたらなんかスレ間違ってたし。帰る


 139://ななしの二人目さん

 >137 まじかよ、あれNPCじゃなかったのかよ!?


 140://ななしの二人目さん

 >121 テッセラ地方は神都語が公用語だからそれさえ喋れればなんとかなる


 144://ななしの二人目さん

 言語とか……まだ俺は黄昏の森を出られないからそんな話とは無縁だ

 なんか白い霧とかよくわかんないモンスターに殺されたり……本当死者の森だぜ


 146://ななしの二人目さん

 白い霧なんか出てたか?


 148://ななしの二人目さん

 >139 ただでさえNPCはあの完成されたAIと名高い旧型を積んでそうなのに、

 ロールプレイヤーも多いこのゲームだもんな……見分けなんてつくわけない


 150://ななしの二人目さん

 >138 ヒツジくださいよーもっふもふー


 151://ななしの二人目さん

 白い霧に森ってなんだよ。黄昏の森は暗い所だろ


 155://ななしの二人目さん

 まさか隠しエリアとかダンジョンとか……?




///////////////





「いいですか、もし落ちそうだったら受け止めてくださいね」


 私の言葉に木の下にいるアールが頷きます。……あまり見上げないでくださいね。スカートの中が見えてしまうかもしれませんから。


 私は今ダイロードの街にある広場にいます。その中で木々がある場所を選んできました。それはとある事をするために。


「では、行きますよ」


 不安定な木の枝の上で私は箒に乗ります。近くの木に止まっているニルが興味がなさそうに見ていますね。何をやっているのかと言いたげです。


 何をしようとしているかと言うとそれはもちろん、箒に乗って空を飛ぼうとしています。魔女なのですから、箒に乗って空を飛ばねばなりません。これは魔女に必要な技術でしょう。箒で空を飛ばない魔女も、まぁ探せばいるでしょうができれば飛んでいて欲しい。だってそのほうが素敵だと思いませんか。


 その願いを叶えるために、もしくは世間一般の魔女像を壊さぬ為に。今私は――


「飛びなさい!!」


 木の枝を蹴り飛ばし、宙に躍り出ます。一瞬の浮遊感。でもそれは飛び出した勢いの力。その後は重力に引かれる様にひらひらと舞い散る木葉と共に、落下。


 箒を手に無様に落ちる私をアールが受け止めてくれました。


「……スカートの中は見えていませんよね?」


 アールは必死に首を左右に振ります。……今度やる時は衣装を変えましょう。今日は仕方ないのでこのままですが。


「さぁ、もう一度行きますよ。今度は風魔法を使用してしましょう」


 アールが心配そうにこちらを見ています。心配いりません。これくらいの落下ダメージでは死にませんから。それに、


「あなたが受け止めてくれるから大丈夫でしょう?」


 というわけで二回目行きますよ。アールは止めたかったようですが、諦めてくれました。もう一回木の上に登ります。そして今度は風魔法の【エアショック】を詠唱させ、待機状態にしておく。今は杖を装備していません、箒を装備していますから。だから攻撃力は杖を装備している時よりはないでしょう。


 しかし、今必要なのは攻撃力でありません。


「風の力よ、我が思いに答え力を貸しなさい」


 【ウィンドステップ】も発動させ、体に風を纏わせる。これは移動速度がアップする魔法ですが、その効果よりも風の力が欲しいのです。


 箒を手に空を飛ぶ。それには魔法を用います。この世界でも可能でしょう。ですがスキルが無ければ無理です。その箒を使って空を飛ぶことを知っていても、それを行使する呪文を知らない。


 知りはしない、しかし起こした行動によってひらめく事がある。それが取得可能となったスキルが出現する理由だと考えます。キャラクターが起こした行動により、キャラクターがひらめいた、または学んだことが自身の技術として得た力だと。


「さぁ今度こそ、飛びますよ」


 枝を蹴飛ばして、また宙に躍り出る。待機させておいた【エアショック】を石畳の地面に放てば、その勢いに乗って上空へ。


「……おお」


 家の屋根を飛び越えて空が近くなる。足元には草原の中にあるダイロードの街が広がっていました。


「飛ん――でませんでした!」


 まぁエアショックで上空に打ち上げただけですからね。蹴りの勢いが風の力でちょっと増しただけですから。ですが、少しだけ箒を手に飛んでいた感覚を持った気がしました。


「……あれは白い森の方角」


 落ちる寸前に西の方角をチラリと見ました。あちらは白い霧に上空まで覆われているようで森の状態はよく見えません。ただ薄らと透明な壁が見えた気がしました。それはドーム状に広がっており、上空からの侵入も寄せ付けないかのようです。あの壁があると理解しているから私には見えているのでしょうね。


「ありがとうございます、アール」


 その後は、きちんとアールに受け止めてもらって事なきを得ました。あの高さなら瀕死くらいでしょうが、高所から落ちて地面に激突するのは結構怖い。痛いんじゃなくて怖いんです。


