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セカンド・ストーリー・オンライン 理想の魔女目指して頑張ります。  作者: 彩帆
第一幕

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32・眠るステーキ

 今日はいつもより早めにログインしました。だってアールが心配でしたから。


「……アールがいない」


 部屋の中には誰もいませんでした。あの巨体はどこにも見当たりません。


「ニル、大変です。アールがいません」


 召喚したニルは眠そうにあくびをしています。そしてベッドのふかふかとしたシーツに埋もれるように二度寝をし始めました。


「まったく……」


 そんなニルを余所にアールがどこに行ったか考えます。アールにはどこにも行くあてはなかったはずです。ならどこに行ったのか。


「これは?」


 視界端にあるミニマップが目につきました。私とニルを表すマークが二つ。そしてこの部屋の外にもマークがありました。思わず窓の外を見ます。


「いました。ニル、行きますよ」


 ドアを開けて外に出ます。廊下に出たところで飛んできたニルが私の肩に止まりました。


 ニルを引き連れて宿屋の裏口から出ます。そこには干されて風にたなびくシーツが並んでいました。


「はい、これが最後の一つです!」


 大きなシーツを両手で抱えた女の子。その子からひょいと大きな手でシーツを受け取って、シーツを干している大きなローブ姿がありました。


「手伝ってくれてありがとうね、大きいお兄さん!」


 女の子が空になった洗濯カゴを持って私達と入れ違いに宿屋の方に戻っていきます。アールはゆっくりと手を振りながら見送っていますね。


「探しましたよ、アール」


 そんな姿にほっとしながら声を掛けます。するとアールはやっと近づく私に気がついたのか、びくりと体を震わせました。


「驚きましたよ。あの部屋にいるように言ったはずなのに、あなたが部屋にいなかったので」


 アールが気まずそうに目線を泳がせます。手をいじりながら落ち着かなさそうにしていました。


「この街にいる間はあまり一人で行動するのは危険なので気をつけてください」


 オークですから人に見つかった場合、攻撃される恐れがあるでしょう。さっきの子も気がついていなかっただけで、正体に気付いたら大人に知らせていたかもしれません。アールは落ち込むように下を向きました。


「まぁ、今回は理由があったようなのでいいでしょう」


 一つ微笑みを返します。あの女の子の手伝いをしていたのでしょう?


「何をしているのですか、さっさと朝食を食べに行きますよ」


 しばらく歩いてアールが付いてこなかったので声を掛けます。すると後ろから慌てるように走ってくるアールの足音が聞こえてきました。



 *****



 さて朝食ですね。どこかに買いに行こうかと思いましたが、私は料理スキルを所持しています。せっかく取ったのですから利用しないわけにはいかないでしょう。


 部屋に戻って朝食を作る準備をしましょう。買ったばかりの初心者料理キットを取り出す。実は中級者用も買ったんですよ。ミランダさんは本当に商売上手ですね、お陰でお金がまた無くなりましたよ。


 これを使えば簡単な料理を作ることが出来ます。具体的に言えば使える材料が一つから二つの料理ですね。


 何を作りましょうか。インベントリを眺めて材料にできそうな物を探します。うーん、オーク関係のドロップ品が五十個くらいありますが材料になりません。


 痺れキノコ、毒クモの足、鹿肉……全て【黄昏の森】でポーションを売り歩いている時に、倒したモンスターから得たアイテムですね。うん、鹿肉なら使えそう。


 鹿肉をインベントリから取り出す。新鮮そのままな感じの肉の色。それを適当に切り分けてフライパンでただ焼いていく。


 ただそれだけの工程ですが楽しいですね。あぁそう言えばこういった料理を作るのは何年ぶりでしょうか。最近は便利になってしまいましたから、レンジとか機械に任せてばかりでしたからね。


 そして出来上がった【鹿肉のステーキ】。朝食には似合いませんけど、現実の時間で考えれば夕飯にはなるでしょう。ちなみにもちろんニルとアールの分もありますよ。


「さぁ食べてみましょうか」


 ただ焼いただけですが、匂いはおいしそうな感じです。見た目も完璧。それを一口。


「焼いただけですがこれはこれで――」


 ……視界の端に状態異常のアイコンが現れたのですが。


 ニルが寝ているのは相変わらずとして、アールまでも眠るように倒れた。

 あぁ、そう言えばこの鹿は普通の鹿じゃなくて、【トワイライトディア】と言って相手を眠らす厄介なモンスターでした。だからあまり出会わない様にしていたんです。だってソロで活動している私が眠ったら何もできなくなるではありませんか。


