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1億総活躍社会のディストピア  作者: シャム猫ジャム
ジパング
30/87

雪だるまを作ったよ

終皇79年12月10日 曇

本格的に寒くなった。あの雲は雪雲だろうか?


現在、柔道場に向かって移動中だ。

「うぅー寒っ。この寒い中、柔道場で体育とかありえねーだろ。しかも、柔道場まで徒歩だし」

「無駄に遠いよね。学校の敷地内にあるといいのにね」

「飛鳥は体力あるんだから、問題ないでしょ」

「休み時間を割いて移動するっていうのが嫌なんだよね」

「せめて体育館にマット敷くとかしてほしいな」

「贅沢言わないの」

「絵里は寒くないの?雪も積もって気温も低いのに、柔道着で移動なんだよ?」

「体を動かせば大丈夫でしょ」

「気合あるねー」

「気合だけだろ」

「一言多い」


-------------


僕たちは市民会館に来ている。

柔道場だけ確保できなかったためだ。


「皆集まったかー」

「「「はーい」」」

出席確認も含めて、点呼だけとった。

足が(かじか)むどころか、感覚が無くなるほど冷たいフローリング。

なぜ畳を敷き詰めないのか。理解に苦しむ。


高いクッション性、多彩なカラー対応、抗菌機能付きの衛生的な畳!

これで()つるぜ「(すぐろ)」ポピュラータイプのお求めは、ジパング産機まで!

そんなCMを思い出した。


-------------


毎日、午後全てを使って体育は行われている。

体育の授業はまず、伸脚などのストレッチと、体側(たいそく)などの第一と第二のラジオ体操から始まる。

次にするのは筋トレだが、小6にもなれば腹筋だけで500回にのぼる。

柔道では、わき締めや逆エビなどの準備運動も加わる。

最後にかかり練習、約束練習、寝技練習、自由練習の順に行う。


因みに男女は別れて行う。


「はぁっ、はぁっ。飛鳥っ、腹筋っ、早すぎっ、だろっ!」

「ぜっ、んっ、ぜっ、んっ!」

そう、いつも通り筋トレまで一番最初に終わるのだ。

あくまでクラスでは・・・だが。

「健十郎、喋ってる余裕が有るなら速度を上げろよー」

「はいっ!」

「飛鳥も、もう終わったならもっとやっても良いんだぞ」

「そこまでする意味が見つかりません!」

「現状で満足するなってことだ。お前のお母さんの様に上を目指せ」

「そういえばずっと聞きたいと思ってたんだけど、先生はお母さんとどういう関係なの?」

「飛鳥の先生と、飛鳥の母親って関係だな」

「そういうことじゃなくって・・・」

「そんなに知りたいのなら、放課後、職員室まで来れば教えてやるぞ」

「ホント!?」

「ついでに面談もしよう」

「あっ・・・放課後は用事あるんだった。やっぱりやめておくね!」

はははは・・・と乾いた笑い声が聞こえた。

おっと、自分の声だったようだ。


自分の体も十分ムキムキなのだが、年齢のせいだろうか。

いや、身長のせいが一番なのだろう・・・。

裕さんのようなガッシリした体躯にはまだまだ遠そうだ。

現時点ではこれ以上望めるとは到底思えない。

だから現状維持になっているのだが。


その後、本格的な柔道練習を終え、帰宅する・・・。

いや、まだ帰宅ではないな。

例の如く、裕さんたちに会いに行くのだった。


-------------


今日は久々に部屋の中が暗かった。

なぜなら誰も居なかったからだ。

「あれ?珍しいね。哲さんすら居ないけど」

「まさか・・・」

「まさかってなんだ?心当たりでもあるのか?」

「い、いや。別になにもないよ?ね!」

「そうね」

「・・・?ならいいが・・・」


哲さんの部屋を覗くと散らかっていた。

掃除はしているのだろうか・・・。

「この部屋汚いけど、掃除でもしておく?」

「そうね。ハウスダストでアレルギー性鼻炎になっても大変だし」

「なんだそりゃ」

「鼻がムズムズして、鼻水が止まらなくなるやつだよ」

「あー。花粉症みたいなやつか」

「そうそう。まぁ花粉症酷い人はハウスダストもダメだったりするけどね」

「へー」

「コンビニも結構酷くってね。

見た目は綺麗なんだけど、1日中空調機かかってるから、常に(ほこり)が舞ってるんだよね。

アレルギーならコンビニではマスク必須だよ!」

「そんな埃っぽい店が悪いだろ」

「全部の店かどうか知らないけど、近所にあるコンビニはそうだっておばさんが言ってたよ」

「どのおばさんだよ」

「健十郎の、ね」

「俺の母さんかよ」

「あんなに繊細な人から、こんなにも図太くて鈍感なのが生まれてくるなんて・・・。おばさん可哀想」

「おまっ・・・」

「まぁまぁ」

苦笑いしつつ(なだ)めた。


ドアのほうが騒がしい。

誰か帰ってきたようだ。


「あれ?もう来ちゃってた?」

「ついさっき来たところです!」

どうやら2人で出かけていたようだ。

「裕兄、哲を外に出して大丈夫なのか?」

「平気だよ。公園にちょっと行ってただけだから」

「そういう問題じゃないからな?」

「誰かに声かけられたりしなかったんだよね?」

「大丈夫だったよ。そもそも公園には誰も居なかったしね」

「何話してるのー?」

「俺と哲が公園で何してたのかって話だよ」

「んーっとね、僕と裕兄は、雪だるま作ってたんだ!」

「大丈夫なんじゃない?そこまで心配する必要はないと思う」

「絵里は黙ってろ。大体さ」

「それ以上やるとまた哲さんが・・・」

「健十郎はもうちょっと空気を読むべき」

「・・・」

健十郎は黙ってしまった。


「ところで、哲さんの部屋が散らかってるけど、掃除したほうが良いと思うけど」

「そうだね。俺も暇だしそうするよ」

「僕も手伝うからね!」

「私も」

「凄い助かるよ!」

「俺は・・・」

「あれだったら、健十郎は帰ってもいいよ?」

「確かに、3人居れば余裕だもんね」

「いや、手伝うよ」

「ふーん」

「何だよ」

「何でもない」

「仲いいね」

「「良くない」」

息ぴったりで、僕はつい笑ってしまった。


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