 もう少し続けていたらクロエが感覚を掴んでくれるでしょう。ですが今日は止めておきます。痛みはなくても怖い思いはあまりしたくありませんから。この先もし箒を手に空を飛ぶ時が来たら、この恐怖は克服したい所ですね。


「私もニルみたいに早く空を飛んでみたいですね」


 クロエ的には恐怖とか無さそうですけど。


 さて、箒で飛ぶことは今後の課題として次に別の事をしましょう。魔女らしくあるためには何も箒で飛ぶことが全てではありません。魔女といえばやはり怪しい薬でしょう。


 とりあえずまずは普通に回復薬を作りましょう。初心者用ではありませんよ。ちなみに普通のポーションの材料は薬草とグリーンハーブという物が必要。グリーンハーブは【鑑定:植物】のレベルが上がったお陰で識別できるようになりました。


 中級者用の調合キットを取り出します。大きなすり鉢で薬草とグリーンハーブをすり潰しましょう。これら二つとも【味覚】スキルで判別して良い味の方を採用しています。


 これらを鍋に入れます。水は街の井戸で汲んできた物です。グツグツと煮込まれていく鍋をかき混ぜて、調合時間が終われば完成。【おいしい回復ポーション:☆☆☆】ができました。ランクは星三つ以上にはなかなかなりませんね。その辺に生えているだけの植物を使用しているから、いくら上手に作れた所で上がらないのでしょう。


 そうそう、調合スキルで作っているのですが、どうやら料理スキルも一緒に上がるようです。鍋で煮込む行動が料理と似ているからでしょうか。


 ついでに魔力ポーションも作りましょう。工程は大体同じです。魔力草とさらにブルーローズという花を一緒にすり潰して煮込む。できたのは【おいしい魔力ポーション:☆☆】。拾ってきた物の中でも質の良い物を使っていますが、難易度が高いのか別の原因かわかりませんが星二は稀で星一ばかりです。失敗も多いですね。レベル不足が原因もありそうです。


 次は毒消しを作ります。あとそれから麻痺消しに眠気覚ましも作りましょう。これらも作れるようになったみたいです。全部ホワイトハーブと合わせるとできるみたいですね。ホワイトハーブすごい。


 ポーション作りはこんなものでしょう。さて、ここからは魔女らしくいきましょう。回復薬だとか解毒薬も作るのは当たり前です。ですが毒薬や劇薬も作るのも魔女でしょう。むしろそっちを作るイメージがありますよね、毒リンゴだとか。


 ここにレディブラックという植物があります。見た目は確かに黒く貴婦人のドレスのようなにヒラヒラとしている植物。これはホワイトハーブとは反対の効果を発揮するようです。ホワイトハーブが効果の打ち消しを促す物なら、これは効果の増幅を促すわけです。


 毒草と共に煮込めばあら不思議、毒薬の完成。味は分からないけど多分コーヒーだと思います。レディブラックがそんな味でした。ついでに水も良くして【おいしい毒薬】も作りましょう。これで気に入らない人がいたらこそっと毒殺できますよ。


 まぁ私はしませんけどね。だってクロエが毒殺なんてしないと思いますよ。やるなら真正面から相手に毒薬だと分からせた上で、口に毒薬を突っ込むと思います。……よし、いつか機会があったらやりましょう。


 ついでに麻痺薬と睡眠薬も作ります。しかし、全部効果がバラバラというのも面倒ですね。というわけで作った毒薬と麻痺薬と睡眠薬、さらにレディブラックを投入。


 そういえばインベントリの中にクモの毒袋がありましたね。くもの足……これも入れておこう。鹿肉とそのシカの角も入れて……あとはキノコに……ゴブリンの毛がありますね。あ、コウモリの羽もまだあった。


 途中から面白半分に目についた物を適当に入れていました。そんな明らかにヤバイ感じの物をグツグツと煮込んでいます。色がどす黒い何かになりつつあります。鼻につくにおいも悪臭に近い。失敗したわけではなさそうなのが……まさかこれで成功判定なんですか。


 そんな感じで混ぜていたら、ボフンッと黒い煙が出る。どうやら完成してしまったみたいです。


 【暗黒スープ:気まぐれか、または気が触れたか。調理者の悪意に満ちたスープ。食べればこの世の地獄を味わうだろう】


 ……薬を作っていたはずがスープになりました。【料理】スキルももちろん上がっていますね。この世の地獄ってなんだろう。気になります。


「止めないでください、アール。私は製作者としてこのスープの効果を確かめねばなりません」


 味見をしようとした所でスープの入った鍋をアールに取り上げられました。そんな必死に首を振ったって私は聞きませんよ。 


 飲んだら死にそうなのは私も分かっています。だからちょっとだけ! 味見程度で済ませますから!


