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1億総活躍社会のディストピア  作者: シャム猫ジャム
暗黒郷
60/87

自発的殺人【※】

久しぶりのご馳走で、はしゃいでしまった。

気分の悪そうな新人も多いが、そのうち慣れるだろう。


腹を()でながら扉が全開の自室に戻る。

「お、起きたか」

271番は眠そうな目を(こす)りながら欠伸(あくび)をしている。

「あ、飛鳥お兄ちゃん。おはよう」

俺が視界に入ってないような目だな。

「もう大丈夫なのか?」

俺は271番の顔を両手で挟み、顔を(のぞ)き込む。

「えっ……!? そんなに顔近づけたら……」

目が右往左往する。(ほお)が少し赤いな。

「もう少し休んでた方が良いんじゃないのか?」

「お前な……。それは風邪じゃねーから。気づけよ馬鹿」

「俺は馬鹿じゃない」

振り向くと、呆れ顔の1番が目に映る。

「あーわったわーった」

お前、何時(いつ)から俺っ子になったんだ? などとブツブツ言いながら壁に(もた)れたようだ。


ガラッ。閉めたはずの扉が再び開かれる。

居たのは4の番号をつけた巨躯の男だった。俺から見れば、なのだが。

体をできるだけ大きく見せようとしている。

よく見ると、少し震えているようにも見える。虚勢か?

目は色々泳いでいるので、心はそうでも無さそうだな。

「誰?」

4番は俺の顔を見て、動転したのか滑って転けた。

俺の顔に何か付いているのだろうか? 触ってみるが違和感は感じない。

「きょ、今日からこの部屋に……」

「あー新入りだろ? 番号増えてたもんな」

俺は忘れていたが、1番は部屋の前にある札を確認していたようだ。

「さっさと入れよ。扉は閉めてこいよ?」

とろとろとした遅さでやって来た。


俺は机に(ほお)杖を突いて小さなテーブルの向かい側に居る4番を見つめる。

1番は相変わらず壁に(もた)れているが、271番は4番の後ろでゴロゴロしている。

俺は机に(ほお)杖を突いて小さなテーブルの向かい側に居る4番を見つめる。

何故(なぜ)か正座をしている。着席するなりタカと名乗り、そのまま沈黙している。


「で、何?」


……。


応答は返ってこない。俺の顔は徐々に降下する。

「何もないなら寝てくれないかな? そろそろ消灯だし」

とうとう俺の(あご)が机に触れる。

だるいなー……。


「お前、よくもあんな事を出来たもんだな」

何だ? 少し目に光が宿った気がする。

「あんな事ってなんだよ」

ちゃんと言ってくれなきゃ分かんないから。

「殺人と……、それに晩飯の事だよ」

怒りが声に(にじ)み出ている。

「そんな事かよ。それがここのルールだ。郷に従えないなら死ぬしか無いぞ?」

一瞬怯んだのか、一瞬だけ悲鳴が(かす)かに聞こえた。

「それに美味しかっただろ? あれが一番のご馳走だ。あれがないと恐らく俺らは餓死するからな」

「だからって」

テーブルを叩く音と同時に怒鳴られた。

危ないので、俺はテーブルを横に退()ける。


やれやれと一瞬だけ目を離し、再び前を見ると違う番号がそこにいる。

271番が首を締められた状態で。首元には……フォークか?

「お前、何してるんだ?」

訳が分からない。どうしてこうなる?

「俺は聞いたんだよ。こいつを人質に取れば言う事を聞かせられるって」

初耳だ。というか誰に聞いたんだよそれ。確かに困りもするが……。

「誰に吹きこまれた? えぇっ!?」

じわじわと怒りがこみ上げてくる。その何者かとコイツの両方に、だ。

271番は動揺しているが、一切(しゃべ)らない。それが正しいと分かっているようだ。

俺の威嚇(いかく)が強すぎたせいか、フォークが首に()り込み、赤い雫が1滴(したた)る。

「分かった。今271番を開放すれば情状酌量(じょうじょうしゃくりょう)するよ」

許す気など無いがな。離した途端ぶっ殺す。271番は身内、4番はそれ以外の物だから。


……。


離す気は毛頭ないようだ。1番は依然として壁に寄り添う。

「おい、1番。俺を手伝え。4番を殺す」

反応がない。一瞬見たが、寝たふりをしているのだろうか?

「手伝わないなら後でお前も肉にするぞ」

「やってもいいが、後で大変な事になるが?」

俺の殺意を受け(ようや)く反応した。

「構わないから手伝え。俺が右、お前が左だ」

4番の声は一切俺には届かない。余計な物を排除する必要があるのだから。


俺がフォークを持つ腕を(しぼ)り上げる。271番につきつけられた凶器は床に転げ落ち、後はボコるだけだ。

正直一人でできた気もする。いや、共同作業をする事にメリットはあったはずだ。


引き剥がした4番の足を払い、床に押し倒す。

その上に(また)がり、綺麗な方の腕を(ひね)り上げて拘束する。

そのままひっくり返し腹に渾身の一撃を見舞う。4番は唾と混ざった血を吐き、腹を抱えた。

容赦はしない、だが即死はさせない。

顔が無防備なので、蹴った。鼻は折れ、口が切れたのか、更に少量の血が床に飛び散る。

背中を蹴ると血が吹き出す。胴にダメージを与えると、ポンプを押したように口から液体が飛び出すようだ。

足を踏みつけると鈍い音と共に普段と違う方向に曲がった。

髪を鷲掴(わしづか)みして頭を床に叩きつけると、(しゃべ)らなくなった。

まだ意識はあるのか目は開かれている。

僅かに潤む瞳は後悔に(まみ)れ、慈悲を乞うている。


畳に突き刺さったフォークが視界に入る。よし、これも使おう。

俺はフォークを手に取り、俺を否定したその目を潰した。

反応がなくなっていた4番は再び騒ぎ、身動(みじろ)ぎ始める。

両の目を潰した後は髪を(むしり)り取った。頭皮も一緒に剥がれ、出血し始める。

頭蓋骨がヌルッと光を反射しながら顔を出した。


汚いボロ雑巾を延々と殴り、蹴り、刺し続けた。

気が付くと、青く腫れ上がったモンスターは赤い布を(まと)って、体は蜂の巣になっていた。

感想は1つ。不味(まず)そうな肉だ。


それよりも、時計が可怪(おか)しいのか? まだ消灯しない。

「今日は消灯しないのか?」

271番は既に寝ていた。呑気なものだ。

「明日は計画停電だからな。今日は0時まで明かりは付いてるぞ」

「え、何だって?」

急に俺の知らない単語が耳に入ってきた。


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