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絶賛中学二年生空想妄想理想幻想文学少女

*****


 私の朝は毎日優雅。


 日の光がレースのカーテンから零れ、小鳥たちのさえずりが聞こえてくる。小鳥たちの声を目覚まし代わりに私は二重の目をパッチリと開く。ゆっくりと起きあがり、ベッドの上で背伸びする。

 時計を見ると針は6時をさしている。

 当たり前なのだけど、私は遅刻などしたことがない。するわけがない。目覚まし時計……? あなたがたは人工の音もしくは爆音でしか目を覚まさないの? と言ってやりたいくらいだ。


 薄ピンク色のふわふわ素材のパジャマ姿の自分を鏡に映し、髪を梳いていく。サラサラと流れる黒髪は私の自慢の一つ。丹念に髪の毛をサラサラにしていく。光が髪の毛にさし、天使の輪が出ていることを確認するまで止めない。

 某メーカーのシャンプーのコマーシャル並みに髪の毛をサラッサラと宙になびかせ決め顔。今日も私最高。


 見とれすぎは良くないので下に降りる。まずは洗面台に行き、顔を洗う。洗ったら10分以内に化粧水をつけ、保湿。乳液もつけておく。これで完璧。さすがに中学二年生であるから化粧はできないが、これくらいはしないと心配で仕方がない。

 いったん自室に戻り、可愛らしい毎日着る相棒に袖を通す。紺色のセーラー服に赤いスカーフ。プリーツのついたスカートの裾には襟と同じように白いラインが入っている。シンプルなデザインだがそれが良い。制服が可愛すぎても、制服によってだいぶ補正され、着ている人間が可愛く見える場合もあるからだ。やはりSimple is the best!


 さて、軽く髪を整え朝餉の香りがするダイニングへ向かう。朝はやはりご飯。横に添えられた味噌汁からは湯気が立ち上る。メインは鯖の塩焼き。野菜はちりめんが乗ったほうれん草のお浸しだった。純和風の朝食。最高。この時心底日本人でよかったと私は感じる。

 席につき、両手を合わせて「いただきます」と言う。目の前の両親も私を見て後に続く。鯖を一口。うん、美味しい。さすが私の母親である。


 私は両手を合わせて「ごちそうさま」を言い、笑顔で見送る両親に「いってきます」と笑顔で返す。これが私の朝。清々しい、いつもと変わらない朝なの。

 登校は1人。私の家は学校まで歩いて15分だから周りの景色を楽しみながら歩く。道ばたに咲く花を見つめていると私に影がかかる。


「おはよう」


 黒髪をなびかせながら振り返ると、声の主である学年で人気の男子がきらりと笑顔を見せた。清楚で切りそろえられた短い黒髪。二重の大きな瞳の甘いマスクは女子から絶大な人気を誇る。

 そんな彼とは幼なじみで家も近いのだが、これと言って私が興味をもてないために一緒に登校するなんてことはなかった。


「おはよう」


 挨拶されたからには返さなければいけないので何の気もなしに言葉を返す。彼は少し苦笑いした。


「せっかくだし、一緒に登校しよ」


 ここでかわいらしい笑顔で「うん!」とでも言うのが世の女子かもしれない。しかし、残念。私はイケメンとかそういうのには騙されないし、自分から惚れるなんてことありもしない。ちょっと顔が良いからきゃーきゃー騒ぐような気持ちは持ち合わせていないのだ。


「私はいろいろ見て回りながら登校したいから。ゆっくりし過ぎでイライラしてしまうからやめた方がいいよ」


 私はこう言えばいいだろうと最後に微笑んで彼の前を立ち去ろうとした。

 しかし、前に進まず。代わりに左手が熱い。


「いいよ、別に。俺が一緒にいたいだけだから」


 さすがにこれには言葉を返せなかった。頬が先ほどより赤く色づいているところを見ると、嘘ではないらしい。その少し可愛らしげな様子に私も戸惑ってしまう。


「……いい、けど。まずその手を、離してください」


 こっちまでつられて赤くなってしまいそうなので握られている手を見て言う。私が言ったとたんにぱっと手を離して困り眉で笑った。

 幼なじみとはいえ、特に仲良くもないのに不思議だと私は思う。少しモヤっとした気持ちを抱えながら、いつも居ない隣に違和感をもちながら学校へと向かう。


「……幼なじみなのになぁ」


 ぼそっとつぶやく声は私の耳には届いていな──


*****


「届いてない! 幼なじみ残念だったな。そのつぶやきもしかしたら聞こえていると思ったのか。己の都合ばかり考えるなよ、イケメン! だが、しかし。ヒロインよ、気づけよぉおおおおおおお! だけど、そこがいい! ちょっと生意気優等生キャラがこれから恋のどきどきを知って、幼なじみと結ばれる王道ハッピーエンド!」


 薄暗い部屋の中、窓際にあるノートパソコンの前で机をどんどん叩く。薄いピンクのよれた部屋着。長い黒髪はぼさぼさとなっており、さらに手でかき乱すことでボリュームが増していった。

 部屋の中にはもちろん彼女1人。カーテンは閉じられ、不気味にパソコンの画面が彼女を照らす。


「神のお導きがこの物語を完結させよと言う……。私はその使命を全うすべく、神の声を残すのだ!」


 笑い声がこだまし、彼女はキーボードを叩く。

 壁に掛けられた赤色スカーフの紺色の制服はどこか悲しそうに彼女を見つめる。






こんにちは

今回のお話、タイトルがインパクトありますね…。

自分で言うのもあれですが(^-^;


今回は『リアルが欠けた(彼女の)世界』。


今までと変えてちょっとコミカルでした。

書いていて楽しかったですけど、

ちょっと生意気だったので腹が立ちましたが…。


では、また次回お会いしましょう。

あきざくらくう

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