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1億総活躍社会のディストピア  作者: シャム猫ジャム
ジパング
40/87

進級試験

目的が決まった。

だからだろうか?国語がどんどん頭に入ってくる。

絵里が、もう心配は無さそうね、と声をかけてきた日もあった。


終皇80年3月20日 快晴

今日は暖かかった。


今日は僕の進級試験の結果が発表される日だ。

結果を見るために、僕は試験会場となった区立大学に来ている。

今日のニュースは、部分日食と合格発表で盛り上がっていた。

部分日食は見てみたいが、今日の部分日食は全然欠けないから面白味がないと思う。


中学への進級試験は、受験科目が国語、算数、理科、体育、図工の5科目だった。


1日目は筆記、2日目は実技、3日目は面接と小論文だ。

実技は体育、解剖、図工がある。

因みに、小論文は国語の配点の中にある。


高校への進級試験では、算数が数学に、体育が保健・体育に、図工が技術になるようだ。


悲しいことだが受験番号はなく、合格番号だけあるのだ。それも欠番が一切ない状態の。

不合格者は戸籍から“除名”されるため、番号を振る事すらされない。だから合格率は100%だ。

受験はマイナンバーによって管理されているため、番号が必要ないのも理由だろうか。

そんなことを思いながら合格番号を探す。

これは日記が情報源だ。


僕のマイナンバーはっと・・・。

探すだけで一苦労である。

番号順になっているわけでもなく、所属順になっているわけでもない。

膨大な番号の中を探すのだ。

見つけたらその札と、自分のマイナンバーカードを持って合格面談に入る。


1時間かけて番号を探しだした。

なかったらもう一周するハメになる。

番号があっても、見つけられなかったら合格面談が受けられず、進級出来ないのだ。

だから皆、合格発表の日も体調と到着時刻を調整している。

日記には書いてなかったが、これすらも刷り込みなのだろうな。


マイナンバーカードと番号札を持って、面談会場に向かう。


-------------


すでにたくさんの列ができていた。

僕の順番は何時頃になるのだろうか。

暇だからといって寝る訳にもいかない。寝て、飛ばされでもしたら最後尾行きなのだから。


-------------


3時間待った。

まだ順番が来そうにないのでごはんを食べることにした。

こういうこともあるため、誰もが弁当を持参している。

僕の今日の弁当はお母さんの手作りだ。

学校では給食だったから、弁当自体久しぶりかもしれないな。

前に食べたのは・・・、そう。遠足の時か。5月ごろに行われたっけ。

年1回の行事だからな。それも徒歩で。

いや、徒歩ではないな。マラソンに近いな。


今日のメニューはっと、

となりのトロロのおにぎり、薔薇(ばら)型のハム&チーズ、竹輪のマヨ焼き、野菜だった。


『となりのトロロのおにぎり』

人気キャラクター“となりのトロロ”の形を再現したおにぎり。弁当の主役だ。

材料はご飯、黒すりごま、海苔(のり)、スライスチーズ、パスタだ。

“となりのトロロ”は、昨日は居た隣の人が溶けて居なくなるという話で出てくる。

当然国語だ。


『バラ型のハム&チーズ』

ハムとチーズを巻き、爪楊枝(つまようじ)で刺して固定し、薔薇(ばら)型を作ったもの。

ドリーム・カム・トゥルーという、黄色とピンクが鮮やかな薔薇(ばら)を模している。

弁当に彩りを出している。


『ちくわのマヨ焼き』

竹輪にマヨネーズを入れ、1口サイズに切った後、焼き上げたもの。

雲を演出している。


『野菜』

これは手抜きか?一応は草原というか森というか、緑を演出して入る。

ただ単にレタスやキュウリなどが盛りつけられてあるようだ。


頑張って作ったんだろう。

僕はもったいないと思いつつも、美味しく頂いた。

最近はキャラ弁が流行っていて、男子の弁当にもこのようなデコレーションがしてある。

目で(たの)しむことを学ばせようとでもしているのだろうか。


-------------


食べ終わって(しばら)くすると順番が回ってきた。

面接室に入ると、思い出せないが何処(どこ)か見た人が居た。思い出せない。

その女の人は僕の面接を始めた。


「まずは、試験合格おめでとうございます。点数の開示は必要ですか?」

「お願いします」

そう言うと、成績表が渡された。

答案用紙、実技映像、作品は返却されないようだ。


国語:89点(重み4.5)

算数:100点(重み0.125)

理科:100点(重み0.125)

体育:98(重み0.125)

図工:95点(重み0.125)


総合点:449.625点


1ヶ月前の僕なら300点もなかっただろう。


「国語が低いですね」

「そうでしょうか」

「ええ。大抵は国語が一番高くなるものなんです。勉強に手を抜いては居ませんでしたか?」

言われてみればそうだった。ここは勢いで押し切ろう。

「いえ!試験前は毎日みっちりと国語ばかり勉強していました!」

「そうですか。では、実技についてですが、解剖は素晴らしい出来でした。

正確に部位を切り分け、内容物を丁寧に取り除き、関節を綺麗に外す。

そうですね。プラモデルをバラしているかのように綺麗でした」

自分でやったことなのだが、言葉にされると少しだけ生々しさがあった。

「そうですか・・・?」

「もっと自信を持ってくださいね」

「は、はぁ」


「論文はまぁ・・・可もなく不可もなくでしょうか」

「覚えるのは行けたですが、考えて書くのが難しくて・・・」

「徐々にうまくなっていきましょうね」

まるで一緒にやろうと言っているような・・・

「良い忘れていましたが、4月から私は中学校の教員になります。これからよろしくお願いしますね」

そうだったのか。でもやはり思い出せない。

「はい、よろしくお願いします」


面接はこの程度で終わった。


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