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流星博士のショートショート☆

流星博士と満腹サプリ

 ある日、ひとりの太った男が流星博士の研究室をたずねてきた。風のうわさに、博士がすごいものを発明したと聞いたからである。

 それは、たった一粒で満腹になるというサプリメントだという。

 それがあれば、きっと自分の悩みも解決すると思ったのだ。


 男は見るからに肥満体だった。車を降りて研究室の玄関先まで歩くだけでもひいふう言っている。

 そこまで太ってしまったのも、食べすぎが原因なのはわかっている。しかし、食事量を減らせといわれても、なかなかそれができない。

 そのサプリメントがあれば、お腹が鳴るのを我慢することなく食事制限ができるというものだ。

 希望に満ち溢れた目と、脂肪に満ち溢れた体で、男は扉を叩いた。


「すいません、流星博士はおられますか」

「なんじゃ?わしがまさに流星博士じゃが」

「こちらですばらしいものを開発したと伺いまして。一粒で満腹になるという・・・」

「おお、そのことか。確かにここにそのサプリメントを作る機械はあるぞい」


 男は目を輝かせ、汗ばんだ両手で博士の手を掴んだ。


「あの、ぜひそれを作っていただきたいんです!」


 博士は少し迷惑そうに手を見つめながら、「わかったわかった」と言って男を中に招き入れる。

 招かれた部屋には、大きな機械が設置されていた。一見ただの四角い箱のようだが、上には何かを入れるような大きなすり鉢状の穴があり、下にはおそらく錠剤が出てくるだろう小さな穴と受け皿がある。

 ハンカチで手をぬぐいながら博士は説明を始めた。


「これが、満腹サプリ製造機じゃ」

「はあ、どのように使うんでしょうか」


 上の大きな穴を指して、博士は言う。


「ここから食材を投入すれば、その受け皿に出てくる仕掛けになっておる」


 ふむふむと男は話を聞いた後、こう質問をした。


「それで、どのような食材を?」

「そりゃおぬしが好きな食材を、いつも食べておる量ほど入れればよいのじゃ」


 そう聞いて、男は眉をひそめた。


「いつもの量?それで・・・その分の栄養はどうなるんで?」


 そこがこの研究の核心であると言わんばかりに、博士は得意げな笑みを浮かべた。


「食材が小さな錠剤に凝縮されるだけで、栄養価もカロリーも一切変わることはないんじゃ。つまりまあ、腹いっぱい食べたのと全く同じ効果があるわけじゃな」


 男は考えた。つまりそれは、たくさん食べているのとなんら変わりがないということだ。錠剤一粒で、いつも食べている分食べたことになってしまうなんて。


「それではなんの意味もない!」


 さっきの低姿勢とは打って変わって、男は憤慨の声をあげる。

 同じ太るならまだ、ちゃんと美味しいものを味わって食べたほうがよほどマシだ。


「なんと役に立たない研究なんだ!私は帰る!」


 男はどすどすと足音を立てて勝手に帰っていってしまった。

 流星博士は、なんのことやら、と首をかしげて見送った。



 ちなみにその発明は、忙しくて食事をとる暇もないサラリーマンの間で好評だという。

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― 新着の感想 ―
[一言]  はじめまして。 この博士の研究についてですが 少しの量で満腹感を感じさせるようにそして副作用なく、満腹中枢を刺激する薬だと思いますよね。 栄養価など全く変わらないのでは意味無いでしょ…
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