第1話『スタート』
この世界の実力は、明確な『階級』によって格付けされている。
最低階級のD級から始まり、C級、B級、A級、そして、国家英雄級レベルとされるS級。
人々は少しでも上の階級を目指して己の『魔法』や『能力』を磨き、その価値を世界に証明する。
自分の価値を証明できない者は留年どころか猶予すらなく学院から追放される。
それが、ここ『ルミナス王立学院』の絶対のルールである。
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「おい!遅れるぞアイン!初日から遅刻したらやばいぞ!」
前を走る男が、焦ったようにこちらを振り返りそんなことを言う。
彼の名前は「レオ・ヴォルフガルト」
ツンツンとはねた黒髪に、どこか猛々しさを秘めた琥珀色の瞳。
今はまだ、魔法すらおぼつかない、この学院の最底辺———いわゆる「D級未満」の落ちこぼれだ。
「そんなに急がなくても、始業の鐘が鳴るまで五分くらいはあるよ」
「ばかやろう!その五分が命取りなんだよ!アインは何でそんなに落ち着いてられるんだよ....!」
レオは俺の腕を引っ張るようにして、校門へと続く長い坂道を駆け上がっていく。
そういえば僕の名前を紹介してなかったね。
僕の名前は『アイン』
なんだい?名前が短すぎやしないかって?
仕方ないだろう。
僕にはもともと名前が無かったんだ。
だから苗字である下の名前が僕にはないんだよ。
まぁそういうこと。
今現在僕の腕を引っ張っているレオは昔からの付き合いのようなもので、レオと同じく僕も大した才能は無い。
使えるのは初歩的な風魔法が少しだけ。
要するに、レオと同じくしがないD級生徒だ。
「はぁ...はぁ...! 滑り込みセーフ...なのか..?」
学院の入り口である大理石でできた巨大な門を潜り抜けた瞬間、予鈴を知らせる鐘が響き渡った。
レオはその場に膝をつき、激しく肩を上下させている。
僕はその隣で、息を整えながら小さく苦笑した。
「ほらね、間に合ったじゃないか。レオ。」
「アイン...お前体力ありすぎだろ....。 いや、俺が体力なさすぎるだけなのか?」
レオは少しだけ悔しそうに拳を握りしめる。
この学院は、能力至上主義だ。
入学時点で『能力』を持つものはB級やA級の上位クラスに振り分けられ、魔法しか使えない者や、それすら怪しいレオのような者は、C級やD級などに振り分けられ世間からも明確に見下されていた。
「おうおう、初日から見苦しい姿をしているなぁ。レオ。」
そんな不躾な声が僕たちの頭上から降ってきた。
振り返ると、美しい金髪をきっちりと整えた男が、数人の取り巻きを連れて歩いてきていた。
彼の胸元には、特進クラスを示す銀色のバッジが光っている。
僕たちを見てあざ笑う彼の名は、カイル・フォン・ゼンバーグ
「カイル...」
レオが低く、彼の名を呼んだ。
カイルは名門貴族の生まれであり、生まれながらに【物質の硬度を自在に変える】という、異例の「A級認定」を受けた天才。
それに加え中等時代にレオをいじめていた張本人でもある。
「無能力者の分際で、このルミナスの門をくぐれただけでも奇跡と思うんだな。お前らのような出来損ないが、視界に入るだけでも不愉快なんだよ。」
カイルが冷酷な視線をレオに向ける。
その周囲の取り巻きたちがクスクスと、あざ笑うように声を立てた。
レオは唇を噛みしめ、拳を強く握りしめる。
そのとき、レオの瞳の奥が一瞬だけ、奇妙なほど深く潤った気がした。
「おいお前、聞いてんのか——」
カイルがさらに声を重ねようとした時、僕は二人の間にそっと割って入った。
「それ以上はやめた方がいいんじゃない?」
「あぁ..?んだてめぇ。」
「僕の名前はアイン。レオの親友さ」
「お前みたいな雑魚が俺に口答え——」
