表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/29

人質

「見事だったぞ、カズマ」

「あ、ああ。ぶっつけ本番だったが、何とかできた」

カズマは放心した。

さすがに、霊気を乗せてドクローマの頭を砕くというのは、賭けに近かった。

「ところで、人質はどこに消えたんだろう?」

「そうだな。奴らは意図的に人質をどこか別の場所にうつした。何か理由があったのだろうが……」

『クワーッカッカッカッカ!』

「これは!?」

「校内放送か!」

『俺たちは今、体育館にいる! 人質は丁重に扱っているとも! 先生も無事だ! だが、ここには爆弾を仕掛けた! もし俺たちに不用意に近づいてくるなら、これを爆破させる! いいか、手っ取り早く現金を用意するんだ! でなければ、人質を一人ずつ、殺していくぜ? これははったりじゃねえ! 本気だ!』

こうして校内放送は終わった。

カズマは押し黙った。

これはまずい展開だ。

子供たちは一層危険な状況に置かれたというべきだろう。

カズマにはこれを打開する方法はない。

カズマはジャンを見た。

ジャンは険しい表情をしていた。

「どうする、ジャン?」

「ふむ、子供たちが一か所に集められたのは、むしろ好都合だ。奴らの居場所はわかった。まずは体育館で敵の配置を確認しよう。すべてはそれからだ」



体育館には重苦しい空気が流れていた。

人質は緊張した表情をしていた。

妖魔たちは教師を管理することで、生徒全員を管理することができた。

羊の管理と同じである。

そのためには、教師を殺すわけにはいかなかった。

教師を殺害してしまっては、生徒全体をコントロールできなくなるからである。

ここまで子供たちが泣きじゃくったり、暴れたりしないのは、女性教師がいたからだ。

妖魔たちはこの女性教師を通して、間接的に生徒をコントロールしていた。

だが、それも徐々に限界に近づいていた。

子供たちがあまりの緊張とストレスに耐えられなくなったのだ。

「うわ、うわ、うわーーーーーーーん!」

その時、一人の男子生徒が泣き出した。

緊張の糸が切れたのだ。

「あああん? 何、泣いてんだこのガキ! ぶっころずぞ!」

カラステンが恫喝する。

カラステンは子供が嫌いだ。

カラステンが好むのは従順な羊である。

「ボス、始末いたしますか?」

「そうだな、一人くらい始末しても問題ないか。やれ」

コガラスが自動小銃を子供に向ける。

妖魔たちは本気で子供を殺す気だ。

「やめてください!」

「ああん? おまえ、邪魔すんのかあ?」

カラステンが不快な声を上げる。

この女、生かしてやってるからっていきがりやがって!

ぶっ殺されてえのか!

女性教師は子供の前に立ちはだかった。

まるで壁のようだ。

「この子を殺すなら、私を殺してください!」

「……」

おそらく、この女性教師には今までのやり取りで、自分が必要な存在だと認識したに違いない。

それで、このようなふざけたことを言い出したと思われる。

ちいっ、こちらの都合を理解しやがって。

厄介なアマだ。

女性教師の瞳には自信があった。

殺せるものなら殺してみろとでもいうべきか。

そこに油断が生じた。

その隙をジャンは待っていた。



ジャンとカズマは体育館に乗り込む隙をうかがっていた。

女性教師が今、妖魔たちの注目を浴びている。

これはチャンスだった。

ジャンとカズマは霊装を構えて、体育館に突入した。

「そこまでだ!」

「カカッ!?」

妖魔たちの注目がジャンに向けられる。

「何だてめえは!? おい、殺せ!」

「へい、ボス!」

カラステンが命じると、コガラスたちは自動小銃でジャンを撃った。

だが、ジャンは霊装でそれらを反射する!

ジャンは剣で銃弾をはじき飛ばしているのだ。

それにカズマは刮目する。

ジャンが強いのは知っていたが、ここまでできるとは思わなかった。

銃弾は正確に射手にはじき返され、コガラスたちはすべて無力化された。

「子供たちを解放しろ!」

「クワーッカッカッカッカッカ! ふざけるな! よくも俺様の計画を邪魔してくれたな! おまえは許せねえ! ここでぶっ殺してやるよ!」

「カズマ、おまえは人質を解放しろ! こいつの相手は私がする!」

「わかった!」

カズマは子供たちを助けるために女性教師のもとにやって来た。

「俺たちはあなたがたを助けに来ました! さあ、こっから脱出してください!」

「ありがとうございます! さあ、みんな! ここから出るわよ!」

女性教師に率いられて、子供たちは体育館を後にした。

「ちいっ! ガキどもを逃しちまったか!」

「おまえも降伏しろ」

「バカなことを言うんじゃねえ! てめえだけでもぶっ殺してやるぜ! ヴェント・トランチーロ!」

カラステンが両手のナイフをジャンに向けて投擲してきた。

ジャンはそれを霊装ではじく。

ヴェント・トランチーロは風のナイフだ。

その切れ味はかなりのもの。

ジャンはそれに反応して、的確にはじいている。

カラステンのナイフはジャンに当たらない。

ジャンはそのすべてをはじき飛ばす。

「クワー! 気にくわねえ奴だぜ! ヴェント・シュトゥルモ!」

風の竜巻がジャンに襲いかかる。

ジャンはそれを一刀のもとに斬り伏せた。

「ニグラ・プルーモ!」

カラステンが黒い羽をジャンに送ってきた。

おそらくこの攻撃には目つぶし要素がある。

ジャンはそれを光の柱を上げて迎撃した。

「死にやがれ! マルルーマ・オンブロ!」

カラステンから影が伸びて、人の形をしてジャンに斬りかかる。

これがカラステンの最強技だった。

ジャンは霊装を輝かせると、そのまま影を一撃で屠った。

「バ、バカな……」

カラステンが呆然自失する。

その隙にジャンがカラステンに接近し、殺さないように斬りつける。

「がっ!?」

カラステンが倒れた。

かくして妖魔による人質事件は解決した。



「ありがとうございます。おかげで事件を解決できました」

警官がジャンにあいさつする。

「我々は自分たちの仕事をしただけです。事件が解決されてよかった」

そこに子供たちがやって来た。

カズマはジャンにお礼を言いに来たのかと思った。

「お兄ちゃん、助けてくれてありがとう!」

「お、俺?」

カズマは驚いた。

自分に感謝されるとは思わなかったからだ。

「退魔師のお兄さん、あなたが助けてくれたおかげで、私たちは無事です。ありがとう」

「いや、そんな……」

カズマは照れた。

こんなことを言われても恥ずかしいだけだ。

「はっはっは! そうだぞ、カズマ。おまえはよくやった! 今日はほめられておけ!」

こうして事件は解決し、カズマはまた一歩、成長したのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