表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

聖女!魔族になる

私は小さな村に生まれた。お父さんとお母さんは農家を営んでいる普通の人達で私はそんな2人の間に生まれ明るい女の子として育った。


私が15歳の時、私の目が変化が現れた。右目が鮮やか黄緑色になり中心には五芒星が現れた。その状態になると視界に映る生物の身体情報や寿命を見ることができ望めば未来を見ることや過去を見ることも出来る。私はあまりの情報に最初は高熱を引き起こし寝込むことが多かった。慣れてくると少しの間にだけなら右目を開いても体調を崩す事は無くなったが普段は眼帯をして使わないようにしている。


ある時、村に数十人の甲冑を着けた兵士がやってきた。村の人達は不安そうに集まっており代表の村長が兵士の前に立つ。兵士の1人が村長の前に出てきて名乗る彼はガレス・モルドレッドと言うらしくこの村に来た理由は一国の国王に仕える預言者がこの村に現れる覚醒者が今この世界を脅かす魔王を倒して平和にしてくれるだろうと予言があり覚醒者を国に連れていくためにこの小さな村に来たと言う。


私は動揺する村の人達の間をすり抜けてガレスさんの前に立ち自分が覚醒者だと伝える。もちろん両親はは慌てて私の元に来てガレスに謝りながら私を遠くに連れていこうとするが私はガレスをまっすぐ見つめる。ガレスはそんな私の目を見て声をかける。


「小娘…その瞳は嘘をついている道化の瞳ではない。確かに預言者殿からは覚醒者がどのような人物かは聞いてはいない…ならば自分が覚醒者である証拠はなんだ?小娘」


ガレスが私にそう言うのは知っていた。だから私は着けていた眼帯を外し右目を開き告げる。


「ガレス・モルドレッド。あなたは妻であるエルドナを愛しており、その間に2人の男女を授かる。だがその幸せは長くは続かない。ガレス・モルドレッドは魔王軍七つの大罪の暴食獣タルマンに捕食されて命を落とす」


普通の村人ならガレスさんにこのようなことを言うと即死刑だろう。だけど私はあえてガレスに言ったのだ覚醒者だと証明するために。ガレス以外の兵士は怒りの声を上げる。失礼だ!ここでその小娘の首を落とすべきだ!など言っているが私はその言葉を無視してガレスを見つめる。ガレスは私の発言に少し考えてから兵士達に静まるように発言する。


「小娘…お前の名前はなんだ?」


「私はサラ・イルミナ。私は魔王を倒しそして散る一輪の花です」


「わかった!このガレスはサラ・イルミナを覚醒者だと認め王国に招待しよう。」


私はガレスさんと行くために両親を説得して世界を平和にしてくるよと伝えてガレスの乗っている馬の後ろに跨る。乗馬の感覚は初めての体験だった為身体が辛かったことはいい思い出だ。この時私は18歳になっていた。


王国に招待されて3年が立っていた。私は21歳になり魔王軍との戦いに身を投じていた。ガレスと共に初めて王様に会った時は少し緊張したのを覚えている。預言者と言われた胡散臭い爺さんは苦手だったけど私は王様に魔王を倒すことを誓いガレスが私の戦闘の師匠として色々教えてくれた。今でも教えを大切にして魔王軍と戦っていますガレス師匠。どうか…天から見守ってください。貴方の家族は守りますから……。


魔王軍との戦いは私が24歳になった時に終止符が打たれる。魔王であるザグリエルは侵略の魔王と言われており、あらゆる物を我がものとするために人間界に侵攻して来た魔王。その魔王と私は死闘を繰り広げて何とかザグリエルを討伐する事が出来た。だけど…ザグリエルが亡くなる寸前に言っていた言葉が頭から離れない。


「どちらがこの戦争に勝利しようが大いなるもの共はそれを見て笑う化け物だ!我々は所詮、ボードの上に無造作に転がる駒に過ぎないのだよ。だが!我はその支配を逃れ大いなる物の次元に侵入して化け物の全てを侵略する!」


私達は駒…自分達では運命すら選べないただの駒。私は魔王を倒した後の運命を知っている……それは



"守っていた者達からの殺意によりこの身を煉獄の業火で焼かれる"



私は25歳になった。そして今の私は手錠を付けられて巻が積まれた十字の磔台という舞台に上がる。観客達は私の姿を突き刺すような目を向けるだろう。これが私の終末だ。でも私は知っていたどう足掻いてもこの未来はやってきたのだ…ガレス師匠を助けようとした時に動いたが変わらなかった…因果は断ち切ることは出来なく運命を変えることはできないと悟った。でも…助けた人々の笑顔はこの上ない私の宝だった。幸せの人生だった。そう思い私は兵士達が巻に火をつけるのを見守る。そんな姿を見た1人のアーティストは絵を描く。タイトルは……


『聖女はやがて魔女になる』




ハァ…ハァ…ハァ…


私は暗い森の中を走っていた。後ろからは獰猛な魔物の鳴き声と追ってくる足音が聞こえてくる。捕まれば私は魔物に食われて死ぬでしまう!そんなのは絶対に嫌!

