大男の災難
「くそッ!聞いてねーぞあんなに強いなんてッ!」
大男が悪態を吐きながら、今回依頼したダメ・タボの事を少し恨んだ。
「部下たちも全員ヤられちまったな」
「まぁいい。今回の依頼料とさっきの男から奪った金でまた増やせばいいか」
グヘヘ♪と笑いながら、セイヤから奪った袋(金の入った)を取りだし、中を覗いた。
「はぁ?……銅貨30枚ってはした金じゃねーかッ!クソッ!あのデブの依頼だから結構金を持っている奴が対象だと思ったのによ!」
大男は袋を思いっきり地面に投げつけ、怒りの対象をメタボに変えた。
それもそうだろう。なんせ楽勝だと思っていた仕事が、楽勝で負けて終わったんだからな。
さらにセイヤが大男に渡した金も日本円にして3000円にしかならないのだ。
捕まる危険性があるのに割りにあわない金額だ。
「クソ……しゃーねぇな、金貨1枚で満足してくか」
金貨1枚は日本円にして100万円だ。金使いの荒い奴は直ぐに使いきるだろう。
大男も金使いの荒い分類に入ってしまう。
そんな独り言を言っている間に、メタボのいる鍛冶屋.装備屋に到着した。
「おーい、メタの旦那~!」
大男は裏口から店に入り、メタボを呼ぶ。
「うるさいぞダイ・オーッ!表の客に聞かれたら不味いだろ!!」
「ソイツはすまねぇ」
大男は素直に小声で謝った。
さすがの大男も依頼主には頭を下げた。
「それで、あのイラつく男のマントは奪えたのか?」
「ああ、バッチリだぜ!」
大男の言葉にニヤニヤしながらメタボが聞いてくる。
「あのウザイ男は泣きながらマントを渡してきたか?」
「いや、最初は素直に脱いでいたんだが、変な女が来てから急に態度を変えて、俺の部下たちをボコりやがった」
大男の言葉にメタボは唖然とし、聞き返した。
「それでお前が帰ってきたってことは始末出来たんだな?」
「すまねぇがあれは俺の手には負えねぇよ。部下がボコられている間に逃げて来たんだよ」
メタボは唖然と大男を見ていた。
その目には、あのFランクの冒険者が強いだと?と、いったような顔をしている。
「……まぁいい、それよりマントをよこせ」
「へいへい」
大男がメタボにマントを渡した。
「じゃあ金貨貰っていくぞ」
ニコニコ顔の大男に、渋い顔をしたメタボが呼び止めた。
「待てダイ、これはなんだ?」
「何って、あんたが頼んでいたマントだろ?」
「この何の価値もないマントがか?」
メタボが問い詰める。
「何の価値もない?……俺はあんたに言われた通り、あの男が着ていたマントを取ってきただけだぞ」
「!?……あの男が着ていた?…………あの野郎!偽物を着てやがったな!こうなる事が分かって!」
メタボは顔を真っ赤に染めて、怒りを床にぶつける。
「絶対に奪ってやる!……おいダイ、お前も手伝え」
「何で俺が?」
「奪ったら金貨10枚だ」
その言葉に大男は表情を変え……
「お手伝いさせていただきます!」
「よろしい」
そう言って、メタボはマントを奪う作戦を考えるのだった。
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