てんぷれ?
歩くこと、20分。水紫達の目の前には大きな街が広がっていた。
あれー、アートが言ってたことと違うぞ〜
「う〜ん、着いた。アスフィ王国?町じゃないのか」
「アート?町って言ってなかった?」
俺と奏瀬は同時にアートを見た。
言ってたことと違うな、と
「ごめん、ここって何千年前は、町だったからさ、ついね」
「ぷっ、何千年前って、アートは何者なの?」
「古代詠唱の錬金術を創った賢人様だよ」
「えっ?そんなに凄い人だったの!?ただの女の子かと思ってた」
アートは奏瀬の方にもジトっと、視線をぶつけた。
「ふんっ」
「わわ、ごめん、ごめん。わざとじゃないよ」
拗ねたアートはかなり可愛らしかった。
やばい、頭撫でたいな
「では、この世界に来てからの初めての国、行きますか」
「じゃあ、水紫くん、せーので行こう?」
「「「じゃ、せーの!」」」
…………………………
さて…初めての街だが、俺たちは妙な視線を浴び続けた。原因は…
「…お前らさぁ…少しは俺から離れろよ…」
「やーだー」
「遠慮しないで?水紫くん」
水紫の腕に絡みつく、アートと奏瀬が原因だった。
「でもなぁ」
周りの視線がキツい。これが勝者と言うやつか。
考えていると唐突に、アートが指を指した。
「水紫、あれがギルドじゃない?」
水紫ははっとして、前方を見た。
アートが指した建物には、如何にも強そうな輩が出入りしていた。
「お、あそこか」
水紫はそのままアートと奏瀬を置いていく勢いで歩いた。2人は急に速度を上げた水紫に驚き、反応出来ずに転んでしまった。後ろからは何か叫び声が聞こえたような気がするが、気にせず歩いた。
「お邪魔しまーす」
ギルドの中は、アルコールの匂いと煙の匂いで一瞬クラっと来てしまった。
改めて周りを見てみると屈強な男達が…(あ、華奢な女の子もいるな)わいわいと酒を呑んでいた。
奥には受付らしき女性が座っていた。だが、普通の人間とは何かが違かった。
そう、頭には獣の耳が付いていたからだ。
水紫はそこまで進み、一声かけた。
「すみませーん」
「はい、いらっしゃいませ。冒険者ギルドへようこそ。私、受付員の一人、ミーシャと申します」
「よろしくです。冒険者になりたいんでギルドへの登録いいか?」
「いいですよ、では、この台に手を置いてください」
言う通りにした。瞬間、微量な魔力が吸い取られるような感じがした。そこから流れるように、台の上に幾何学模様が描かれた。その模様は複雑な形になり、光った。
「あ、この光は魔力が流れている証拠です。この模様もです」
「へー、そうなんですか。凝った作りですね」
「そうですね、私も初めて見たときは驚きました。おっと!」
そうこうしているうちに、台の上の幾何学模様が消えた。
多分、登録が終えたのだろう。
「はい、完了です。えっと、ミアさんですね」
「あっはい」
「ランクFからです。では、これから頑張ってください」
「ありがとう。それと聞きたいことが、ミーシャのその耳と尻尾は本物か?」
すると、ミーシャは耳をピコピコと動かし、頷いた。
「はい、私は獣人族ですよ。ミアさんにはお気に召さなかったでしょうか…?」
ミーシャさんは、軽く俯いた。その様子を見ていた水紫は、すぐに続く言葉を言った。
「違うから。獣人族は初めて見たから、驚いただけだ。けど、別に変だとは思ってないよ。寧ろ、ミーシャの仕草はとても可愛いよ」
すると、ぱぁっと、顔を明るくしているミーシャがいた。やっぱり可愛い。
突然、ミーシャは耳をピコっと動かした。
「ん?誰の声でしょうか」
「ん、どうしたんだ?」
「あの水紫さんを呼ぶ声が後ろから」
後ろ?と振り返るとそこには、
