タワー資料室【※】
特にすることがなくなったので資料室にやってきた。
様々な施設の詳細が史実として書かれている。
挿絵はなく、全て写真が入れられている。
肖像権などという過去の遺産はないので、堂々としたものである。
『スカイ首吊りタワー』
前年号時代にあった電波塔を取り壊し、新規電波塔として製造された国有の巨塔。
自殺の名所としてオープンするも、同時に開園したネズミーランドに人を取られたことで、解剖ショー、リングダウン、生首展示場などの催し物が企画された。
毎日首吊りバンジーにより・・・
2つの写真はどうやら耳捥げネズミーマウスと前の電波塔だろうか。
相変わらず趣味の悪いネズミである。
確実にファビョっている顔である。
今にも目玉が飛び出しそうだ。
こないだは遠目で見ていたからよくわからなかったが、裕兄は何も思わなかったのだろうか。
『首吊りバンジー』
リングダウン環の上にあるバンジー環から、手足を縛り、紐を首に巻いた状態でバンジージャンプし、死を促す催し物。
自殺への簡単な経緯を記入し、同意書に直筆で署名することが義務付けられている。
高所より落下するエネルギーを用い、その衝撃で頚椎損傷などを起こし、即、意識を失い、確実に死に至らしめる頸部脱臼窒息法を利用する。
そのため苦しみは比較的少ない。
自殺志願者が確実に死ぬよう、最低でも20分は引き上げない。
一度引き上げた後、手足を解き、再び吊るす。
結果として、最低でも合計2時間前後野晒にするようだ。
夏場は1時間半、冬場は3時間程度と補足されている。
自殺志願者が、長時間てるてる坊主のようにぶら下がる事となる。
この事から別名、晴れ乞いの塔とも呼ばれる。
リングダウン環から撮ったとされる晴れ乞いの模様が何枚も貼られていた。
女性のスカートの中が見えているものもある。
ただし、オムツが履かれていた。
資料によると、排泄物落下の可能性があるためとされていた。
確かに肛門の締りがなくなるから当然か・・・。
生前の顔、1回目の引き上げ時の死に顔、2回目の引き上げ時の死に顔、処分前の死に顔、展示中の頭部と比較写真もあった。
非常に生々しい限りであった。
『臓器保存病棟』
解剖ショーが行われる、臓器保存を主とする病棟。
医療行為を行うため医者が在籍し、病院の側面を持つが、患者を治すことは一切受け付けていないので、救急車で患者が搬送される事はない。
ガラス化法と急速自然解凍法を併用するため、半永久的に臓器保存及び利用が可能となるらしい。
展示の風景が写っていた。
やはり値段と番号が付けられていた。
ここまで分解されたらただの品物なのだろう。
『解体ショー』
臓器保存病棟で開催される、完全公開の解剖。
臓器提供者に全身麻酔を施し、提供部位の全てを迅速に取り出す。
初期は一部に公開されていたが、口コミで広まったため一般公開された。
要望が多かったため、現在では無麻酔解剖も実施されている。
観覧者の要望は多いが、希望する臓器提供者は少ない。
そのため解剖希望の、無麻酔の臓器提供者を優先して処理しているようだ。
無麻酔を観覧するには、何らかの優先事項のある者か、追加料金が発生するらしい。
俺の場合は多分、母さんのせいだと思う。
入場時に密かに付けられた缶バッジがそれにあたるのだろう。
初期の解剖ショーの写真があった。
周囲から見えないように暗幕で周囲を覆っているようだ。
ここでは無麻酔と麻酔双方の解剖ショーの動画も再生されている。
『粉骨砕身炉』
当館で生じた遺体を肉と骨を綯い交ぜにして肉団子にし、肥料とする地下施設。
炉と呼ばれるのは、回転装置の部分がタービンに似ているためである。
『生首展示場』
当館で生じた頭部が無事な遺体の展示を行う。
生首は全て目を開いた状態で展示する。
一部は作品として口を開けたり、表情を作ったり、小物を用いたりして飾られる。
過去の作品例が写っていた。
鼻に鉛筆を刺してみたり、煙草を咥えさせたりとやりたい放題であった。
死体というのがあれだが、弄ること自体は興味がないでもない・・・。
『リングダウン環』
環という言葉が重複する名称を持つドーナツ型の設備。
実際にはリングダウンを外側に持つ環のことで、リングダウンとは差すものが違う。
フォールダウン環、イベント環、管制環の3重構造となっている。
『リングダウン』
フォールダウン環を用いた圧殺イベントで、絶叫マシンのフリーフォールにも使われる。
リングダウン開催時は建物への出入りは一切できず、落下地点付近に一般人の立ち入りは制限される。
立ち入れるのは自殺志願者のみである。
地上に立つ自殺志願者目掛けて落下し、押しつぶす。
衝撃対策として、地面接触高度になると減速を始める。
このままでは衝突するため、地面は開閉式を取ることで、地下空洞部分で減速を実現する。
きちんと自殺志願者が潰れるような設計になっており、地下にある粉骨砕身炉に直接流し込まれる形となる。
血糊が付かないように、自動洗浄機能が付いている。
フリーフォール方式ため、内部では絶叫マシンとしても使われている。
フォールダウン環の床は強化ガラスとなっていて、押し潰される自殺志願者が綺麗に見える。
強化ガラスは使い捨てのため、ヒビが入った部分は次の日までに取り替えられる。
取り換えのため、フォールダウン環はそのまま地下収容となり、翌日フォールダウン環が登りきると同時に開園を迎える。
リングダウン後は、その性質上一時閉園となるため、閉園時間間際に開催される。
従って、最大でも1日1回行われるのみである。
死人がどうのこうのより、絶叫マシンなのがダメだな。
乗り物酔い的な吐気がするのだから、俺には絶対無理だ。
『3重螺旋階段』
用途別の螺旋階段で、2550段ある。
用途は主に自殺志願者用、上り観覧者用、下り観覧者用となっている。
エレベーターの隣に入り口があり、DNAを参考として建造されている。
転落死や将棋倒し防止のため、20段ごとに10mの遊びがある
また、500段ごとにトイレと自販機が置かれている。
エレベーターも3つあり、業務員用、自殺志願者用、観覧者用がある。
実際に起きた将棋倒しの写真もあった。
そこまで大きな被害にはなっていないように感じる。
隣には各エレベーターから見える風景も添えられていた。
一応展望台もあるしな。
『展望台』
バンジー環の中にあるドーナツ状の展望台。
ここはリングダウン環と違い落下はしない。
富士山が見えたり、・・・
【間も無く、本日2回目の首吊りバンジーが開催されます】
とりあえず行ってみるか。




