襲撃
三人は再びイル・チエーロに戻ってきた。
涼風荘で火の手が上がっていた。
「おい、ジャン! 火が上がってるぞ!」
「何者かが、襲撃してきたのだ! カズマ、天音! 急いで戻るぞ!」
三人は急いで、拠点に向かった。
「くっ……」
「ホッホッホ、満身創痍と言ったところですかねえ」
「フン、ぶざまな奴だ」
「窮鼠猫を嚙むという言葉もある。油断するな」
ヴィルヘルミーネは一人でルキウス、マルクス、セクストゥスの三人の相手をしていた。
服はボロボロである。
今ここにはほとんど戦える退魔師はいない。
ほとんどが外に出てしまった。
ヴィルヘルミーネはジャンたちが帰ってくるまで時間稼ぎをするつもりだった。
この三人はいずれも強敵だ。
人間の姿をした妖魔だ。
この妖魔たちはイル・チエーロを攻撃しに来たのだ。
「させません!」
ヴィルヘルミーネがワイヤーを叩きつける。
三人はそれをジャンプで回避する。
ぼろぼろのヴィルヘルミーネでは攻撃はあっさりと回避されざるを得ない。
ヴィルヘルミーネはワイヤーで薙ぎ払う。
三人はいずれも武器でそれをガードした。
ヴィルヘルミーネはワイヤーに雷をまとわせる。
ヴィルヘルミーネの使える属性は雷だ。
ヴィルヘルミーネは雷のワイヤーで妖魔の三人に叩きつける。
「ドナー・パイチェ!」
「ほう……」
「やる!」
「こんな技を隠し持っていたとはな」
ヴィルヘルミーネの雷のワイヤーはまるで鞭のように伸縮自在だった。
ヴィルヘルミーネはワイヤーを放電させて、武器によるガードを無効化する。
さすがの三人も、これには回避しかやり過ごす方法はなかった。
「これ以上好きにはやらせません!」
ヴィルヘルミーネの意思はすさまじかった。
彼女は一人で三人の妖魔を足止めしているのだ。
もっとも、これは彼女があくまで守りに徹していたからである。
ジャンたちが帰ってくるまで時間を稼ぐ。
それがヴィルヘルミーネの狙いだった。
敵を倒す必要はないのだ。
あくまで足止めできればそれでいい。
「さて、どうしたものですかね……」
ルキウスが逡巡する。
「俺にやらせろ」
「マルクス?」
「いいだろう、やってみろ」
マルクスが前に出た。
「何を考えているかはわかりませんが、この私を突破しようとは思わないことですね! ブリッツ・シュランゲ!」
ヴィルヘルミーネはワイヤーを一本にまとめた。
それは膨大な雷電をまとい、一匹の蛇と化す。
雷電の蛇がマルクスに向かった。
絶対的な状況だった。
「ブルーナ・グラーヴォ!」
マルクスは茶色い斬撃を出した。
これがヴィルヘルミーネの蛇を斬り裂いた。
「なっ!? 私の攻撃が!?」
「フン、所詮はこの程度だ。女、質問の時間だ。ジャン・カルヴィヌスはどこにいる?」
「……」
「答えないつもりか?」
「ジャンは今、ここにはいません」
「では、どこに行った?」
「それは言えません」
「ほう……それなら体に聞くしかないな?」
「無駄ですよ? 脅迫には屈しません」
「ヴィルヘルミーネ!」
「!? ジャン!?」
「無事か!」
「ヴィルヘルミーネ! 大丈夫!?」
そこにジャンらが到着した。
ジャンたちの前には三人の人型妖魔がいた。
「こいつら、いったい何者だ!?」
カズマは混乱した。
まさかこんな襲撃を受けることになるとは思わなかったのだ。
「ホッホッホ、我らはあるお方の配下です。イル・チエーロは目障りなので、ここいらでつぶれてもらいましょう」
「フン、少しは楽しめそうだな」
「おまえたち、油断するなよ?」
ルキウス、マルクス、セクストゥスが順に答える。
「私はルキウスと申します」
「俺はマルクスだ」
「我はセクストゥスという」
「……カズマ、おまえはルキウスを叩け。天音はセクストゥスと戦え。私はマルクスをやる」
「わかった!」
「はい!」
「ホッホッホ、あなたが期待の新人ですか?」
「俺はカズマだ!」
「ホッホッホ、威勢はいいようですね。ですが、わたくしについてこれますか?」
ルキウスが一気に間合いを詰めてきた。
ルキウスの武器は刀だ。
それも赤い刀だ。
カズマはそれに反応した。
カキーンと武器と武器が交差する。
「無駄だぜ! おまえの動きは見切っている!」
「……なるほど、この程度では倒せない、というのが分かりました。それでは私の力の一端をお見せしましょう。フラーモ・グラーヴォ!」
ルキウスが炎の刀を出した。
炎は赤々と燃え上がり、カズマに迫る。
ルキウスが炎の斬撃を繰り出す。
カズマは霊気を放出してそれに対抗する。
以下に炎とはいえ、それは妖気が変化したもの。
霊気と妖気は相反する。
ルキウスの炎は霊気で相殺可能なのである。
カズマはこんな知識を霊学で学んでいた。
「やりますねえ! これでもくらいなさい! フラーモ・オンド!」
炎の波がカズマに迫る。
カズマは霊気を並と化して放出し、対抗した。
「霊光波!」
霊気の光がフラーモ・オンドとぶつかる。
二つの技は互角だった。
「なんと!? このわたくしの技を防いだ!? なら、これはどうですか? エクスプロード!」
炎が爆ぜた。
カズマはそれをくらってしまう。
「くはっ!?」
カズマはかろうじて受け身を取った。
「ホッホッホ! まだまだこれからですよ! エクスプロード!」
炎が爆発した。
カズマは吹き飛ばされる。
「くう……」
カズマは霊気で全身を防御していた。
それゆえに持ちこたえられたのだ。
そうしていなかったら、カズマは一撃でやれれてしまっただろう。
あの攻撃は厄介だ。
どこから爆発するか、わからない。
「ホッホッホ、これまでですよ! さあ、死になさい! エクスプロード!」
カズマは思いっきり前に出た。
それによって爆発圏内からカズマはかわすことができた。
「なっ!?」
「くらえ! ライジング・フェニックス!」
カズマが上昇する光のフェニックスを放った。
光の炎がルキウスを焼く。
「ぐああああああああああ!?」
カズマはルキウスに刀を突きつけた。
「がっ!? まさか……この私が……こんな子供に……」
ルキウスは倒れた。