「「はぁはぁ!やっと追いついた!」」
と、肩を揺らし、息を切らしている2人が見えた。アートと奏瀬だ。
「おー、やっと追いついたか。それにしても、息合ってきたなお前ら」
「「それほどでも〜…ってそうじゃない!置いてくなんて酷い!挙句に女と話してるなんて、水紫は節操がない!!」」
「…は、今のは聞き捨てならない。お前らも同じようなもんだろ」
「「でも、置いてくなんて!」」
「あ..は..は、ごめんよ、2人とも」
うーん…少し悪いことしてしまったかな。
「あの、どういう状況ですか?」
「あぁ〜、この2人も同様登録をしてくれないか?」
「へ?あっ、はい、分かりました、では、お2人ともどうぞ、こちらへ来てこの台へ手をお乗せください」
2人とも、水紫と同様に手を置き、無事に冒険者となった。
「では、早速ですけど、クエストをやりますか?」
「あぁ、だけど、今日はいいかな。腹も減ったし、疲れたから少し休む空間が欲しい」
「えっと、それでしたら、ギルドを出て、右側の方へ進みますと宿がありますのでそこでお休みになられたら如何でしょう?」
「ん、丁寧にありがとな。そこで休むことにするよ。じゃな」
俺は、ミーシャに手を振った。
「はい、また明日です」
すると、ミーシャも笑顔で小さく手を振っていた。
水紫はくるりと回って、出口の方へ向かった。
だが、途中で大きな影が掛かった。水紫の目の前には、大きな男が立っていた。絵に書いたようなテンプレ感。
「おい、小僧」
「えーと、俺のことでしょうか?」
唐突にしんっと、ギルド内は静まり返った。
「そうだ、他に誰がいる?」
「何の様だ?」
「てめぇ、ガキの癖に色々と生意気だな」
…うーん、ここまで、テンプレかな。
「嫌味を言いに来ただけなら、どいてくれないか?邪魔なんだよ。おっさん」
その一言で、ギルド内はざわざわとし始めた。
「あのガキ死んだな」
「あぁ、短い人生お疲れさん」
「そいつに口答えとか、終わりだな」
と、次々と水紫に対する独り言が増えていく。その内容は、どれも、水紫が死ぬ前提だった。
「なんだ、テメーら。そんなに俺が気に食わないかよ」
「あぁ、お前の連れてる女共を渡してくれたら、俺の怒りも無くなるだろうな。どうする?」
「あ、あの」
どこからか、声が聞こえた。水紫はぐるりと首を動かしてみると、口を開けて、何かを言いたそうにしているミーシャがいた。
「水紫さん、その方の言う通りにした方が良いですよ…その方が…安全ですよ」
はぁ…
「なに?俺が弱そうだから話しかけてきたのか?おっさん。どうせ、話しかけてきた理由もこいつらを俺から奪いたくなっただけだろ?」
「はっ、そうだが」
「ふぅん、じゃ、この世界に来てから初めての対人戦だな」
と言い、水紫は右手に短剣を握り、左手は指を広げた。
「後悔するなよ、ガキが」
と、男は背中に差してあった大剣を取り出した。
「無理だよ、水紫…」
「え?」
「あんなのに、当たったら死んじゃうよ…私達のことは諦めて、水紫は逃げて」
「おいおい、小僧。お前の女は、この状況が見えているらしいぞぉ?」
「黙れ、アート。一瞬であいつを片付けるから、見といてくれな?あ、奏瀬もミーシャもな」
「おい、話は終わったか?」
「あぁ」
と言い、短剣を構えた。そして、ズボンのポケットに左手を突っ込んだ。
…確かあったはずだ…頼むよ
不意に中でガサッと音がした。
(あった、あった。良かった)
ポケットの中からは黒く、中央に赤文字が描かれた禍々しい1枚のお札が現れた。それを左手で摘み、叫んだ。
「いつでも来いよ、おっさん!」
タイトルが、
思い浮かびません。
▂▅▇█▓▒ (’ω’) ▒▓█▇▅▂