12・忍者っ子参上
黒猫捜索を諦めて、私はニルと共に【黄昏の森】に来ました。
相変わらず入り口だというのにこの暗さ。そんな中、私はまた草を引き抜いては食べていきます。
ニルは近くの枝に止まって寝ていますね。いつもよりくつろいだ様子。ここはニルの故郷のような場所だからでしょうか。それにしてもこの子は寝るのが好きなようです。あと食べる事。そのうち太るんじゃないかと心配なので、主人である私が気をつけておきましょう。
さて草を食べる行為を何回も繰り返していると少し口に入れただけで分かってきました。時々毒草や麻痺草に当たりますがまぁ仕方ありませんね。
《一定の行動により取得可能スキルが増えました》
しばらく作業を続けていたらそんなシステムメッセージが流れます。今度は何のスキルが取得できるようになったんでしょうか? さっそく確認してみましょう!
【鑑定:植物】【味覚】【採取】【暗視】【毒耐性】【麻痺耐性】【睡眠耐性】
今回はいっきにスキル一覧に現れましたね。特に注目するべきは鑑定スキル。スキルマスターに教えてもらうことで覚えられますが、自力で出してしまいましたね。言語スキルは必要なかった。いや必要だけど。
【採取】はずっと引っこ抜いていたからでしょう。これら二つのお陰でこれからの薬草探しは楽になりそうですね。【暗視】もやっと出てくれました。これからの夜での行動が取りやすくなります。
三種の耐性も草を食べていた甲斐がありましたね。【味覚】は味を確かめていたから現れたのは分かります。将来的に料理スキルは取ろうと思うのでこれはいいですね。
しかしこうもたくさんスキルが出てくると全部取得するか迷いますね。後の事も考えるべきなんでしょうが……あぁでも全部必要そうな気がしてきます。現在の基本スキル数は11個です。残りSP20。一つに付きSP2を消費するので、全部取得するにはSP14が必要。一応7つ全てを取得できます。
基本スキルは取得数が10個になった時、次の新しいスキルを取得する為に必要なSPが増えました。20個になった時も増えそうですね。あとで攻略サイトでも見て確認しておきますか。
「もしも料理スキルを取るとしたら全部で19個ですか……」
今のところこの一覧に現れている以外の物で取ろうと思うのは料理スキルくらいでしょうか。あぁでも他の魔法もあと一つくらいは欲しいと思うので、それを入れるならもう20個ですね。
とりあえず必要そうな物だけを取得しておきましょう。ということで、【鑑定:植物】と【採取】と【暗視】の三つを取得。合計消費SP6。
暗がりだった辺りが見やすくなりました。そしてどれを見ても同じ草にしか見えなかった植物の姿が徐々に攻略サイトの写真で見かけた形になっていく。
「……なるほど。他の人にはこう見えていたんですね」
薬草と分かった草の形は葉っぱが大きい。そして【採取】の影響でいつもより多く採れます。
……あれ、でもおかしいですね。毒草と痺れ草と睡眠草がありません。場所は同じ場所です。なのでここにあるはずですが、見渡しても鑑定スキルでは見つけられません。
「……鑑定スキルレベルの影響でしょうか?」
どうやらレベル1では薬草しか分からないようですね。スキルを使わずに探していた私なので、他のものも見つけられたのでしょう。一応その三種も採りたいのですが……そうなると残りの【味覚】と【毒耐性】【麻痺耐性】【睡眠耐性】も取っておいたほうがいい気がしますが……。
「あぁもう! 悩むなら全部取ってしまいましょう!」
というわけで全部取ってしまいました。計画性皆無である。
採取再開。鑑定で分かる薬草を採りつつ、時々味覚でも鑑定。同じ味がしますが微妙に薄かったり濃かったりしますね。あ、耐性を取得したので草程度では毒も麻痺も睡眠にもなりません。
一つ不思議だったのは食べた草には薬草が混じっていたこと。鑑定で分かるはずの薬草。なのに中にはまだ判別のつかない薬草があるとは……。どういうことでしょうか?
