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#43

 全員が泥のように眠った翌朝――

 部屋に集まった俺たち四人は、今後の動きについて頭を悩ませていた。

「新しいひび割れ……ええと、星幽の門って言ったか? それが開いたらまた閉じてを繰り返して、儀式魔術が完全に止まるまで逃げ続けるというのは、あまりにも現実的じゃなさ過ぎるよな……」

 そもそも不眠不休で追い続けてくる相手から数か月単位で逃げ続けること自体が非常に困難だし、その間にあのライナスが通り過ぎた場所が破壊され続けることを考えると、選択肢としては論外と言っていいだろう。

「いっそのこと、何度も叩き潰して再生させて、力を使い果たさせるってのはどうだい?」

 グローリアの提案の方がまだしも現実味がありそうだが、リュネットは首を横に振った。

「それでも一日や二日では難しいでしょう。手練れを大勢集めて交替でやれば理論上は可能でしょうが、おそらく相当の死者が出るのは避けられません。それこそ、グローリアさん並みのトチ狂った強さの猛者を数十人集められるのならば話は別ですが」

 誉めるか貶すかどちらかにしろと言いたくなるが、少なくとも相当な無理難題であることは間違いない。

「魔力を無効化する……例えばあの『凪の塔』みたいなところにもう一度閉じ込めることができれば……あっ、でも駄目ですね、そこに連れて行って閉じ込める方法がないですよね……」

 自身無さげに告げられたディーノの言葉に、リュネットの表情が変わった。

「まさにそれです。簡単な方法があったじゃないですか」

「えっ、でもどうやって?」

 俺が訊ねると、リュネットはいとも簡単そうに笑顔で答える。

「連れて行く方法は簡単です、私があそこに入ればいいのです。そうすれば間違いなくライナスさんも後を追って侵入してくるでしょう。そして閉じ込める必要はありません、私が生きて留まりさえすればいいのです。『元栓』が閉じた今、あの中に留まれば一晩もあれば儀式魔法は力を失うでしょう」

 その言葉に、グローリアの表情が明るくなった。

「あの中にいればあいつの再生能力も無くなるから、普通に殴り倒して縛っておけばいいだけってことだな! でもあたしの力も魔力で強化できなくなるから、結局は肉体と肉体のぶつかり合いってことか。腕が鳴るな!」

「それはいいんだが、どうやってあの塔の中に戻るんだ? それに、あの戦士が魔力を封じられも動けるっていうなら、リュネット一人じゃなくて最低でもグローリアは一緒に行かないとまずいだろ?」

 俺がそう言うと、二人の笑顔が見事に固まった。どうやらそこまでは考えていなかったらしい。

「私の魔法で空を飛んで屋上から侵入……するのは無理ですね。あのレベルの魔法を使いながら近づけばあっという間に探知されますし、塔に入らなくても近づくだけである程度魔力は封じられますから、届かずにそのまま落っこちる危険性が高いです」

「入りさえすればいいなら正面突破もアリだけど、それからあいつが来るまで待ち構えなきゃいけないってのがなぁ……そう何日も立てこもるのは無理だろうし」

「いっそ、脱出した時みたいに『翼』で滑空して行ければいいんだろうけど、あの塔の屋上より高い建物なんてさすがにどこにも無いだろうし……」

 俺が何気なく言った言葉に、リュネットはこれまた大きく反応した。

「その方法がありました。これだけ大きな街なら、余裕で四人乗り用を作るだけの材料が買い集められます」

「えっ、でもどうやって飛び立つんだ?」

「風の魔法を使います。むしろ問題は飛び立つときより着地の時です。凪の塔は王城のすぐ近くですから、近づけば近づくほど魔法の発動が探知されやすくなるので、風力の調整が難しくなります。更に、最終着地の時にはは全く魔法が使えませんから、機体自体の操作だけでうまく着地地点を選ぶ必要があります」

 冷静に考えるとかなり無茶な作戦に思えるが、それでも正面突破に比べればはるかに現実的だ。問題は、事が終わった後にどう後始末をつけるかということだが、さすがにこんな状況ともなれば、既に教皇庁から王城に俺より上級の異端審問官が派遣されているだろう。いざとなれば面倒事は全て丸投げしてしまおう。

「そうと決まれば急ぎましょう。星幽の門のあった場所からの距離を考えると、ここが安全なのはおそらく今日までです。皆さんはこれから言う材料を買い集めて来てください!」


 リュネットの指示の下、俺たちは街を走り回って材料や道具を買い集め、更にはそれを加工して組み立てた。

 朝から作業を続けた結果、街外れの空き地に新たな『翼』が組み上がった頃には、既に太陽はほとんど地平線の下に隠れようとしていた。

 四人がかりで作り上げたそれは、塔から脱出した時とは比べ物にならないほどしっかりとした造りで、かつ大きさも二回りほど上回っているだろう。脱出時のように一人が背負う形ではなく、下部に設置された籠に乗り込む形で、各部から伸びているロープを引く形で操縦する仕組みになっている。

 そして何より違うのが、枠組みも、枠組みに張られた布も、そしてそこからぶら下がる籠も、全てがほとんど黒に近いような濃紺色に塗られている点だ。これはもちろん、夜の闇に紛れて肉眼で視認されないようにするためだ。もちろん、乗り込む人間用に同じ色のフードとマスクが用意されている。

 それにしても、こんな代物を設計図も無しに頭の中だけで思い描き、四人という限られた人手の中、材料集めから加工から組み立てまでをたったの十時間かそこらで終わらせられるような工程を組むなどという離れ業をやってのけるリュネットの脳味噌というのは、一体何でできているのだろう。


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