 それにあまりひどい味だとは思いませんよ。味覚システムは優秀です。そういう味も再現できるようですが、制限がかかっているようです。つまりは人間が口にしていいレベルの味ですよ。だからきっと大丈夫です。


「アール、私の邪魔をしないでください!」


 もう一度言ったらアールの動きが止まりました。硬直したかのような止まり方だったので、たぶん【命令】スキルが働いたのでしょう。よしっ。


「いい子ですね。安心なさい、コレの味見は私だけでおこないますから」


 全然安心した表情をしてないアールを尻目に、彼の持っている鍋からスープを掬います。スプーンで一口。ふむ……


「……ガハッ」


 口に入れた瞬間にむせるほどに味が広がる。味の説明なんてできない。あえて言うなら苦味とすっぱさと辛味が織り交ざり、地獄の門が口の中で開かれたかのようです。舌が焼けるように熱くしびれているのは、地獄の業火にでも焼かれたのでしょうか。


 ふらっとしましたがなんとか倒れませんでした。システム的に大丈夫だと思いましたが、これは人間が口にして大丈夫なレベルではなく、人間が口にして大丈夫の限界ギリギリの味でしたね。


「ってあれ……」


 体が上手く動きません。それに視界も酔ったかのようにグニャリとしていく。よく視界端を見たら異常状態が付いていました。


 【毒】【麻痺】【睡眠】【腹痛】【高熱】【衰弱】【虚弱】【鈍足】【めまい】【飮食無効】……うわぁ。


 毒と麻痺と睡眠は耐性で効果が薄い。だけど腹痛と高熱の持続ダメージと、衰弱のステータス低下と、虚弱による体力最大値の減少があります。あと鈍足と目まいと飮食無効。ただでさえ体力低いのに、十個もバッドステータスが……HPの減り方が尋常じゃありません。


 ですがその効果も二秒くらいでなくなりました。スプーン一杯だけだったからでしょう。


「危ないところでした……」


 HPの四割ほどがたった二秒でなくなっていました。油断しすぎましたね。まさかここまでとは……。でも敵に使用したりしたら良いと思いますね。


「上出来ですね。味はなんとかしたい所ですけど」


 自分で使うわけじゃないならこのままでもいいかもしれませんが。


「どうかしましたか、アール?」


 スープの使い道を考えつつそれをしまっていた時にアールが近づいてきました。そして差し出されたのは先程私が作った回復ポーション。そういえば体力を回復していませんでした。


「どうせ放っておけば治りますよ」


 戦闘状態でもありませんし。すぐ自然治癒で治りますって。


 ……そしたらアールは突然頭を下げます。素早く頭を上げたかと思うと、私の言葉を聞かずにポーションを使用しました。体力が回復していきます。


「……アール?」


 アールはまた謝るように頭を下げます。頭を下げていますが、彼のほうが背が高い。自然とその目線の下にいた私と目が合います。どこかこちらを気遣うような感じですね。


 アールは私の心配でもしているのでしょう。今までの行動を見るにそれは分かります。箒に乗って木から飛ぼうとしたり、今みたいに明らかにヤバイスープを飲もうとする度に止めていましたから。


 ……今考えると私の行動はどれも危なっかしいですね。魔女ロールに必死でそんな考えはあまりありませんでした。私はゲームとしてプレイしている所も原因でしょうね。どうせゲームなのだからと。


「……すみません、あなたには心配をおかけしました」


 でも目の前にいるアールには、きっとそんな考えはないでしょう。アールにとってこれはゲームではないでしょうから。その心配は本物でしょう。


「ポーション、ありがとうございますね」


 この前とは反対になってしまいましたね。アールはほっとするように笑ってくれました。オークなので可愛いとは言い難い笑顔かもしれませんが、少しだけ愛嬌があるように思えてきましたよ。


「ですが、今後も無茶な事は止めませんから。従者としてサポートをお願いしますね」


 だからこちらも満面の笑顔を返しておきました。私もこの世界に生きる者としての演技(ロール)を返しただけに過ぎませんよ。


 それにしてもアールといい、NPCらしき人達は皆人間に近い行動を取りますね。やっぱり、あの旧型のサポートロボットに使われていたAIを流用している噂は本当かもしれません。今度あの子に教えてみましょう。


 そしたらあの子もこのゲームをプレイしてくれるでしょうか? 楽しみが増えましたね。





 名前:クロエ

 種族:人間

 性別:女性


【生まれ:ブラッドリー子爵家】

【経歴:家出し旅に出た】


 LV20 残りSP19


 基本スキル


 【両手杖LV20】


 【魔法知識LV20】【魔力LV20】


 【闇魔法LV20】【暗黒魔法LV1】

 【風魔法LV20】【土魔法LV8】


 【月光LV13】【下克上LV11】


 【召喚:ファミリアLV20】【命令LV16】


 【暗視LV20】【味覚LV20】


 【鑑定:植物LV20】


 【採取LV18】【調合LV20】【料理LV10】


 【毒耐性LV13】【麻痺耐性LV13】【睡眠耐性LV12】


 【言語:スワロ王国語LV11】



 ユニークスキル


 【言語:ヘイス地方語】

 【身分:エンテ公国・ブラッドリー子爵家】


 【野宿】【土地鑑】


 称号


 【ベリー村の救世主】


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Gzブレイン様より出版しました!
大筋は変えず色々加筆修正やエピソードを追加してあります。
kaworuさんの超綺麗で可愛いイラストも必見ですので、どうぞよろしくお願いします!
i328604
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