スキル赤備えで窮地を脱する
if戦記でスキル等が出てきますのでそういうのが苦手な方にはお勧めできません。
燃え上がる二条城において、俺は星切りの太刀を使い無数に飛んでくる矢を薙ぎ払っていた。
実は俺は転生者であるのだが、同じ時系列に二度目の転生である。
一度目の転生では奇妙丸として転生をして数年を過ごしたのだが、色々と余計なことはしたが目立ち過ぎて周りに目をつけられぬよう優等生を演じながら今後の為の領地改革等を実施しようとした最中、交通事故に遭い心肺停止だった元の世界の身体が蘇生した為に魂が戻ってしまったのだ。
そして治療のかいなく病院で心肺停止になった後に再び戦国の世に戻ってしまった瞬間明智光秀に攻め立てられている本能寺の変真っ最中と言うわけだ。
今回は奇妙丸のその後の姿である織田信忠に再び転生したのである。
しかし普通なら悲観してしまうこの状況において、俺には勝算があった。
俺の転生に関わっている熱田大神がチート能力としてスキルを授けてくれたのだ。
スキル赤備えそれが俺のチート能力の名称である。熱田大神いわく神より授けられし陰陽師の力として使えば問題ないことである。流石に神も何度もすぐ死ぬのはしのびないと思ってくれたのであろう。
赤備えと言うスキル名からなんとなくその能力の内容にピンと来るかもしれないがこれには深い訳があるのである。
奇妙丸に転生した際に自身の境遇に気付いた俺は、父である織田信長に唯一の我儘として武田信玄の娘である松姫が産まれた時点で婚約を結んでもらい、俺の強い意志で甲府に住まわせて貰っていた時期があったのだ。
腹の中が真っ黒の武田信玄は良い人質になるとこれを快諾し、父信長は俺の強い意志もあり武田家から学ぶことも多いと考え渋々了承したのである。
俺はこれぞとばかりに令和の知識で信玄に職の知識や食糧増産知識と引き換えに教えと信頼を得ることが出来たのである。
武田勝頼等、信玄以外の武田一門宗との交流はそれほどなかったが、山形三郎兵衛昌景や馬場信春、内藤昌豊、高坂昌信や武藤喜兵衛などとは仲良くなったのである。
彼等には薬草学などを教えることにより信頼を得ることが出来たのと、史実の織田信忠が剣の達人と言うこともありそれにより気に入られたと言うのもある。
その頃の俺は歴史改ざんにより武田家を滅ぼさずに済む未来などを模索していたのだ。
武田四名臣と呼ばれる四天王の中でも俺は特に山方三郎兵衛昌景と仲良くなった。
俺自身が武田の赤備え、井伊の赤備え、真田の赤備えと根本は武田の赤備えに繋がる赤備えに強い憧れと尊敬の念があったのも理由かもしれない。
俺は顔を合わせる為に「三郎兵衛、俺が大きくなったら俺の家老になってくれ」と勧誘していたのだ。
山県昌景はいつも眉をハの字にして困った顔をしていたがある時一度だけ返事をしてくれた。
「まったく婿殿には困ったもんですな。このような兎口の醜男などよりもっと良い家来が出来ましょう。この身はお館様と武田家に捧げておりますゆえにお許しを」
「私は三郎兵衛が良いのだ。だから私は誰よりも強くなる。そして私が松姫と祝言をあげ子を成した場合その子は武田家の血筋でもあるはずだ。私は松姫とその子を守れる強い男になる」
「やれやれ頑固なお方じゃ。わかりもうした。お館様の婿殿じゃ。もし次に生まれ変わったら家臣にならせてもらいますぞ」
「本当か?約束だぞ三郎兵衛。有事の際に側にいなかったら地獄の底から呼び起こすからな」
「「ワッハッハッハッハッハッハ」」
「何がおかしいのだ美濃守、修理之介」
「「今の話聞かせて貰った。その際には冥府より我等も駆けつけましょうぞ」」
その時の彼等はまさか本当に俺が神の力を借りて呼び出すことになるとは思っていなかったですあろうが。
そうスキル赤備えは戦国最強である武田の騎馬隊と赤備えを召喚するスキルなのである。
スキルで召喚された部隊の武具や馬は壊れることなく弓矢は尽きることがない。
