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海に落ちる一滴の赤い絵の具


 この世界に欠けているものがあるとすれば、それは、僕だ。


 雨にうたれた交差点。別に僕なんかが居なくたって、どうせ世界は回っていくし、交差点はいつしか人が通れなくなる。

 雨もやんで日が射して、誰もが傘から安堵した表情を覗かせる。

 それは、僕が居なくたって成立する。


 僕はぼんやりと深緑に刻まれる白線を追っていた。

 毎日が空っぽ。何もやる気が起きない。自分だけがそうなのかと思うが、きっとそうじゃない。でも、誰もそれを見せようとはしない。空っぽを隠している。

 僕という空っぽには雨のように気まぐれに、神様が与えてくれるようなものじゃだめだ。自分の意志で何かを満たさなければいけない。でないと、空っぽは空っぽのカラカラだろう。


 どうせ、こんな事を考える事も、他人(ひと)から見れば、無駄なことで、必要の無い事だ。

 しかし、僕には周りに空っぽでない人を見つけられない。無駄だと、必要ないと、そう決めている人は何で埋めているのだろうか。


「他人が満たされる事があなたの満たされる事じゃないからでしょう。考えてみなさいよ。私はこの激甘ホイップクリームてんこ盛りのパンケーキが好き。でも、あなたはさっぱりとした甘みの水羊羹が好き。そうでしょう?」


 君の言う事は、確かに納得出来た。だから、思う。

 僕という世界に中に僕は僕を見つけられない。でも、君は君という世界の中に僕を見つけているんでしょう?


 こんな事を言う事すらきっと、無駄なんだろう。空っぽはまだまだ満たせない。空腹と同じ様に単純だと良いのにな。

 これは海を絵の具で赤く染めるくらい難しい話のような、そんな気がする。


 もしかしたら君はキャンバスで海を赤く塗るかもしれないし、夕日の沈む海を赤に染まったと言い切るかもしれない。

 それもまた、面白いかもね。


 僕の好みじゃないけれど。


 ……おっと、これじゃ、満たせないね。


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