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カラステン

カズマは退魔師として鮮烈なデビューを果たした。

それはカズマが退魔師として生きることが可能になったということだった。

カズマにとって夢がかなったのだった。

カズマのデビューをイル・チエーロの退魔師たちが祝ってくれた。

ジャン、天音、ヴィルヘルミーネ、カトリーナなどなど。

カズマには二つの道があった。

一つは就職して働く道。

もう一つは退魔師になる道。

カズマは後者を選んだ。

それは働く道ではなく、戦う道だった。

この二つはどちらかが正しいとか、どちらかが誤っていると言ったものではない。

どちらを選んでもいい。

カズマは後者を選んだだけである。

カズマはようやく自分の人生を肯定的に生きられるようになった。

それまでのカズマの人生は否定的だった。

それが変わったのだ。

祝勝会ではカズマは初めて酒を飲んだ。

正直あまりおいしくなかったが、最初はそんなものだと言われた。

みんなが退魔師としての自分を受け入れてくれた。

それはうれしかった。

だが、これは始まりに過ぎない。

退魔師としてカズマはまだまだ新米だ。

見習い退魔師から新米退魔師に変わったにすぎない。

カズマはその日素振りをしていた。

カズマは朝から素振りを欠かさない。

実のところ天音も矢を射ることを習慣にしている。

これは最高の一撃を出すためだ。

最高の一撃を出すためには、日々素振りしなければならない。

実戦で最高の剣撃を出せるようになるためには素振りは欠かせない。

この基礎が応用を作る。

「カズマ君、おはよう。今日も素振りしているのね」

そこに天音がやって来た。

おそらく射撃の訓練をした後なのだろう。

「おはようございます、天音さん。天音さんなら俺が素振りを欠かさないこともわかるんじゃないですか?」

「そうねえ。ここで見させてもらってもいいかしら?」

「見ても面白くないと思いますよ?」

「それは見てのお楽しみということで」

「はあ……」

カズマはそのまま素振りを再開した。

一振り一振り繊細な感性で制御していく。

「カズマ君って引きこもりだったんですって?」

「え、ああ、まあ、はい」

「ジャンから聞いたわ。自宅に引きこもっていたって」

「そうですか……」

できればカズマは天音には知らないでほしかったことだ。

カズマは引きこもりだったことにコンプレックスを抱いている。

「でも、すごいじゃない。カズマ君は自分の人生を切り開いたんだから」

「そうですか?」

「そうよ。どうして引きこもっていたか聞いてもいい?」

「つまらない話ですよ。俺は両親の操り人形として生きてきたんです。だから、『燃え尽きた』んですよ」

「つまり、自分が勉強する意味が分からなくなったのね?」

「そうかもしれません。俺は自分で勉強する理由を失った。だから、俺は引きこもりになったんです」

「私はカズマ君は悪くないと思うな」

「え?」

「だって、子供って親の影響を受けるじゃない? 親の気を引こうとするもの。だから、カズマ君が引きこもったのはカズマ君の責任じゃないよ。それにカズマ君はもともとできる子じゃない? 霊学も理解できるし、実技もできてる。最近は私が貸した本を読んでるんでしょ?」

「ええ、まあ」

「私はね、人生はいつでもやり直しがきくと思うの。カズマ君もそうだと思う。まあ、偉そうなことを言ってるけど……じゃあ、私は戻るわね」

「ええ、ありがとうございます。少し、劣等感が和らぎました」

「フフフ……ならいいけど。それじゃあ、素振りをがんばって」



その日、クラスで授業が催されていた。

小学校だ。

クラスの担任は女性の教諭だ。

クラスは和気あいあいとしていた。

「クワッカッカッカッカ! 邪魔するぜ!」

「!? な、何ですか、あなたは!?」

担任教諭が悲鳴を上げる。

当然だ。

そこに現れたのは妖魔、それもカラスの妖魔だった。

「おっと、動くんじゃねえ! 抵抗するなら、このガキどもを殺す!」

「くっ!?」

「クワッカッカッカッカ! この俺の命令におまえたちは従うんだ! 命令を聞けなかったら……わかるよなあ?」

カラスの妖魔カラステン(Karasten)がナイフで威圧する。

この日、このクラスはカラステンに占拠された。



「ふう……紅茶はいいですねえ……こうまったりとした日は最高です」

ヴィルヘルミーネがPCの画面に紅茶を映す。

ヴィルヘルミーネは情報分析官だ。

PCやスマホの扱いはプロフェッショナルである。

そんな彼女だが、服装はメイド服だった。

なぜかは不明である。

彼女はまったりとした昼を過ごしていた。

今日は事件が起こる気配もない。

実に平和な日だ。

平和パーツォ万歳!

などとヴィルヘルミーネが考えていた時、彼女のスマホが鳴った。

ヴィルヘルミーネは嫌な気配を感じた。

これは事件が起きた時の感覚だ。

ヴィルヘルミーネの勘はよく当たる。

「……はい」

ヴィルヘルミーネがスマホに出た。

すると。

「はい!? 妖魔が教室を占拠した!?」

彼女の悲鳴が部屋に響いた。



カズマはジャン主導の訓練に参加していた。

これは一定以上の訓練を積んだ退魔師が集まって為される。

カズマはアキラというメガネをかけた理知的な若い退魔師とペアになった。

アキラの獲物は槍だ。

「ふっ、君が相手とはね。ぼくについてこられるかな?」

「やってみないと分からないんじゃないか?」

「フッ、結果など戦う前からわかりきっていることさ」

カズマはアキラが嫌いではなかった。

ただ、どこかライバル視されているような気がする。

「ペアを組んだか? それでは訓練を開始する!」

その時ジャンのスマホが鳴った。

「もしもし?」

ジャンがスマホに出る。

「何だと!? 学校が妖魔に占拠された? わかった! 今すぐ出る」

ジャンが訓練の中止を命ずる。

退魔師たちは騒然とした。

「カズマ、事件が発生した! 私たちは小学校に行くぞ!」

「あ、ああ!」

カズマは本格的に退魔師活動を始めた。

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