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1億総活躍社会のディストピア  作者: シャム猫ジャム
ジパング
11/87

スカイ首吊りタワー【※】

恐らく、終皇79年7月22日 晴れ

山も綺麗だったらしい。


今日はスカイ首吊りタワーに来た。

午後からは、近くのショッピングモールで買物をするらしい。


『スカイ首吊りタワー』

国内最大の自殺の名所で、電波塔も兼ねている。

首吊りバンジー、粉骨砕身炉、リングダウン、生首展示場、臓器保存病棟などがある。

売りは自殺を一般公開している点で、撮影だけでなく中継も全面許可されている。

であるにも関わらず自殺者は後を絶たない。

これはウェルテル効果に依る。


『ウェルテル効果』

自殺報道により、自殺が増える現象のこと。

ジパング管轄の元、ウェルテル恐竜博物館で実証実験された。

ウェルテル恐竜博物館での成功を踏まえ、ネズミーランド、スカイ首吊りタワーなど多数の施設が開園した。


「あれはなーに?」

恕十(ジョージ)は成長が遅いため、未だに保育園児並である。

だが俺は単に引っ込み思案なだけだと思っている。

「あれはスカイ首吊りタワーって言って、()れから行く所だよ」

「ふーん」

恕十(ジョージ)の目は既に違うところを見ていた。

相も変わらず指を(くわ)えている。

「はぁー。あんな建物が彼方此方(あちこち)にあるから、哲も裕も可笑(おか)しくなるんじゃ・・・」

「百合姉、そういうのは余り言わない方が良いと思うよ」

「あんたしか聞いてる人居ないから大丈夫でしょ」

恕十(ジョージ)が居るよ」

「揚げ足とらないで」

「周りに合わせてれば多少馬鹿やってても大丈夫だよ」

「あんたって意外と考えてたのね」

「俺は苦しみたくないからな」

「ふーん」


-------------


ここは基本的には塔であるため、収容人数に限りがある。

依って、順番待ちが発生しているわけで・・・

何処(どこ)行っても順番待ちだよな」

「夏休みだからね。仕方ないわ」

「おしっこ」

恕十(ジョージ)ちゃん、もうちょっと待っててね」

「漏れそう・・・」

「すみませーん」


「はい、何でしょうか」

「この子がトイレ行きたいみたいなんだけど、列は抜けれないけどなんとかならないかしら」

「えーっと、何名様で御来場でしょうか?」

「36名よ。内33人は兄弟よ」

「因みに保護者の方は?」

「もうちょっと後ろにいると思うわ」


『あちらのお子さんのお母様でしょうか?』

『ええそうよ』

『身分証明書を拝見してもよろしいでしょうか?』

『どうして?』

『当施設では親御さんの負担軽減のため、一定以上の出産師(バーサー)のご家族は優先で入場できるようになっております』

『あらそうなの?』

『お母さんってたまーにドジするよね』

『確認いたしました。まだお若いのに37人もご出産とは・・・』

『まぁ。まだまだ産むつもりですしね』

『ではこちらへ』


「お待たせしました。優先的にご案内いたしますので、お手洗いは中でごゆっくりどうぞ」

「助かるわ。恕十(ジョージ)ちゃん行くわよ」

「うぅ・・・」

凄い必死に(こら)えている。

「もうちょっとだから、漏らすのだけは勘弁してくれよ」

やれやれ・・・。


-------------


中は非常に綺麗であった。

観光施設も兼ねているため当然では有るのだが。

右手の階段及びエレベーターは自殺志願者用、左手の階段及びエレベーターは観覧者用で、それとは別に降りる専用の階段も有る。

当然俺たちは左側になる。

優先されるためエレベーターの仕様が許可される。

今回も各自自由行動となった。


「で、どうする?」

「どうするって、適当に?」

恕十(ジョージ)は何処か行きたいとこ有る?」

「お腹すいた・・・」

「御飯はまた後でね。我慢すればたくさん食べれるわよ」

「うん、」

「首吊りバンジーは次まで時間あるし、粉骨砕身炉、リングダウンはまだやってないし。臓器保存病棟でも見学する?」

「そうね。そうしましょ。流石に生首をご飯前に見る気にはなれないわ」

「ふーん」

「何よ、何か言いたいことが有るなら言いなさい。ここ数日あんた少し感じ悪いわよ」

「別に何もないよ」

本音を暴露できる百合姉に少し焼いているのかもしれない・・・。


-------------


臓器保存病棟にやって来た。

病院と見てほぼ間違いない。

人生で何らかの事情で幕を自ら閉じるにあたり、臓器を提供しようという人が来る場所である。

臓器の摘出から保管まで全て観覧可能である。

個人情報に関しては、臓器を受け取る人には提供者の情報が開示される。

手術も選択肢があり、全身麻酔中に穏やかに摘出するか、更なる研究のために麻酔無しで絶叫の元で摘出するかである。

後者の観覧は非常に人気で、入館料の一部は臓器売却額と共に遺族に支払われる形となる。


痛みの余り、泣きながら命を乞う者も居るようだ。

ただし、手術が開始したら何があっても中断されることはない。

今日も俺の知らない誰かが臓器提供するようだ。


「生首よりこっちの方がグロいんじゃ」

「全身麻酔はそれほどでもないわよ」

「いやー、今日は麻酔なしが有るらしいよ」

「えっ・・・」

「麻酔ってなーに?」

「痛みを無くすお薬よ」

「ふーん」

「やめるなら今だよ」

「まぁ大丈夫でしょ。臓器提供だから大丈夫。

これが耐えられなかったら私も哲の後を追うようなことに(いず)れなるでしょうね」

「そんな悲観しなくても良いんじゃ?」

「この国はそういうものなのよ。あんたの方がよく知っていると思ってたけど違うの?」

「・・・」


【間も無く臓器提供者から臓器の摘出ショーを開始いたします】


「俺は飲み物買ってくるわ」

「じゃあコーヒーお願い」

恕十(ジョージ)は何が飲みたい?」

「ジュース」

「何味?」

「オランジ」

「オレンジね。じゃあちょっくら行ってくる」

「始まる前に戻って来なさいよ」

「わかってるって」


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