カイルが言葉を言い終わる前に、僕は言葉を重ねる
「あまりここで騒ぎを起こすと、君にとってもあまりよくないんじゃないかな?」
「なんだと...」
「時計台から、学院の教師が見ているみたいだよ。初日から教師に目を付けられるのは、あまり得策じゃないだろう?」
僕はさりげなく、学園の中央にそびえたつ時計台の頂上を指さした。
カイルは一瞬眉をひそめ、時計台をみると、忌々しそうに舌を打った。
「フン。出来損ない相手に時間を無駄にした。 行くぞ」
カイルたちは背を向け、大股で校舎へと歩き去っていった。
「ありがとう。アイン。...でも、よくあんな遠くに教師がいるなんて気づいたな。」
レオが不思議そうに僕を見る。
「たまたまさ。ほら、僕の風魔法って遠くの音を拾うのだけは得意だからさ」
そんなウソをつく。本当は音なんて拾っていないし、風魔法も使っていない。ただ『見えた』。たったそれだけのこと。
けれど、大した才能のない僕の言葉として、それが一番自然だった。
「..俺も...早く強くなりたいな...」
立ち上がり校舎へ歩くレオが、そんなことをぽつりとつぶやいた。
「魔法すら満足に使えない俺が、いつかあいつらを見返して、ぎゃふんと言わせることが出来るような力が欲しい...。」
「焦らなくてもいい。レオ、君の力はこれからいくらでも伸びるさ。」
「慰めはいらねーよ」
「慰めなんかじゃないさ。これは僕の勘だよ。 そう、きっときみはいつか——」
「..?なにかいった?アイン」
「んーん。何も言ってないよ。さあ早く行こうか!」
そういってレオの背中を押した。
レオは照れくさそうに笑い、しっかり前を向いて歩き直す。
その背中を見ながら、自分の手のひらをそっと見つめた。
入学式前に当たって必要事項の確認が終わり早くも放課後。
僕とレオは、広大な学院の敷地を散策していた。
ルミナス王立学院は、古代の神殿の上に建てられていると言われており、敷地内には古代から存在する建物がいくつも残っている。
二人の足が、自然と校舎の裏手にある古びた礼拝堂の前で止まる。
周囲には全く人気がなく、ただ古い石造りの建物が鬱蒼とした森に囲まれ佇んでいた。
「なぁ、アイン。」
「?」
レオが突然、僕の名前を呼び、建物の地下へと続く、錆びついた鉄格子を見つめたままこんなことを言う。
「いや...なんか。変なんだ。 なんていうんだろうな。違和感がある。 誰もいないはずなのに、この奥で、地下で、誰かが俺のことを呼んでいる気がするんだ。 すごく胸が熱くなるっていうか..」
レオの表情は真剣そのものだった。
鉄格子の先は、薄暗い階段が地下へと続いている。
立ち入り禁止の看板が立てられており、一般生徒が入ることを許されていない場所だ。
「...気のせいじゃないか?」
僕はあえて軽いトーンでいった。
「古い建物だから、変な魔力でも残ってるんじゃないかな。 それよりもさ!この学院だけでしか食べられない、めっちゃおいしいパンがあるらしいんだよ!売り切れちゃう前に行こう。」
「あ、おい!待てよアイン! ....確かに俺も腹減ってきたな...」
レオはもう一度だけ、地下への階段を見つめてから振り返り、それから僕の後を追って走り出した。
夕日に照らされる二人の影。
地下の奥深く。
誰も知らない冷たい暗闇の中で、何かが静かに呼吸を変えた気がした。
だが、それがいったい何なのかを知る者は、まだこの学院には誰もいない。
あぁーーどうも皆さん初めまして
今回初めての作品ということで、素人ながら書いてみました。
自分はあまり言葉の引き出しが無い方でして....
あまり上手に書けないと思うのですが生ぬるい目で見守っていただけると幸いです!
今回の話ですね....
大分見下されてますよねぇレオ君
まだまだ始まったばっかりなのでこれから成長していってほしいものですね!




