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#26

 翌朝、食料や追加のテントを買い込んだ俺たちは、魔境に繋がる門へと向かった。

 街中で地元の人にいろいろと話を聞いた結果、西の大陸に渡るためには、今のところこの門を通って行く以外に方法は無いらしい。

 西の大陸は海峡を隔てた向こう、しかも晴れていればこの街の最西端の岬からうっすらと姿が見えるほど近くにある。

 それだったら海を渡って行けばいいように思えるが、ここ中央大陸と西の大陸の間の海峡には、巨大な渦が不規則に発生していて、まともに船を運航するのは不可能に近いという。まだ西大陸が魔境などと呼ばれていなかった数百年前、多くの冒険家たちが船で海峡を渡ろうとして、そのまま海の藻屑と消えているのだそうだ。

 それこそリュネットが作ったような翼を使って飛んで行こうとした者もいるらしいが、さすがにそんなもので行ける程度の距離ではなく、そもそも海峡上空は一見穏やかに見えるが実はものすごい乱気流が渦巻いており、飛ぶ鳥さえも巻き込まれて落ちるという。そのため、西の大陸に住んでいる鳥類が中央大陸に渡ってくることはとてつもなく珍しく、何かとんでもない吉兆か凶兆のいずれかだとみなされることもあるらしい。

 しかし、当時この一帯を治めていた王の強硬な指示の下、ここから西の大陸に繋がる、長く深いトンネルを掘ることに成功した。膨大な出費と数万人という犠牲者を出したことにより、完成後まもなく王国は内乱により滅亡するが、以後このトンネルにより大陸間の交流や貿易が活発に行われるようになった。

 だが、西の大陸が魔境化したことにより状況は一変した。多くの人がトンネルを使って中央大陸に逃れたものの、そのうち人だけではなく霧により変異した怪物までもが流れ込むようになったため、強固な門を築いてトンネルを閉鎖することになったのだ。


 そんな門の前に辿り着き、俺たちはその想像以上の迫力に圧倒されていた。

 崖の根元に掘られた大きな穴は、大型の馬車がすれ違ってもまだ余裕がありそうなほどの広さだ。交易に使っていたというのなら当然ではあるが、一体どれだけの労力を必要としたのかを考えると気が遠くなる。

 しかも、このトンネルは海峡の向こう、はるばる西の大陸にまで続いているというのだ。空気や地下水の問題などはどうなっているのか、などと考えれば考えるほど、当時の技術の出鱈目さに目眩を覚えそうになる。

 門の前には数人の兵士が立っている他、近くには数十人は収容できそうな兵士の詰所があり、更にこの門の周囲が高台になっていて、門を取り囲むようにいくつかの見張り台が建てられている。これではどう見ても「門を守る」というより「門から街を守る」ための布陣にしか見えない。

 その門自体はいわゆる“扉”ではなく、上下にスライドする鉄格子によって閉ざされていた。しかし鉄格子一本一本の太さは俺の腕よりも太く、いかなる攻城兵器でも容易には突破できそうにない。

 よく見ると鉄格子の向こう側から、うっすらと白い煙のようなものが流れ出ているのがわかる。更に言うと手前の鉄格子の向こうにもう一つ鉄格子があるという二重構造になっている。

 そんな風にあちこちに視線をさまよわせていると、近くに立っていた兵士の一人が俺たちに話しかけてきた。

「この門に何か用かい? 今日も結構濃い霧が流れてるからね、あんまり長時間の見物はやめといた方がいいよ」

 すると、リュネットが開口一番、ストレートすぎる口調でこう告げた。

「私たちは門の向こうに行きます。門を開けてもらうためにはどんな手続きが必要ですか?」

 その言葉に兵士は一瞬唖然とし、しばらくして苦々しい表情になり、少し遅れて困ったような表情になって、それからようやく口を開いた。

「えーと、まあ、その、なんだ。ちょっと向こうの詰所で話をしようか」

 どうやら連行されるとかそういう雰囲気でもないので、俺たち四人は言われるままに詰所に付いて行くことにした。

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