くじら
昼過ぎのぼーっとなる時間には、
くじらがあたまの中に入ってくる
わたしはそれをやさしく見守るのだけど、
くじらはといえば、
ばたばたあばれて
わたしの思考を
かきみだす
だから
カーテンを閉めて
おふとんをぎゅっとするの
たったこれだけが
気持ち良すぎて
泣けてくる、泣けてくる
泣いた後には
散歩しましょう
小さな山を抜けていく、
さびしく光る木々に覆われた夕方の小道を
考えてみればずいぶん久しぶりで
その木々の間からは遥か彼方の山々が
かすかに、かそけく、のぞいてて、
道の先には雲の群なす地平線が見えた
いくつも、いくつもの地平線
そしてやがて帰路につく
ついてしまう
それで夕食
なのだけど
こんな景色の通過後には
何を食べればいいのだろう、
これ以上、いや、だがやはり
食べられるのだ
吐き気がする
夜になる
夜になる
くじらはもういない