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1億総活躍社会のディストピア  作者: シャム猫ジャム
ジパング
15/87

ウェルテル恐竜博物館

リングダウンは見ずにホテルに戻ってきた。

哲兄は相変わらず寝ていた。

裕兄も、することがないのか一緒に寝ていた。

経緯を知っている俺からすればそんなものなのだが、知らない人が見たら男性同性愛者(ホモ)と思われても仕方ないような状態であった。


「そっとしておきなさいよ?騒がれたら大変なんだから」

「百合姉の失敗を、俺がするわけ無いよ」

「ちょっ」

「言うね~。百合は融通聞かないから、偶にああなるよね~」

「幸兄さんも、揶揄(からか)わないでください」

「とりあえず扇風機でも掛けてあげるよ」

「そうだねー、熱中症になったら大変~」

「チャラ・・・幸兄さんの言うとおりね」

「百合姉が、幸兄の事をチャラ男だってさ」

「へぇー?」

いつもどおり笑っているが目が笑っていない。

「わ、私は明日の準備があるから」

そう言い残して逃げていった。

「つれないなあ~」

ニヤリとする。

こっちは別の意味で危ない気がするなあ・・・。


-------------


その日の夜、家族会議が行われた。

大抵は15歳以上でやっているのだが、諸事情により俺も加わることとなった。

母さんは買い物の整理をした後、哲の様子を見ているため居ないが。


「で、どうするわけ?哲と裕があんな状態じゃ移動しづらいわよ」

「健。それで、百合が言っていることで間違いないんだな?」

「うん。大体合ってる」

「うーん。困ったなぁ」

「父さん。俺は仕事があるし、早めに帰っても平気だが?」

「俺も帰りたい~」

「じゃあ私もー」

「そうだな。小さい子たちと先に帰ってもらうか。(つい)でに哲と裕も任せれるか?泰一郎」

「任せて下さいよ」

「そういうことだから、半数は家に帰ってもらう事になるな。

念の為に母さんにもついていってもらう。

以上!解散」

「「「はーい」」」


-------------


「裕兄。明日、哲兄を連れて帰るって決まったよ」

「へぇー、そうなんだ。うん、それが良いと思う」

「母さんと泰兄たちも一緒に帰るから、半々になるみたい」

「過保護だなあ」

「いやー、過保護でも足りないくらいヤバイ状況だと思うけどな」

「うーん。俺としては哲をイジイジするの楽しいけどね!」

「何したの?」

「鼻引っ張りあげたり、目を開いたりとか」

「止めなよ。やっぱ裕兄も可笑しい」

「そうかな?」

「そうだよ。とりあえず伝えたから。俺はもう寝るよ」

「おやすみー」


-------------


終皇79年7月23日 曇


翌日、俺はウェルテル恐竜博物館に向けて出発し、哲兄達は家に帰る。

移動に1日かかるようで、途中にあった氷像美術館に立ち寄った。


当然のことながら、何らかのヤバイものがあるわけだが・・・。

普通にしてる分にはただの美術館だった。


氷像の他に、企画として「凍らせてみました!」があった。

凍らせることは凍らせるのだが、アイスフラワーキューブのように水に浸した状態で凍らせるのだ。

何故そうしたのか不明だが、ストーブが凍っていたり、市販のアイスを凍らせたりと意味不明である。

極めつけは、地面ごと木々を凍らせた、1辺が10mはありそうなアイスキューブであろうか。

何故こんなでかいのを凍らせたのか、最早呆れるの一言である。


割と好みだったのは、ストーブ型の氷像の中で蝋燭(ろうそく)()かれている物だった。

雫が垂れて、いつ消えるかハラハラする。

非常に微笑ましい作品であった。


帰り際にちらっと見てしまった物に、酷く驚いた。

アイスブロックの中に、瞬間冷凍されたかのように、活き活きとした裸の男女が凍りついているのだ。

活き活きしすぎて、男性の股間が巨大化している気がしないでもない。

ただ、凍っているため不明だ。

女性に至ってはフルオープンで穴という穴が前から丸見えだ。

それを認識してしまい見ていられなくなった。


作品名は「生きている人間素材」となっている。

これはある意味、他の施設よりイカれている気がする。

まぁそれ以前の問題なのだが。


-------------


終皇79年7月24日 雨

本来なら山も綺麗に見えるらしい。


ウェルテル恐竜博物館にやってきた。


いつも一緒に居る連中が居ないので、誰と回ろうか。

もういっそ一人でいいか。

「あ、ボッチ野郎だー」

寛九郎(かんくろう)がちょっかいかけてきた。

いつも通りテンションが低い。

しかし、いつも通り口汚い。

「お前には言われたくねーよ」

「俺は藍子(あいこ)と双子だからボッチじゃねーしー」

「双子でもいつも一人で居るだろ。お前のようなやつこそボッチって言うんだよ」

「どーでもいいけど、お前は今ボッチだったよなー」

「一々うぜえ・・・」

「俺の方が歳上なんですけどぉ?」

「失せろ」

「はぁー?なんてー?」

「・・・」


ウザいので、早足で()こうとするも、何故か付いて来る。

「いいかげんにしろよ」

「俺も怠いけどさ、父さんがどうしてもって言うからお前のお守りしてやってるんだよ」

「へー。でもお前にお守りされる程のことなんてねーから。

それに、お守りされるべきなのはお前だろ」

「死ねよ、糞が」

「お前がな」


「そういやさ、婆ちゃんがここのサバイバルに挑戦するらしいよー」

「へー。そりゃ凄いねー」

ついつい棒読みで返答してしまった。

婆ちゃんはこっちで()くつもりなのだろうか。

「暇つぶしに見てかねーか?」

「一人で行けばいいだろ」

正直俺も見てみたい気はする。

あの体力自慢のお婆ちゃんのことだ。

良い線行くと思うんだよな・・・。


と言うものの基本的には恐竜の骨が展示してあり、その詳細な研究成果や説明が、わかりやすくとは言え書かれているのみである。

非常に退屈なのは事実なので、サバイバルを見に行くことにした。

寛九郎(かんくろう)が、「素直になれよなー」とかほざいていたが、気にしない。


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