節約
日は落ちた。
光の射す時間が終わり、街には灯りがともる。1人の少女はその様子を楽しげに見ていた。
オレンジ色がかった、暖かみを感じる灯りが少女の瞳にも写る。少女はまばたき、街の様子に目を配る。
やがて、光はあたり一面を包むほどになり、空に浮かぶ自然の光は埋もれてしまう。少女にはそれが少しだけ許せなかった。
「いつから空の光を無視するようになったのかしら」
少女は誰に尋ねるでもなく、呟いた。
「節約、節約……」
少女は唱えながら遠くにある光を手のひらの上にのせた。ゆっくりとその手は握られ、光は少女の手の中に吸い込まれる。
街から光が一つ消えた。
次の日も、その次の日も、少女は唱えながら光を消していく。空には光が戻りつつあった。少女はそれを見て笑顔になるのだ。
「綺麗、綺麗……」
1人で笑いながら少女は街を見下ろす。後ろに近づく影には気がつかずに。
「もっと、空の光を綺麗にしてあげる」
少女が振り向くと、目の前に手のひらが広げられていた。少女が聴いたのは、少年のくすくすとした笑い声だった。
また、街から光が一つ消えた。
「節約、節約……」
街を見下ろす、少女がもといた場所で、1人の少年は呟きながら、手をかざしていた。
お久しぶりとなります。
長らく更新できずにすいませんでした。
今回は
『互いの想い』が欠けた世界でしょうか。
自然への想い、また、人への想い。
捉え方はそれぞれで構いません。
それでは、また。
2016/1 秋桜空