11・黒猫さん、契約してください
結局昨日はあの後ログインができませんでした。久々に会った知り合いと話し込んでいたのが原因ですね。
さて今日初めてゲームにログイン。
デスペナルティーはすっかりなくなっていることを確認。これで行動に制限がかかりませんね。
まぁ私のスキル構成的に夜以外に行動の制限があるといえばそうですが……。
空を見ると日は高い。戦闘は避けたほうが良さそうですね。あ、その前にご飯を済ませておきましょう。その前にニルを召喚する。再び召喚されたニルはちょっと眠たそうにしながらも私の肩に乗ってきます。どうやらこの位置が気に入ったようですね。
「よう、お嬢ちゃん!」
市場に行くと屋台のおじさんが明るく迎えてくれました。そうでした。言語スキルを取得したのでおじさんの言葉が分かるようになったのでした。
「……コンニチハ」
ちょっと片言ですがあいさつをしておきましょう。おじさんの言葉の端々はまだよくわかりませんが、どうやらお昼ご飯を買いに来たのか聞いているようです。どうしましょうか。肉の串焼き以外で考えていました。イベントリにもまだ貰った物があります。困りましたね。
「女の子が連日肉の串焼きなんて食べないよ」
すると隣の屋台から声がかかります。三角巾にエプロン姿のお姉さん。彼女の屋台にはサンドイッチが並んでいました。こちらにおいでというかのように彼女が手招きします。ありがたく私は彼女の屋台の方にいきましょう。ちょっとおじさんは悲しそうでしたが、それもそうかと納得していました。
私は彼女の屋台でサンドイッチを購入。野菜たっぷりのおいしそうなものですね。ついでに良い防具屋がないか聞いておきます。お姉さんとおじさんは少し話し込んだ後に地図を示して教えてくれました。
「アリガトウゴザイマシタ」
拙い言葉ですがお礼をして二人と別れます。いつかきちんと会話ができるといいですね。
昼食を広場で済まして教えて貰った防具屋に行く。
カランカランと開いた扉に付けられたベルが鳴りました。ちょっと寡黙そうな男性が店番をしています。私の他に客はいませんね。とりあえず店内を周りつつ、私に合いそうな防具探し。
ここは軽装やローブ系の装備ばかりを取り扱う店のようですね。魔法使いですしローブ系。形や性能は様々ですがやっぱり性能が良いものは高い。欲しいと思った装備を全て合わせると一万G。手持ちの資金では足りません。
「……あ」
こ、これはとんがり帽子! とんがり帽子ではありませんか! 欲しいです! えっ一万G? 高いっ!
……二万Gをどうにかしないといけなくなりました。武器も考えるとさらに増えそうですね。
「いらっしゃい~」
次に立ち寄った雑貨屋ではちょっと軽めの挨拶が私を迎えてくる。ポーションを高値で買ってくれた店主ですね。その人にこの前のゴブリン狩りで得た物を売れるか聞いてみました。
「うん、大丈夫だよ~」
ふわふわした感じで店主は答えてくれます。良かった。ゴブリンの爪が十個とネズミの尻尾が三個。合計1040G。モンスターは他のプレイヤーも狩るためか、入手しやすい素材は安めに取引されるようですね。今度はポーションを作って売りに来ましょう。
今は手元に3670Gあります。ゆっくり稼ぎましょうか……。
まだ夜にはなっていません。なのでポーションの材料でも探しにまた森に行きましょう。
そう思って通りに出た時でした。
「ニャー」
どこからともなく猫の声が聞こえてくる。そちらを見ると黒猫がこちらを見ていました。
……黒猫。黒猫です。黒猫といえば魔女の使い魔の定番ですね。
「あ、待ってください!」
猫が何処かへと走っていく。逃しません。黒猫は魔女のステータスですよ! ここは何がなんでも契約を! 突然走り出したからニルが驚いて飛んで離れて行くけど今は構っていられません。それより黒猫!
「そこの黒猫さん、私と契約して使い魔になってください~!」
だけど必死に追いかけたのに、意外と動きの速い黒猫には追いつけません。そして高い建物をひょいひょいと登っていき、塀の向こうに逃げられてしまいました。これでは追いかけられません。くっ。
「いつか……必ず!」
黒猫と契約を成し遂げてみせましょう!
戻ってきたニルからどこか呆れた目線が飛んできている気がしますが気のせいですね。