妹からのバレンタイン
「お兄ちゃんなんか最低! 消えちゃえ」
よりにもよってこの日に、俺は妹とケンカした。
いつもの口論が、度を越した。言い過ぎたと思ったときには、もう遅かった。
俺は家を飛び出した。
携帯をタツノリに繋ぐ。
「およ? どうした」
飄々(ひょうひょう)とした声が返ってくる。
「今からお前んち行ってもいいか」
「いいけどよ。家にいないとアレ、貰えなくね?」
余計な心配をしてくれる。
歩いて数分のタツノリの家に上がりこむと、俺はため息とともに打ち明けた。
「・・・・・・ケンカしたんだよ」
「どうして」
「くだらねーこと。いつも言い過ぎちまうんだよな」
「チョコ食うか?」
タツノリは学校で貰ったらしい、いくつかの包みを指差した。
「いいよ、それはお前のだし」
「帰ったら仲直りしろよ。今まではいつも作ってくれたんだろ?」
「ああ・・・・・・近いところにいるとケンカばかりだけどな」
俺はぽつりと呟いた。
「俺がいないほうが、あいつも気楽かもしれない」
「バカ言え」
タツノリが怒る。
二人でゲームをしていたら、夜になった。
「帰るか・・・・・・」
「おう、また明日な」
そうして俺は家に戻ってきた。しかし、妹と顔を合わせる勇気がない。
恐る恐るリビングルームに入る。机の上にネコのキャラクターがプリントされた包みがひとつ置いてあった。
包みの横にはメッセージカード。
消えちゃえは言いすぎたよ。ごめんね、アホお兄ちゃん。
俺は苦笑した。
明日の朝には俺も謝ろう。チョコの礼も言うことにしよう。
包みを開くと、手製のチョコタルトが入っていた。
タルトの生地にはコーヒーが使われているらしく、分量を間違ったのか、とても苦かった。
家族チョコ、友チョコ・・・・・・日本のバレンタインデーはチョコレート業界の陰謀のようなものとはいえ、身近な人に普段言えないことを伝えるいい機会でもあります。
私はスイスのリンツという会社のホワイトチョコで毎年手製チョコタルトを作ります。
見てくれが良いものになった試しはありませんが(笑)
チョコの質が良いので、味はOKのようです。