表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1億総活躍社会のディストピア  作者: シャム猫ジャム
ジパング
44/87

人体解剖【※】

終皇80年5月15日 晴れ

花粉が酷い。マスクをしている人が増えた。


今日は人体解剖の日だ。

今回は1体の遺体が運ばれてきた。

前の4体とは顔が違ったので、新品なのだろうか。


前回より機材が多い。手術用具からチェーンソーまであった。

前回も実はマスクも、青緑色の医療用白衣であるスクラブも着用していた。

今回は手袋は全員常時装着だった。


「今日は1体を先生が実演して解剖する。飛び散るから絶対マスクを外すなよ。

質問は随時受け付けるからな」

そう言うと早速腹をメスで切開した。図説で見た通りの中身だった。

図とは色がちょっと違ったけど、図は分かりやすさ重視だったのだろう。写真は正しかったのだが。


小腸、大腸などが次々取り出される。

大腸は肛門と繋がっていたが、切断されて取り出された。そのせいで肛門はただの穴になった。


臓器はまだいいのだが、血管がたくさんあった。特に心臓周囲が凄い。

どうするのだろうか。

そう思っていると、先生は下大静脈は切断せずにチェーンソーを取り出した。


「肺や心臓は取り出しにくい。肋骨が邪魔だからな。

そこで、チェーンソーで骨を斬って外してしまうぞ」

ウィーンと凄い音を出しながら肋骨に接触する。

骨や肉の小さな破片が、木屑のようにブワブワと飛び散る。

先生は、臓器を傷つけないように、大胆かつ繊細に斬り進める。

胸部に当たる部分の肋骨が(ふた)のように取り除かれ、綺麗な肺が顔を出す。

取り出された(ふた)には、乳首などの肉がついたままで、薄い胸板になっていた。


金属トレーには取り出された部位が徐々に増えていく。

心臓は下大静脈や大動脈弓などの、繋がっている血管を切らないまま取り出された。


股間あたりに飛び出す臓器は未だ繋がってはいるが、胸腔(きょうくう)腹腔(ふくくう)どちらも空になった。

「次は、頭部を外してから、頭部以外の肉の裁断だ」

先生がそう言うと頭部がバッサリと切断された。

転がり落ちないように生徒が頭蓋を支えていたので、転がり落ちはしない。

その生首は断面が見えるように金属トレーに横にして置かれた。

半開きの口から歯が少し覗く。弛緩(しかん)し乾いた舌も多少飛び出していた。

当然だがザラザラとしている。僕は触っていないのだが。

血管もあるのだが、(のど)と思われる穴もあった。


誰かがそこに指を突っ込んでいたので聞くと、指が口から出てくるか試したと言っていた。

お前の指はそんなに長いのか?と言うのはやめておいた。


切りにくいので、まずは大まかなパーツに分解された。右腕、左腕、右脚、左脚、胴体だ。


まず、右腕が台に置かれる。魚のようにプルンとした気がする。

薄くはないが、ハムのように切り落とされる。骨があるので当然チェーンソーでだ。

丸い板のような肉は最早人間を連想するのは難しい。パックに詰めたら何かわからないかもしれない。


先生は右半身と左半身で切断面を変えていた。

右は輪切りに、左は縦というか少し斜めに斬っていた。取り敢えず横ではないということだ。


先生は胴体は股間に付く臓器を切り取り、袋を開け玉を取り出したり、バナナを分解してみたりしてた。

その後、背骨と肉を切り離し、骨髄などが顕になった。


「最後は頭部を解体するぞ」

間も無く、河童(かっぱ)の皿のように頭頂部が切り離される。中には当然脳みそが入っている。

切る時に髪の毛も多少切れるため、飛び散った。邪魔なので飛び散ったそれを掃除する。


ここまで慣れたものだ。誰一人吐きもしない。

最近の僕も大概なのだが。

解剖されている遺体の生前を全く知らないため、そこまで深い思いは抱かなかったのだから。


その後、三半規管や眼球などが次々取り除かれるのだが、これは気持ち悪かった……。

顔だということが影響したのだろうか。気分が悪い。

舌は辛子明太子のような状態で、目はハロウィンのデザートを連想できたので多少は大丈夫だったが。


全て終わると壮観だった。

金属トレーには……最早人間とは思えない、原型を留めていないパーツで溢れかえる。

この日はこれらを観察しスケッチを作り、レポート提出で終わった。


授業後は、授業中に出来たパーツをゴミ袋に入れて、ゴミ捨て場に捨てに行った。

“生ごみ”に、だ。

骨は生ごみなのだろうか?

深く聞かないでおこう。変な理由が浮上してしまうかもしれない。

肥料にするとでも思うことにしよう。


後日、評価が記載されたレポートが返却された。

最高評価だった。嬉しいかは微妙であるが。


-------------


終皇80年5月16日 小雨

今日は湿気のせいで花粉が少ない。


今日は健十郎が休みだった。先生もわからないという。

どうしたのだろうか……。

放課後、裕さんたちの部屋にでも行くか。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