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小学校

カズマとジャンは小学校に急いだ。

車を駐車場に停める。

もうすでに警察が周囲を取り巻いていた。

教師や生徒は大半が学校から避難していた。

これらの人々にもメンタルケアが必要だろう。

だが、今は妖魔が居座っている教室を解放することだ。

ジャンとカズマは車から降りた。

「関係者だ。通してもらおう」

ジャンが警官に告げる。

警官は退魔師が来たことを悟って二人を通す。

「いったい何が起きているんだ?」

「一つの教室が妖魔に占拠された。私たちの役目はそれを解放することだ。ただ、今回は一つのクラスが丸まると人質にされている。妖魔を倒せばいいわけではない。それが今回のミッションの難しいところだ」

「どうするつもりだ?」

カズマは聞かざるをえなかった。

こんな状態で何ができるというのだろう?

犯人の妖魔は何を求めているのか?

「まずは情報を集めねばな」

「情報って言っても誰に聞くんだ?」

「まあ見ていろ。すいません、今の状況を教えていただけますか?」

ジャンは一人の警官に尋ねた。

「今、二年一組がカラス型の妖魔に占拠されています。このクラスは人質らしいです。妖魔は現金を要求しています」

「なるほど、それでは今は待機中なのですね?」

「できれば、妖魔を倒したいのですが……我々で歯が立ちません」

「わかりました。それでは……」

『おい! いったいいつになったらカネを持ってくるんだ! いい加減にしろ! 子供を殺されたいのか! カーカカカカカカカ!』

妖魔の声が響き渡る。

「さすがにこれ以上の引き延ばしは無理か……我々が校舎に侵入します。よし、行くぞ、カズマ」

「行くって、どうするつもりだよ?」

カズマは疑問を尋ねた。

こういったところはカズマのいいところだった。

「私たちで教室を急襲する。そして妖魔と戦うのだ。カラス型の妖魔はおまえに任せる。私は人質を助ける。これで行くぞ?」

「わかったよ」

二人は霊装を出した。

この学校は東側が丘になっている。

そこから二人は侵入した。

「おまえたち、何者……があっ!?」

「敵だ! ぐひゃっ!?」

ジャンはコガラス妖魔をあっさりと斬り捨てた。

仲間を呼ばれる前に潰したのだ。

「さすがジャンだな。鋭い剣閃だ」

「よし、先に進むぞ」

二人は校内に入った。



一方、カズマの両親は……。

「何で別れなければならないんだ」

父は開口一番こう言った。

母は父に離婚届を突き付けた。

父には青天の霹靂であった。

なぜだ?

いったいなぜ、こんなことになった?

私は何かを間違えたのか?

「あなたは言いましたよね、私を幸せにするって。それはこんなものだったんですか?」

「それにウソなついていない! 私は会社でも昇進して、より多くの給料を稼いでいる。家だって建てた。車もパソコンも持っている。いったい何が不満なんだ!?」

父は慌てた。

父が今までこれほど慌てたことはあっただろうか?

「私たちはカズマに謝罪しなければいけないんです。私たちは無神経だった。私たちはカズマに自分たちの理想を押し付けた。その結果がカズマの失踪です」

「カズマは今警察が探している。警察を信じるんだ。警察を信じていれば、かならずカズマを見つけてくれる!」

父は願望と現実を混同していた。

父は母をカズマのことで極端になったと思っていた。

「私はカズマを息子としてではなく、生徒として見ていました。できのいい生徒として……それがそもそもの間違いだったんです。カズマは必死に私たちの願望に答えた。その結果が引きこもり、そして失踪です。私たちにのもとには二度とあの子は帰ってこないでしょう。カズマはできる子です。今頃どこかで、第二の人生を始めているでしょう。あなたにとってカズマは何だったんですか?」

「カズマは私の息子だ! あいつは私と同じように働くべきだ! 働いて給料を稼いで、嫁を貰って、所帯を築くべきだ!」

母は話にならないと言いたげな顔をした。

「カズマはあなたの奴隷ではありません」

「私の息子だ! あいつも社会の荒波で生きてくべきなんだ! 社会はそんな物分かりが良くない。社会のルールに従わなかったら、どうやって生きていくって言うんだ!」

父はもはや叫ぶように言うしかなかった。

社会は不合理だ。

社会は理不尽だ。

だが、それが社会だ。

この国の社会だ。

それに逆らったら生きていけない!

父はひそかに社会を恨んでいた。

社会の要求に屈する自分をカズマに重ねていた。

社会をあっと言わせたい。

それはカズマの職業を指定したとことに現れている。

父はカズマに医者になるように強いた。

それは自分の息子が優れているということを周囲に示せる。

すぐれた息子を持った自分もまた優れている。

彼はそう感じたかったのだ。

すべては自分自身が優越感を味わうため。

カズマはそのための道具であった。

「私は自分の力で生きていきます。カズマのことはもうあきらめました」

「それは無責任じゃないのか!?」

カズマの父がどう言おうが、母は考えを変えるつもりはない。

毎日、行きたくもない会社で、好きでもない仕事をする。

上司に愛想を付き、部下を叱咤する。

そんな生活を続けることで、カズマの父は自分自身の欲求というものがマヒしていた。

客観的に見れば、彼も憐れな一人の犠牲者にすぎない。

しかし、彼はルサンチマンを持っていた。

彼は知らず知らずにカズマにもそのルサンチマンを継承させようとした。

息子と自分は同じだと思ったのだ。

だが、親と子供は別の人格である。

彼にはその考えがなかったのだ。

「私は何も悪くない! 私は親として当然のことをしたんだ! 社会人になるとはそういうことだ! 嫌なことをしてでも生きていくしかないんだ!」

これは父の悲鳴だった。

ジャンならこんなことは言わなかっただろう。

ジャンも自分自身が見本となることを意識していた。

カズマはジャンという見本を得て、生き方を変えたのである。

「それではサインをお願いします。私は出て行きますから、あとは自分の力でどうにかしてください」

カズマの母はそう言って家から出て行った。

カズマの父はのちにうつ病を発症した。

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