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1億総活躍社会のディストピア  作者: シャム猫ジャム
ジパング
16/87

美味しい夏野菜

終皇79年8月1日 快晴

日差しが強く暑い。


蒔菜(まきな)さんいらっしゃい」

「お義母さん、暫らくお世話になります。」

「お婆ちゃーん、こんにちは!」

「飛鳥くんも、おっきくなったわね」

「もう6年生だもん、当然!」

「飛鳥、荷物運ぶの手伝って頂戴」

「はーい」

「じゃあお茶の間で待ってるわね。荷物は2階の開いてる部屋でいいわよ」

「わかりました」


二階は相変わらず広い。しかも(ほこり)っぽい。

「ごほっ」

埃っぽさの余り、咳き込んでしまった。

足腰が悪くなった老夫婦が、バリアフリーではない家に住んでいるのだから仕方ないのではあるが。

「このへんでいい?」

「そうね。整理は後にして、とりあえず下に降りてお義父さんに挨拶しましょうか」

「はーい」


「お爺ちゃん久しぶりー!」

「おう!名前はなんだったかな・・・」

「飛鳥だよ!」

「そうかそうか。元気いっぱいだな!」

「元気だけが取り柄とか言われたことあるくらい有るよ!」

「ふははは」

「お久しぶりです、お義父さん。」

「おう、蒔菜(まきな)さん。ゆっくりしていくと良い」

「そうさせていただきます」

「はい、お茶どうぞ。飛鳥にはジュースね」

ごくっ。「ぷはー、生き返るー!」

「将来は酒も飲めそうだな!」

「美味しくなさそう」

「美味しさは、そのうち分かるもんだ」

「ピーマンも苦手だから、たぶん無理だと思うけど・・・」


少し体調が悪い。

「飛鳥、大丈夫?」

「暑くて少し怠いかも・・・」

「クーラーの使い過ぎかしらね」

「クーラーは今故障しているから、扇風機持ってくるわね」

「それは私がしますよ」

「ちょっと横になってるね」

「後で冷えたスイカ持ってくるからね」

「ありがとう、お婆ちゃん」

「いえいえ」


お母さんが持ってきた扇風機にあたりながら、昼寝をした。

お母さんが言うには慣れで治るらしい。

夏バテ特有の食欲不振が起こり、冷えたスイカを一切れ食べた程度である。

その日は氷枕でそのまま寝てしまった。


-------------


終皇79年8月2日 快晴

昨日よりは体調がいい。


今日は海水浴にでも行こうと思う。

田舎の海なので、地元の人しか来ない、隠れスポットのような場所である。


「昨日よりも体調がいいから、海にでも行こうかなー」

「1人で行かせるのはちょっと心配ね。お義父さんもお義母さんも足腰が悪いからついていかせるのは悪いし、お母さんはこれから買い物に行く予定だから」

「じゃー畑でも探検してるよ!」

「明日なら海でも良いわよ」

「はーい」


畑には夏野菜が植えられていた。

トマト、茄子(なす)、ピーマン、玉葱(たまねぎ)はわかった。

「この太い、胡瓜(キュウリ)みたいなのは何?」

「加賀太きゅうりって言って、味噌汁に入れるとすんごい美味(うま)いよ」

「やっぱり胡瓜(キュウリ)なんだ・・・」

太さ7cmもある極太だ。

普通のきゅうりと違い表面は滑らかで、肌触りが良かった。

「こっちの紫がかってる葉っぱは?」

金時草(きんじそう)だな。天麩羅(てんぷら)が好みだが、婆さんなら酢の物って言うだろうな」

「じゃあ、この潰れた枝豆は?」

「煮物にすると美味(うま)い、つる豆だな。まぁ千石豆(せんごくまめ)の事だ」


「これは何だと思う?」

「普通に茄子(なす)でしょ?」

「残念。よく見てご覧?(へた)が普通の茄子(なす)と違って紫色をしておる」

「よく見たら、実もまんまるだね」

「そうだな。丸ナスなんて呼ばれることもあるな」

「で、名前は?」

「ヘタ紫なすだ」

「そのまんまだね」

「シンプル・イズ・ザ・ベストだぞ」


「じゃあこっちはどうだ?」

「えっ、玉葱(たまねぎ)じゃないの?」

「ふっふっふ。そもそも玉葱(たまねぎ)が地上に転がって実るはずなかろう」

「そういえば・・・」

「名前は何だったか・・・うーん・・・」

打木(うつぎ)赤皮(あかがわ)甘栗(あまぐり)かぼちゃですよ」

「そう!それだ、それ!」

「へー。これかぼちゃなんだ」

「凄い甘いわよ。名前通り、味が甘栗みたいって言う人も多いわ」

「苦いのは嫌いだけど甘いのは好きだから、これ食べてみたいなー」

「じゃあ後でプリンにでもしましょうか」

「わーい!」

「さーお昼にしましょ」

「そうだな」

「あれ、お母さんは?」

「遠いから向こうで食べてくると思うわ」

「なるほど」


御飯を食べていると騒音が聞こえてきた。

「なんか(うるさ)いね」

「田舎とは言っても、軍人さんは警備していますからねえ」

「あーそうなんだ。今時騒音問題になる地域はエアコン設備とかに費用下りるんじゃないの?」

「ヘリは最近になって来るようになったからね。それに故障したエアコンは今度新しいのになるから大丈夫よ」

「ふーん。あ、この味噌汁超美味しい!」

「だから言っただろ?」

騒音はあったものの、笑い声が絶えない食卓だった。


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