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10・夜は私の世界になりました

 現実でのお昼を食べ終え、またログイン。


 さてまずは当初の目的を思い出しましょう。


 ・使い魔を探し契約すること。

 ・この地域の言葉を覚えること。


 以上二つともこの度達成させることができました。使い魔はもちろんニル。言語もまだ低レベルですが取得できたので、少しだけ言葉が分かるようになりましたね。


 そういえば他にも増えたスキルがありました。【月光】と【下克上】。その二つも取ってしまいます。


《スキル【月光】を取得しました。基本スキルが十個を越えたため、取得SPが増えます》


 ……おや? 【下克上】の取得SPが1だったのに今は2になっています。どうやら十個を超えると次に覚えるスキルは必要なSPが増えるみたい。とりあえずSPが増えてしまいましたが【下克上】も取得。


 さてと辺りはすっかり夜になってしまいました。ニルも日中よりも元気に、元気に……なんで寝ているんですか? ニルは私の持つ杖の先に止まったまま寝ています。もう夜ですよ、起きてくださいニル。


 まぁいいでしょう。とりあえず狩りに出かけます。今回は【黄昏の森】のある場所とは反対方向、ダイロードの街から東の地域ですね。ここは私のレベル帯と同じモンスターが現れるそうです。

 もうレベル十になってしまったのでデスペナルティがあります。しかもレベル十からは経験値も多く集めないとレベルが上がりづらい、敵モンスターも強化されているらしい。このゲームを始めた初心者が最初にぶつかる壁らしいですよ。レベル十まではチュートリアルなんて言われるほどです。


 東の地域にやってきました。草原なのは変わりありませんが、ちょっとだけ丘などの高低差があります。そして遠くには建物のような家というには粗末なものが数個固まって出来た集落のようなものが見える。あれはゴブリンの集落らしいです。


 そう、ここには人型のモンスターが現れます。攻略サイトなどを見るとゴブリンの討伐依頼が近くの村で受けられるみたい。まぁ私はまだ満足に言葉を話せないのでスルーします。喋らないとスキルが上がらないと思いますが……まぁそのうち嫌でも上がるので。


 ゴブリンと戦うのもいいでしょうがまずはネズミを狩ってみましょう。暗闇に紛れて何かが動いているのが見えますね。姿は残念ながら暗視を持っていないのでよく見えないのですが、ここにいるのは【ダイラット】のはずです。


「ニル、戦闘をしますから起きてください」


 夜になっても寝たままだったニルを起こす。このままでは杖が使えないので。起きたニルはくわぁっとクチバシを開けてあくびをする。


「とりあえず、そこの木の枝にいてください」


 私の指示にとても面倒くさそうに近くの木の枝に飛んでいき、そこに止まった。また寝るつもりはないようですね。よかった。木の上ですからニルの視界も広く持てます。【森の賢者】の効果も十分発揮できるでしょう。


「では行きますね」


 暗闇の中を動くネズミはとても小さい。暗がりですから姿が見づらいので魔法を当てるのは難しいでしょう。でも動きを封じてしまえばいい。【ダークバインド】は周囲にいる敵を拘束します。敵を指定できないのが困りものですが、狙わなくていい分楽ですね。


 突然現れた闇の力によって作られた鎖にネズミは拘束されていく。ネズミの上にニルの【森の賢者】の効果でHPバーが出現します。たぶん奇襲効果も入ってそうですね。しばらくネズミは動けません。そして鎖のエフェクトによってネズミの位置が分かりやすくなる。


「【シャドウアロー】」


 そして難なくシャドウアローをネズミに当てる。するとネズミのHPゲージはあっという間に、まるで消し飛ぶかのように消えて無くなりました。


「……威力高いですね」


 消えていくネズミと獲得品のログを見つつ、思わず呟く。HPバーの減り方が尋常ではありませんでした。色々とあるスキル効果により攻撃力が上乗せされているからでしょう。


 【闇魔法】の暗所での使用・ニルの【闇の知恵】による闇魔法の強化・【月光】による魔法攻撃力の強化。


 格上だったら【下克上】の効果もプラスされますし、【月光】も満月の状態だったらさらに強化されます。元々攻撃力の高い闇魔法をさらに強化しているので、その火力はレベル十にしては高すぎでしょうね。


 まぁこれは今の時間が夜だからできる事です。【下克上】以外のスキルは夜以外では十分に発動しないので。


「それにニルも寝てますからね」


 【闇の知恵】と【森の賢者】も日中は寝ているニルが持っているため、効果が発動しづらい。木の上にいたニルがまた眠たそうにしています。もう十分寝ているはずですが、まだ寝ていたんですか?


 完全に夜特化。でもこれはこれで面白い。それに魔女には夜が似合うと思いませんか?


「さぁニル。今度はゴブリンの集落に行きましょう!」


 これは新しい【闇魔法】スキルを試したくなってきました。さぁさぁ出かけましょう。なにせ夜は私の、いえ――私達の時間ですから!



