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1億総活躍社会のディストピア  作者: シャム猫ジャム
暗黒郷
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ミサイル転用可原子力発電所

南へと進む。なだらかなため、歩きやすい。

とはいうものの、草ボーボーなので足元は要注意だ。蛇がいたら大変……。

今日は既に30回ほど余震があった。

「揺れの割には意外と平気ですね」

建物は壊れたが、平野のせいか、この辺は(ほとん)ど影響がない。

「ここ数日、雨が降っておらんかったのが一番大きいじゃろう」

ああ、土砂崩れとか洪水とかの二次災害か……。


することがなかったので自己紹介だけしておいた。

110番が無道寺(むどうじ)、932番が六車(むぐるま)。いずれも男だ。

女は129番の荒冷(あられい)、564番のサシャ、986のミサだ。

番号でいいかな?とも思ったが、俺の服には既に番号札がついていなかった。

刑務官の事は知っているが、ちゃんと自己紹介をもらえた。

道珎(どうちん)と呼んでくれて構わないとは言われたが、ちょっと気が引ける。

徐々にでいいよね?


いい具合に川を見つけたので飲水は平気そうだ。

南まで続いていそうだ。ということは北から流れてきているのだが……。

「この水平気? キノコ雲の方角から流れてきてるけど……」

「問題はないじゃろう」

色違いの日記帳を見て確認してくれた。何が書いてあるのか興味津々だ……。


ゴゴゴゴゴゴゴゴ……。

轟音が聞こえる。戦闘機が跳ぶような音だ。

「あれ何?」

「はぁ?聞こえないよ!」

「お前じゃない」

うるさくて会話が成り立たない。


音の先に何かが見えてきた。傘の小さな細長い(きのこ)のようなミサイルに、根本には2つの玉が付いている。

(さなが)ら男性器……。

形もそうだが、大きすぎないか? どうやって飛んでいるのやら……。

UFOの方が近いかもしれないな。

俺らの上空を通過して、左に逸れていった。ここから南東に墜落するのかな?

行き先じゃなくってよかった。


「はーもう、耳痛い……」

ミサ婆さんは、飲みきれない程の愚痴を零す。

「あれが発電所?」

「ああそうだ」

正解だ!やったね!


連鎖爆発を阻止するために全弾発射されたらしい。

できるだけ国外に向かうそうだが、非常時には国内に落ちることもあるらしい。

まぁここが国内かどうかはグレーゾーンだが……。

左手には新しいキノコ雲が誕生した。墜落したようだ。

西風のため、僕らにはすぐに影響無さそうだ。

念の為に、少し西寄りに南下する方向になった。川も丁度南西に向かい始めているので丁度いい。


「食料はどうするの? 釣り?それとも狩り?」

「漁業戦艦区で食料ごと奪えばいいだろう」

刑務官がそんなこと言っちゃって良いんでしょうか……。


それでも最低で半日はかかるので、その辺に生えてた植物を食べた。

「それ大丈夫か?」

「美味しいよ?」

俺が今持っているのはブルーベリーのような食べ物だ。形はちょっと変だが……。

この時期が旬なのだろうか。群生していた。

「食べてみなよ」

俺は健十郎の口に無理やり入れた。無理やり舌に押しつぶしてやったが、少し()まれた。痛い……。

「案外美味いな」

だからそう言ったじゃん。俺は歯型をふーふーする。


久々に羽根を伸ばした気がする。凄く気持ちのいい空気。緑豊かな自然。

僅かに潮の匂いも感じる。海はもうそろそろかな。

幸せを呼ぶかは分からないが、青い鳥も見かけた。

雲は残念ながら、(きのこ)の残骸が3本だ……。

え、3本?

1本は南から上がっている。


「あれはなんだろ?」

雲というより煙だろうか。白や黒、灰色といった煙が合わさって、他の2本と見紛(みまが)う。

急いで向かう。


思いの(ほか)近かった。

暴動だろうか?囚人らしき人たちが仕切っている。

「あれはどういう状況なんだろ……」

「恐らくじゃが、開放された囚人共が監視官を殺したんじゃろう」

此処(ここ)では監視官と呼ぶのだろうか?それとも本来は……。まぁどっちでもいいか。

燃える家屋からあがる黒煙。戦艦から上がる大量の蒸気。これらが混ざった色だったようだ。

「殺したら爆発するんじゃ……」

「ひょっひょっひょ」と変な笑いが漏れてきた。入れ歯か?


各区で違うものを使ってるらしい。

漁業戦艦区では囚人の方に爆弾が付いているそうな。

見た感じ誰にもついてないから外れてしまったんだろうか?


「君たちはあれに乗るといい」

()えて真ん中に乗るのか。

「あれ……。乗らないんですか?」

「この格好でか?」

確かに……見るからに囚人ではないな。

「操作方法がわかりません……。それにこの人数では……」

「心配しなくても大丈夫じゃ」

色違いの日記帳を1ページ切り取り、それを渡された。

そこには操作方法が書かれている。凄く簡単そうだ。

「その手帳、独特ですね」

「これか?これはただの市販品じゃ」

「古本屋……」

「知っとったんか。まぁその若さで足を突っ込んだということは、そういうことじゃろうのう」

……。

「ではのう」

行ってしまった……。


「取り敢えず行くしかねーだろ」

「だな」

俺は同意してないけどな。行くしか無いのはそうなのだが……。


真ん中に止まっている戦艦に走っていく。

囚人服を着ている上に汚れまくっているので特に足止めは喰らわなかった。


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