「採取はこれくらいでいいでしょう」
そう思いながらも採取は順調に進みました。鑑定で採った薬草50個。味見で採った薬草?20個。毒草、麻痺草、睡眠草がそれぞれ20個ほど。前回の分をあわせれば毒草が30個、麻痺草と睡眠草が25個です。
あとはまた薬草ともつきませんが食べられる植物が10個と【採取】スキルのお陰で植物の種も入手。
ついでに関係するスキルもレベルが上っている。順調ですね。
今度はポーションを作りましょう。【黄昏の森】から離れて草原の方に行きます。ここなら敵はウサギ程度なので調合中に襲われても対処できますから。
外でこのような生産をする場合、テントなどのアイテムの中でしかできないと聞きます。ですが【野宿】効果でしょう。私はそのような物がなくてもできるようですね。……野宿というか野外活動ではないでしょうか。
まぁとりあえずポーションを作っていく。初心者キットなのですり鉢も鍋も小さなものです。大量生産するならもっと大きな道具にしなければなりませんね。とりあえず最大で五個は同時に作れるようなので、作っていく。
しかし、不思議ですね。煮込む作業をする前に鍋を用意するんですが、その時に水がどこからともなく現れるんです。ゲーム的マジック。そのどこからともなく現れた水を使って煮込んでいく。
うーんやっぱり煮込むと味が苦くなりますね……。あーもうちょっと煮込んだほうがよさそうなのでもう少し煮込みますか。五個分なので少し長めに煮込むとポーションが完成。
【初心者回復ポーション:☆】×5
前に作った時は☆が二つ付いていませんでしたか? 性能も前に作った物と比べると劣ります。これはもしや……。
私は味見して採取した薬草? を取り出してポーションを作ります。同じように五個分をすり潰して煮込む。
ですがその前に確かめたいことが一つ。鍋に現れた水。それを一口飲んでみました。
「……あまりおいしくありませんね」
水。ただの水といえばそうです。ですがなんでしょうか。都会のまずい水のような味がなんとなくします。いや、最近は技術が上がっているのでどこの水だろうと天然水並においしいですけど。とにかくあまりおいしくない水と思ってください。
「……味が悪くなるのは煮込んだ時。もしかしたら原因は水?」
システム的に作られた水だからおいしくないのかもしれない。そんな水だからポーションの味を損ねているのかもしれません。今度試してみましょう。
作業の途中でした。少し悩みましたがこの水以外に水はありません。仕方なくすり潰した薬草を投入。そしてできあがったのが……
【初心者回復ポーション:☆☆】×5
ふむ……。どうやら味見して採取したほうが性能が良かったようですね。試しに鑑定スキルで採取した薬草を食べる。ちょっと甘みが少ない気がします。今は【味覚】スキルがあるので少しの違いも分かるのですが、この味だと前回の時では雑草として扱っていたかもしれません。
「味が残るほうを残していたから、結果的に良い薬草が手元にあったというわけですか……」
鑑定スキルの性質上、低レベルだと質の低いものしか鑑定できません。なので鑑定できなかった質の良い薬草はまだ雑草のままです。これでは質の良い薬草を見つけることが出来ませんね。
「案外食べるというのは正解だったのかもしれませんね」
食べれば味だけで判別できます。でも普通はそうしないのでしょう。私だって鑑定スキルを持っていたら食べてまで判別しませんよ。
とりあえずポーション製作を進めましょう。残りの薬草をポーションに変えていく。ついでに良いポーションもね。失敗もありましたが製作終了。私の手元には【初心者回復ポーション:☆】×40と【初心者回復ポーション:☆☆】×10個。
ついでに毒消しポーションも作ろうと思いましたが……失敗。どうも材料が足りないようですね。これはまた今度にしましょう。
「ふー」
今回のポーション製作はこれで終わりです。ちょっと疲れた体をほぐすように動く。もうすでに夕暮れですね。ニルがくわぁとよく寝たというかのようにあくびをしながら起きます。近くの地面で寝ていたニルが私の肩に乗ってきました。
「……あの」
「うわッ!」
突然人の声が聞こえてきてびっくり。声のした方を見ると一人の少女がいました。いつの間にいたんですか。心臓に悪いですよ。
「その、フクロウ。お主の、でござるか?」
言語スキルがレベル不足だからか上手く翻訳してくれません。いえ、最後のござるはそのままでしょう。だってこの子は明らかに忍者ぽい格好をしていますから。その忍者っ子はさきほどから私の肩にいるニルをじっと見ています。なんだか瞳がキラキラと輝いているように見えますね。
「ええ、そうですよ」
そう答えるとその子は突然土下座をします。えっちょっとどうしたんですか!
「頼む! 拙者に、フクロウ、捕獲する秘術、教える、ござる!!」
……はい?
名前:クロエ
種族:人間
性別:女性
【生まれ:ブラッドリー子爵家】
【経歴:家出し旅に出た】
LV12 残りSP6
基本スキル
【両手杖LV9】
【闇魔法LV10】【風魔法LV10】
【魔法知識LV10】【魔力LV10】
【月光LV2】【下克上LV2】
【召喚:ファミリアLV7】
【命令LV4】
【味覚LV4】【暗視LV5】
【鑑定:植物LV6】【採取LV8】
【調合LV8】
【毒耐性LV3】【麻痺耐性LV3】【睡眠耐性LV3】
【言語:スワロ王国語LV3】
ユニークスキル
【言語:ヘイス地方語】
【身分:エンテ公国・ブラッドリー子爵家】
【野宿】【土地鑑】