覚醒した話
side少年
僕は丘の上でとても不思議な光景を見ていた。
お伽噺に出てきそうな化け物とドレスを着た女の子が戦っている。
女の子の持っている斧から紫色の電気が流れている。
魔法、なのかな?
でも見たところ女の子の方が劣勢みたいだ。化け物に対して女の子の攻撃が効いてない!
女の子は斧ごとぶん殴られてこっちに吹っ飛んできた。僕は地面に根を張るように両足に力を込めて女の子を受け止めた。あの人に教わった方法だけど上手くいったみたいだ。
「くっう。」
苦しげな声をあげて女の子はふらふらと立ち上がる。僕を一瞥するととても驚いた顔をした。
「あなた・・・どうやってここに?」
「えっと、普通に登ってきたけど。」
゛マスター!今はこの少年を気にしている場合じゃないぞ!゛
「はっ!くぅぅ!」
何処からか聞こえてきた声に反応して女の子は化け物に向き直る。すると大きな土の塊が飛んできていた。
女の子は右手から紫色の壁みたいなのを出すとそれを受け止める。バチバチという音と閃光が走った。
゛マスター、一旦退くぞ。゛
「でも、このままじゃ、あの町が!」
゛悔しいが今は諦めろ!その尽きかけの魔力で何が救える?!もっと状況を見ろ!゛
「っ!」
女の子は目に涙を溜めていた。その姿を見た瞬間、僕の心臓が高鳴った。
「っ。」
ドクン、ドクン
体に熱が籠っていく。脳裏にあの夢の光景が映った。
『あの子達を救ってくれ。』
夢の中のあの人の声が聞こえてくる。
僕は無意識に両手をだらんと下げて呟いていた。
「カード30【創剣・鉄ーソードメイク・アイアンー】」
両手に重みを感じる。僕はまだ現れない刀身を振り上げる。
重みが更に増した、それを振り落とす!
土塊が豆腐の様に切れた。女の子は僕を見て呟いた。
「あなたは?」
「僕は・・・新耶 秋斗。ただのちっぽけな人間さ。」