だから私は歪んがた木々を掻き分けてこの森の中心にある遺跡に向かう。何とか遺跡の前まで着いた私だったが遺跡の入口に羊の角のような形をした黒い角を生やし血のような赤黒い髪をした男性が私を見て話しかける。


「この遺跡に来ると思いましたよ。グレノア」


男性は懐から鋭いナイフを取り出して指で転がしながら余裕そうに言う。私はこの男を知っている。忘れる筈がない…だって侵略の魔王と呼ばれたザグリエルの元部下で味方も快楽で殺すようなイカれたサイコ野郎なのだ!ザグリエル…兄さんもこの男に手を焼いていたが最終的には魔王軍を追放と魔力を一部封印する事でこの男…ハルバーンを魔界に送った。


「なぁ〜グレノア。俺はお前みたいな綺麗な女性を傷物にしたくないんだよ。だから侵略の魔王の魔力核をよこせ!それがあればこの!」


ハルバーンは自分が着ている服をずらして胸を見せる。そこには黒紫色の肩から腰にかけて傷がある。


「ザグリエルが俺に付けた封印痕が治るからよ!この封印痕の際で俺の力は下級魔族ぐらいの力しか出せねぇ!そのせいで上級魔族共は俺を見下し中級魔族共は俺を奴隷のように扱ってくる!そんなの俺が耐えられるはずがないだろう?」


「ハルバーン。あんたが兄さんの怒りに触れたからでしょ!それにあんたの行動は魔王軍の指揮も下げていたんだから当然でしょ!」


私がそう言うとさっきまでと違い明らかな敵意と殺意が伝わるような低い声を発する。


「俺が優しく交渉しているのになんだその言い草は!お前が今どんな状況か忘れたのかよ!後ろからは俺が使役しているシャドーウルフが来ているんだぜ!それにザグリエルの妹のお前の実力は下級魔族以下まで下がっている。俺が殺そうと思えば簡単に無に帰るんだぜ!」


「それは…」


ハルバーンが言っている事は本当だ。私はあの戦争で賢者ナナシに魔力を取られてしまい魔法や身体強化が出来ない状況だ。本来の私ならハルバーンに遅れを摂ることは絶対にないが今の私は下級魔物のシャドーウルフすら倒せるか怪しい。何とか遺跡の中にある追憶の祭壇に行かなければ…それがお兄ちゃんとの約束だから!


「ハルバーン。そこをどいて!」


「どくわけないだろが!何回っても理解しないお前が悪いんだからな!少し痛い目を見させてやる」


ハルバーンは手に持っていたナイフを構えて私に襲いかかる。私は遺跡に行きたいけどハルバーンの攻撃を避けるには後ろに下がるしかなくどんどん遠くに行ってしまう。ハルバーンはナイフを今日に使いグレノアを追い詰めていく。


「どんどん遺跡から離れるな!グレノア」


「くっ!」


ハルバーンは動揺したグレノアの隙をついてナイフでグレノアの右足に深く傷を与える。その痛みでグレノアの動きのキレが落ちる。


「いいのが入ったな。そろそろ諦めるか?」


「私は遺跡に…」


「まだのようだな!仕方ない」


ハルバーンは指をパチンと鳴らすと茂みから飛び出してくるシャドーウルフにグレノアは反応できず右腕を噛まれる。シャドーウルフは捕まえた獲物を逃がさないように前足でグレノアを地面に倒して鋭い牙でバギバギと肉に食い込ませる。そのあまりの痛みにグレノアは悲鳴を上げる。


「痛いッ!痛い!」


「ハッハッ!いい光景だな!封印されてしばらく見れなかったこの光景!興奮するぜ!」


私の血が溢れてシャドーウルフの口を赤く色付け痛みで私の意識は薄れていく…周りには高々に笑う男の声が耳を汚す…なんて最悪の死なんだろう…私はいつも兄さんの足でまとい…ごめんね


私が諦めかけていた瞬間、懐に隠してあった兄さんの魔力核が発光して膨大な魔力が放出される。その魔力の放出で私を食らっていたシャドーウルフは跡形もなく消し炭にされて地面から大量の怨念や憎悪が私が持っている魔力核に集まってくる。


「なんだよ!これは!」


ハルバーンも今まで経験した事の無い現象で動揺している。私は何とか気力を振り絞り魔力核を握る。兄さん…約束を守る為に力を貸して!


私が願うと天から紫色の雷が私とハルバーンの間に落ち土煙が舞う。しばらくして土煙が晴れるとそこには黒いの鎧と獅子のよう形をした兜を着けた人物は腰にあった剣を抜きハルバーンに向ける。


「私はサラ・イルミナ。汝を排除する」


サラ・イルミナの名前を聞いたハルバーンと私はその名前に恐怖する。かつてザグリエルを倒した騎士の名前だからだ。戦争を経験した魔族ならその名前を聞いただけでも逃げていくことだろう。私もハルバーンも戦争に参加した魔族なので恐怖と動揺で思考が停止する当たり前だ!黒騎士から感じる威圧感と魔力の質が本人の物と一致しているからだ。そんな私達を気にする様子もなく黒騎士はハルバーンの懐に一瞬で入り剣を振り下ろす。ハルバーンの体から大量の血が吹き出て地面に倒れて動かなくなった。


そして黒騎士は私の方に近づいて手をかざす。


「ヒール」


サラは私に回復の魔法を使ってくれたらしくさっきまで酷い傷だった所がみるみる塞がっていく。私は起き上がり距離を取る。


「貴方がなんで魔界にいるの。まさか人族が魔界に攻めてきた!」


私がサラにそう言うとサラは首を横に振る。


「私は遠に人生を終えている。だから人族じゃない」


「じゃあ貴方は何なの?」


サラは少し間を開けた後に答える。


「死者の怨念と憎悪が形を成した化身サラ・イルミナ。不思議な事に生前の記憶と全盛期の肉体をもっている」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