現在呼び出せる兵数は五千ほどであるが、実はあまり知られていないが武田軍にも鉄砲隊があり五百丁ほど俺のスキルには含まれている。
俺が討ち死にしたり、失神したりしない限りは消えることのない無敵の軍団だ。
現状を把握した俺は、必要以上に俺に自害を急かして決して逃げることを許さずに包囲される原因を作った身内を粛清することにする。
織田信忠が死に織田家滅亡の原因をつくり史実でも自らは逃げ延びた父織田信長の弟である織田長益である。
もしかしたら明智光秀とのなんらからの裏取引きがあったかもとそれも疑わしい。
混乱の中で俺は叔父である織田長益を屋敷内に誘い出しその首を刺して粛清した。
そして混乱の中で主だったものを近くに呼び出せて宣言する。
「叔父上が自害なされた。しかし案ずるな我も後を追おうと覚悟を決めたが神より信託を受けて力を授かった。神の奇跡を、陰陽師の力を得て冥府より味方を召喚いたす」
「な、なんとまさか」
「兄上まことにございますか?」
「うむ、勝長そなたにも懐かしき物達ぞ」
「スキル赤備え召喚」
その瞬間に二条城は眩い光に包まれ敵味方が目を開けた際には赤備えの無数の軍勢が二条城を埋め尽くしていた。
その先頭に3人の武将が馬上から此方を見渡す。
「久しいな三郎兵衛、修理之介、鬼美濃よ」
「「「婿殿、神の力によりいつのまにか婿殿が見ている世界や現状は把握しましたぞ。我らが来たからにはもう謀反者どもの好きにはさせませぬ」」」
「で、あるか。我が死ねば松姫を1人にさせてしまう。そしてそこにいる勝長は武田家の後継であるぞ」
「山県、松姫様を悲しませるわけにはいくまいて」
「おう、馬場お主こそその槍は錆び付いてないか」
「ふん、武田の副将と呼ばれたわしの活躍をみせてやるわ」
周りの物達はあまりの出来事に現実を受け止められずに好調したが、織田家陣営はそのご歓喜の渦に包まれた。
絶体絶命の窮地にかつての最大の敵である武田の赤備えのが出現して味方してくれるのだから。
二条城内に侵入していた敵は馬場隊を中心に駆逐され、近衛屋敷より攻撃してきていた明智兵には内藤隊が対応して駆逐した。
そして各門に兵を配置したのちに中央門には山県隊が出陣の用意をしている。
スキル赤備えの盾部隊と槍衾部隊により門周辺の敵を押し戻すと此方は武器も弾薬もないと油断していた明智軍に関して容赦なく鉄砲を撃ちかけて怯んだところに山県昌景による騎馬隊による突撃である。
完全に此方の戦力を侮っていた為、斎藤利三をはじめとする明智家の重臣達が前線に出てきていた為にその槍の餌食になってしまった。山県隊がは討ち取った兜首を槍の先に刺してかかげながら周辺の敵を駆逐することに成功する。
明智軍は長篠の戦いで武田赤備えの恐ろしさと強さを嫌というほどに身をもって体験している為に恐慌状態に陥った。
そこに俺が出ていき「謀反者達に対する神罰だ!武田家の姫君の夫であるこの我と武田家の後継者を守る為に地獄の底から武田の赤備えと四名臣が復活したのだ。神を恐れね不届き者どもは末代まで呪われると思うが良い!ただこの場で武器を捨てて投降する雑兵は命を助けると約束致そう」
完全に戦意を喪失した明智軍の者達は武器を捨ててその場にしゃがみこむか、武器を捨てて四方に逃げ出した。
俺はそのまま兵を勧めて本能寺を目指すが、父信長は残念ながら自害した後に阿弥陀寺で荼毘に付されて埋蔵された後であった。
天下人織田信長に対する謀反と殺害には成功したが史実と違い俺が生き延びた為に織田家が揺るぐことはない。
明智光秀は敗走したが、山間部で土民による落武者狩りによりその命を落とした。
明智光秀とその一族の遺体は本能寺跡に晒された。
そしてこれから四百年以上続くことになる織田幕府が俺が征夷大将軍になることで始まるのであった。
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