 私たちは一つのゴブリンの集落……というには小さすぎるのでテントにたどり着きました。少し遠くから様子を見ます。見張りの松明を持ったゴブリンが二匹。ボロ布と枝を使って作った家のようなものに三匹寝ています。合計五匹。


 ゴブリンは基本チームで動いている。初心者がまず(つまず)くのは彼ら。チームワークを発揮されてしまうのでしょう。あとは数の暴力。まぁそれも……


「一撃で全員倒せば問題ありませんね」


 ニルが何かを言いたげにこちらを見ます。言いたいことはなんとなく分かりますよ。


 このままこっそり近づいて魔法を撃ってもいいでしょう。ですがあまり奇襲は好きではありませんね。さきほどのネズミにはしましたが、こそこそとしたものは苦手です。


「なので、真正面からいきましょうか」


 ニルを私の頭上あたりの空に飛ばさせ、私は地面を踏みしめてゴブリン達に近づいていきます。


「ごきげんよう、こんな夜分にお邪魔してごめんなさいね」


 暗がりから現れた私に見張りのゴブリン達が驚く。すぐに敵だと認識したのか、一匹は仲間を起こしに行きます。すぐに新たに三匹が加わり、私の周囲を五匹が囲う。


「私はあなた達に何の恨みもありません。討伐依頼を受けたわけでもありませんが……私の(経験値)ために死んでください」


 こんな状況でも余裕をもってニッコリと笑っておきましょう。待機させておいた【ダークバインド】を発動。行動を起こされる前に周囲の五匹を拘束。


「ニル、ダークミスト」


 頭上を飛んでいたニルがダークミストを撒き散らす。これによってゴブリンに【暗闇】の効果。さらに【ウィンドカッター】で松明や焚き火の火を消しておきます。


 少し離れて詠唱を開始。約十秒。きちんと狙いを定めておく。場所はゴブリン達のいる地点。拘束効果は切れましたがまだ暗闇の効果が続いています。ゴブリン達が視界を取り戻し、私の姿を捉えました。


「【ダークバースト】」


 だけどもう遅い。闇の力の爆発により、ゴブリン五匹が吹き飛ぶ。HPバーも消し飛びました。やっぱり威力は凄いですね。


 余波の風を受けつつ、状況を確認。ゴブリンは一人残らず、消え去りました。周囲攻撃の【ダークバースト】によって。


 飛んでいたニルが戻ってきて私の肩に止まります。なんだがさきほどと同じような目線が突き刺さる。奇襲はしませんでしたが、正々堂々とは言い難い戦いをしたからでしょうか。それともこのバ火力についてですか?


「バ火力なのはニルが原因でもありますからね」


 狩りはまだ続きます。ニルは攻撃を受けると危ないので基本的に上空などの安全な場所からサポートしてもらいます。地上では私がゴブリン達相手に【ダークバースト】を放っています。


「さぁ次はあちらに行きますよ」


 何回かゴブリンと戦った後。ゴブリン達の所に同じように【ダークバースト】を発動させようとしたその時。遠くから光が目に入ります。この光は松明でも焚き火でもありません。この燦々と目に入ってくる眩しい光は朝日。


「あ、まずい」


 朝日を受けたダークバーストの威力が低下。【月光】の効果も切れます。それによって今まで一撃で倒していたゴブリン達の体力が残る。【夜行性】のニルがおやすみモードに入り、情報も見えません。


「ま、待ってください」


 五匹ほどのゴブリンに囲まれて、逃げることもできずにダイロードの街に死に戻りしました。


「……初の死亡でしたね」


 死に戻り地点に登録しておいた場所に、気がついたら転移させられていた。


 こんな体験もまた面白い。自分のHPバーが吹き飛んだのをよく覚えています。あぁゴブリン達もこんな気分だったんですね。暴れすぎた罰でも当たったのでしょう。でもこれができるのは夜間だけ。昼間には無理ですね。日中の戦闘は出来る限り避けましょう。


「ニルは大丈夫ですか?」


 ニルは答えません。私の肩に止まって完全に寝ていますね。


 朝日を浴びる街中には様々な人達が行きかいあっていました。時折、会話が聞き取れ少しだけ内容が分かります。それぞれに人生があるのでしょう。この世界で紡がれる物語。


 ――なんとなく、次の課題が見えてきた気がします。


 まずはもう装備の限界が近いこと。装備を新調しなくてはなりません。さきほどの戦闘で攻撃に関しては、私の魔法火力の高さにより問題はありませんでした。ですが自分を守る防具はもう限界でしょう。ゴブリン達の数の暴力とか、魔法使いの防御力は紙なのでいくら固めたところで変わりないかもしれません。まぁ無いよりはマシなので。


 そして次にロールプレイ。言語スキルを取得した為、いつかは完全に話せるでしょう。そうなるとロールプレイもきちんとしなくてはなりません。そのためにもクロエというキャラ設定をしっかりとさせなくては。


 しかし、一旦ログアウトしなくてはなりませんね。デスペナルティもありますし、解除されるまで休憩をするのにちょうどいい。ニルの召喚を解除してから私はログアウトをしました。







 名前:クロエ

 種族:人間

 性別:女性


【生まれ:ブラッドリー子爵家】

【経歴:家出し旅に出た】


 LV11 残りSP18


 基本スキル


 【両手杖LV9】【闇魔法LV10】【風魔法LV10】

 【魔法知識LV10】【魔力LV10】【調合LV2】

 【召喚:ファミリアLV5】【命令LV4】

 【言語:スワロ王国語LV2】

 【月光LV2】【下克上LV2】


 ユニークスキル


 【言語:ヘイス地方語】【身分:エンテ公国・ブラッドリー子爵家】

 【野宿】【土地鑑】




 名前:ニル

 種族:使い魔

 性別:オス


 LV4


 基本スキル


 【闇の知恵LV3】【ダークミストLV3】


 ユニークスキル


 【森の賢者】【夜行性】


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Gzブレイン様より出版しました!
大筋は変えず色々加筆修正やエピソードを追加してあります。
kaworuさんの超綺麗で可愛いイラストも必見ですので、どうぞよろしくお願いします!
i328604
― 新着の感想 ―
魔女と言うか、日光で弱体化するあたり吸血鬼w
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