 そう、今みたいにね。


 視界が暗くなります。睡眠状態になりました。【睡眠耐性】持ちとはいえ、五秒間はこのままみたいですね。キャラ(クロエ)は寝てしまいましたが、プレイヤーである私には睡眠の効果はありません。だからこの真っ暗な画面のまま、効果が消えるのを待つのみです。これが戦闘中じゃなくてよかった。


 五秒が経過したので状態異常が消えます。ニルとアールは寝たままですね。彼らは耐性を持たないから効果が続いたままのようでした。


「二人とも起きてください」


 揺さぶって起こすとアールが目覚めました。睡眠の効果自体はレベルの低いものだったのでこうやって誰かが起こせば起きるようです。元の【トワイライトディア】がしてくる催眠術だとこうはいかないでしょう。


「ほら、ニルも」


 ニルも起きたようですが、また眠りました。状態異常は終わったはずですよ。まぁこちらは放っておきましょう。


 それにしても、初めて作った料理でまさか眠るとは思いませんでした。料理に使った鹿肉が悪かったです。でも、確か鹿の角にある呪石から催眠術を発生させていた気がするんですけどねぇ……。


 あぁ味はそこそこです。ただ焼いただけだったので何か物足りない感じ。


「おじさんの肉の串焼きはおいしいのに」


 インベントリに残っていた肉の串焼き。それを一口食べてみます。やっぱりこちらのほうがおいしいですね。使っている肉が違うことや焼き方がいいのでしょうか。香辛料も関係しそうですね。


「香辛料か……」


 インベントリを開きます。確かハーブの類がたくさんありましたね。


「睡眠の効果を消して、さらに香辛料にもなりそうな物は……」


 あの【鹿肉のステーキ】の味を思い出しながらインベントリとにらめっこ。そしてハーブと思わしき物として分けてあった雑草を食べ比べしていきます。


「これですね」


 見つけたのはぴりっとした味のする草。【味覚】スキルが仕事しているのか、これを使えばいい感じだと分かる。それにしても、これは何の植物なのでしょうか。試しに鑑定。……失敗。やっぱりまだレベルが……


《鑑定スキルがレベル20になりました》


 あ、どうやら今の行動でレベル20になったようですね。そのお陰か、今まで雑草だと認識されていた物が変わりました。それは今手に持っているハーブらしき物も。


 名称がレッドグラスという、細い葉っぱで赤い色のハーブでした。今度は残っていた鹿肉とレッドグラスを使って作ります。一回目は失敗したのか黒焦げ。二回目で成功。


 【レッドグラスと鹿肉のステーキ】ができました。一口食べてみます。うん、いい感じ。ピリッと舌を刺激する味が鹿肉と合っています。そして状態異常も今のところ出ていません。


「あなた達も食べますか?」


 ニル達には首をふられました。大丈夫ですよ、今度は眠りませんから。




 名前:クロエ

 種族:人間

 性別:女性


【生まれ:ブラッドリー子爵家】

【経歴:家出し旅に出た】


 LV20 残りSP19


 基本スキル


 【両手杖LV20】


 【魔法知識LV20】【魔力LV20】


 【闇魔法LV20】【暗黒魔法LV1】

 【風魔法LV20】【土魔法LV8】


 【月光LV13】【下克上LV11】


 【召喚:ファミリアLV20】【命令LV14】


 【暗視LV20】【味覚LV20】


 【鑑定:植物LV20】


 【採取LV18】【調合LV19】【料理LV5】


 【毒耐性LV9】【麻痺耐性LV9】【睡眠耐性LV10】


 【言語:スワロ王国語LV11】



 ユニークスキル


 【言語:ヘイス地方語】

 【身分:エンテ公国・ブラッドリー子爵家】


 【野宿】【土地鑑】


 称号


 【ベリー村の救世主】

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Gzブレイン様より出版しました!
大筋は変えず色々加筆修正やエピソードを追加してあります。
kaworuさんの超綺麗で可愛いイラストも必見ですので、どうぞよろしくお願いします!
i328604
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