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1億総活躍社会のディストピア  作者: シャム猫ジャム
ジパング
31/87

サンタクロース

終皇79年12月24日 晴雪(せいせつ)

昨日降った雪が日光を反射しキラキラと(かがや)く。


「はー、何でクリスマス・イブだっていうのに休みじゃねーんだよ・・・」

「別にいいじゃん。皆と会えたんだしね!これから裕さんのとこ行って、皆で遊べるしね」

「いや、今日は俺行かねーよ」

「そういや、(たま)に来ないことあるけど、何してるの?」

「そりゃ、ちびっ子の面倒だろ」

「ちびっ子って弟とか?」

「ああ。父さんは忙しいし、母さんは最近体調不良だしな。

兄弟で交代で面倒見てるんだよ」

「昼はどうしてるの?」

「昼はベビーシッターが何人か来てるから、今のところ問題ないな」

「じゃあ真夜中とかどうしてるの?ベビーシッターは夜来ないよね」

「夜も兄弟で交代制だな」

「疲れない?」

「疲れるに決まってるだろ。寝不足で、次の日はイライラしてたりするしな」

「居眠りする日があるのはそういうことか」

「寝てたのバレてたのか・・・」

「起きてる風を装ってても、バレバレだったよ」

「改良するか」

「何を改良するの?」

絵里はやっと下校の準備ができたらしい。

「お前に言うほどのことじゃねーよ」

「飛鳥、健十郎はなんて?」

「おい、絶対言うなよ?」

「居眠りがバレないように改良するんだって」

「おいいいい」

「馬鹿馬鹿しい」

「別にいいだろ」

「健十郎にも事情があるから、その辺にしてあげて?」

「飛鳥・・・」

落として持ち上げたら健十郎は少し嬉しそうな表情をしていた。

どうやら理解者だと思われたようだ。


-------------


裕さんたちの住処に着くと、玄関にはクリスマス用のリースがかかり、装飾品も増えていた。

ここ数日掛けてゆっくりと準備してきたので、ある程度は完成していたのだが。


いつも通り奥まで来ると、部屋の中でクリスマス・ツリーにメッキボールを付けている裕さんと哲さんがいた。

百合さんは料理中のようだ。


「裕さん料理得意なんじゃないの?」

「俺?俺は料理得意だけど、百合姉の方が上手いよ」

「へぇ、そうなんだ。楽しみだなー」

「本当は哲の方がもっと上手いんだけどね・・・」

「・・・」

「偶に一緒に料理するんだけど、本当に上手いんだ。

レシピは覚えてないみたいだけど、体は覚えてるみたいなんだ」

「もしかしたら記憶戻るかもしれないね」

「だといいけど・・・」

「ゆっくりでいいんじゃない?」

百合さんが料理を運んできた。

「一応ケーキも作ってあるけど、あとでいいわよね?」

「いきなりケーキ食べるってわけにも・・・」

「俺はケーキからでもいけるぞ」

「味にも鈍感だったとは」

「「あははは・・・」」


メニューは七面鳥の丸焼きと、ローストニンニク、チポラタソーセージのベーコン巻、そしてクリスマスケーキで、飲み物はシャンメリーだ。

お酒が全面禁止のため、炭酸飲料がよく売れるらしい。

ニンニクはニン↑ニク↓と発音するらしい。

国が供給する人工肉で、非常に柔らかい霜降り肉なのだとか。


「このローストニンニク、超美味しいね!」

「この柔らかさが最高よね」

「さすが百合姉。味付け完璧だよ!」

「哲が作ってくれればねえ・・・。

って、皆ローストニンニクばかり食べてないで、他のも食べなさい」

「そういう百合さんもローストニンニクばっかり食べてるよ?」

「だって美味しいんだもん・・・」

「じゃあ俺も美味しいから食べるね!」

絵里と哲さんは無言で食べている。

無言の理由は違うだろうが。


「哲。クリスマスプレゼントだよ」

「わーい」

「何が入ってるかなー!」

(てっ)ちゃんの大好きなものだよ!」

「んー!」

ワクワクしながら袋をあけている。

本当の子供のように、袋をビリビリと破り捨てている。

こればかりは仕方ないか。

そう思い、ゴミを集めて捨てた。

「わー」

「良かったわね」

「お兄ちゃん、お姉ちゃん、ありがとう!」

「「どういたしまして」」

中身は電車の模型だった。

走るため、レールも付属しているようだ。


-------------


暫く模型に夢中だったようだが、ケーキが運ばれて来るとケーキに目が行っていた。

クリスマス仕様だがちゃんと蝋燭(ろうそく)は立ててある。

何本にしようか迷ったらしいが、立て過ぎたら蜂の巣みたいになって綺麗じゃないという理由で8本に決まったらしい。

7本は縁起が良いが、等間隔に並べにくいという理由で却下されたようだ。


蝋燭(ろうそく)に火が灯る。

「じゃあ電気消すわね」

部屋を優しく淡いオレンジの光が包む。

「哲。ふーって火を消してごらん!」

「わかった!ふーー。ふーー」

再び電気がつく。

「じゃあ切り分けましょうか」

「やったー」

百合さんは包丁を取りに行ったようだ。


上手く切り分けられず、微妙に大きさが違う。

「そっちの方が大きい!」

「これが欲しいの?」

「うん!」

「はいどうぞ。(てっ)ちゃんはもっと食べて大きくなるんだよね!」

「うん!早く裕兄みたいに立派で格好良くなりたいんだぁ!」

裕さんを見つめながら、目を輝かせている。

裕さんは少し照れくさそうだった。


皆で美味しいケーキを食べていると

ガチャッ。

玄関の方から音が聞こえた。

誰かが鍵を開けて入ってきたようだ。


「誰かしら・・・」

「他にも誰か呼んだの?」


侵入者はズカズカと僕らのいる部屋まで入ってきた。

赤い帽子に赤い服を着た白ひげの男は、ブーツを履き、白い袋を持っていた。

「サンタさん?」

哲さんがそう問いかける。

見たことのない顔である。

一瞬先生かと思ったが、違ったようだ。


「あなた誰?誰かの知り合い?」

「この部屋の鍵は、今ここにいる人しか持ってないよ?」

「じゃあ、鍵は一体どうやって・・・」

「あ、健十郎の・・・」

鍵が無くなったんだった、と言い切る前にサンタが何かを取り出した。


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