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7つの罪跡  作者: 無重力


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7/8

7 入学?

「おい…これはなんの冗談だ…」


 眉間にしわを寄せ、怒気を孕んだ低い声でレオンが呟いた。視線の先をたどれば、一枚の羊皮紙を掲げているフォルティスの姿と、羊皮紙に冷たい墨文字でただ一言刻まれていた。


 {不合格}と。


 かける言葉も見つからず、手を口にあて左右に体を揺らし、困惑しているセシリアの横で、言葉を発した後、沈黙を貫いていたレオンが行動に移した。重低音を響かせる詠唱と共に。


「おい…これを指示した奴のとこに連れていけ」


 黒刀ダーインスレイヴの柄を握りつぶすかのように力を込め、フォルティスに詰め寄る。


「物騒なやつだな…まあそう目くじらをたてるな。いろいろと思うどおりいかないことなどいくらでもあるぞ」


 何度もうなずきながら、人生の先輩として振る舞いながら喋る。その姿を見たレオンが何も言わずセシリアの寮宅から一人出ようとする。


「ちょっと待ってください!剣を持ったままどこに行こうとしてるんですか!?」


「こいつでは話にならん。一番偉いやつがいるとこに行くだけだ。問題ないだろ?」


 セシリアの声を背に受けたレオンは顔だけ少し後ろに傾け、捨て去るように答える。


「そんなことをしたら学園内に残るどころか、あなたは国中に指名手配されてしまいますよ!」


「…そうか…しかしだな…」


 セシリアの言葉で納得はいかないが、彼女の指摘で歩みを止め、振り返り腕を組みながら唸る。


「何かほかにも方法はあるはずです…ん?フォルティス先生?そのもう一つの羊皮紙には何が書かれているのですか?」


「ん?そういえばもう一枚もらっていたな。君らには関係ないかと思って最初の1枚だけ見て中身を見ていないんだ」


 セシリアは静かに、しかし長く息を吐いた。友人のような、姉のような温かさを込めて。


「先生…魔奏剣士として、教師としての先生は本当に尊敬していますが…ちゃんと雑業務もきちんとこないしてください…何度、書類の手伝いをした思ってるんですか」


「いつもすまないな。本当に助かっているぞセシリア」


 快活な笑みを浮かべながらフォルティスは言う。


「問答はいいから、早く読んでくれ」


 レオンは二人のやり取りにしびれを切らし端的に言う。


「む、そうだな、では広げるぞ!」


 フォルティスが二人に見せつけるように宙に、羊皮紙を広げる。羊皮紙にこう書かれている。


{セラフィム王立魔奏学園より、偉大なる魔奏剣士レオン殿への招聘状

 彼方、東方の地で根ずく術と未知なる魔奏を操る稀代の殿。

 謹んでご機嫌を伺います。

 当学院は、若き魔奏師の卵たちに真理の片鱗を示すべく、日夜研鑽を積んでおりますが、この度、貴殿の持つ力が彼らの成長に不可欠であると結論いたしました。

 つきましては明日より、当学院の臨時教師として近接術の教壇に立っていただきたく、ここに招聘の書状を認めました。   


セラフィム王立魔奏学園 学園長 エテルニア・ルミナス  }


「そうきたか…」


「ええええ!!レオンさんが教師ですか!?」


 セシリアは両手で口元を覆い、品位を落とさす様、驚愕の声を上げる。


 レオンは訝しさを滲ませながら続ける。


「俺は自分の技術が東方の地で根ずいているものであると知らなかったが…なぜこいつはそんなことすら分かる?」


「学園長は永久の時に近しい年月を過ごされている方だ、あの方が無知なものなどないのではないかだろう。それより君…いや臨時とはいえ同僚になるということはレオン先生よ、あなたの剣術は東方の地の技術なのだな。いやはや世界は広いものだな。しかし、近接術の授業とは最適だな。お世辞にも学園の生徒たちの剣術等の技術力には申し訳ないが稚拙極まりない。どうしても平和な我が国では、魔奏のみに傾倒してしまうのは仕方ないのではあるが…我が国の未来を担う者たちだ、人は国力そのものだからな。基本的な近接術ぐらいできなければ有事の際の憂いになる。なお、セシリア?」


 急に話を振られ、しかもその話題が自身の一番苦手とする近接術であるとわかり、落ち着きなく視線を泳がしながら力なく答える。


「…努力いたします…」


「それで、この招聘は無論受けるのであろう?」 


 レオンは納得していない様子ではあるが、今後の学園内で行動を起こすためには、仕方ないと割り切り答えを出す。


「やってやる」


(教師としてのほうが、蛇野郎を探すの動きやすいか)


「ではよろしく頼むぞ。セシリアもしっかり教えをこくのだぞ」


「よろしくお願いいたします…レオンせ、せ…明日までにはちゃんと呼ばせていただきます。レオンさん…」


 セシリアが追い付ていかない現状に困惑している中、 奥の扉が静かに開き、甘く重い香りが部屋に忍び寄った。 アスモデウスは、はだけたネグリジェから白い肌を覗かせ、妖しい微笑を浮かべて現れた。


「あら、また新しいお遊び相手?レオンもやるじゃない」


「ちょ、ちょっと!奥の部屋にいてくださいといったじゃないですかお姉さま!」


「あなたたちうるさいんだもん。楽しそうだし出てきちゃった。てへ」


 かわいらしくおどけて見せるアスモデウスではあったが、彼女の場合はそのすべてのしぐさが強烈に性を刺激する苛烈なもの変容を遂げてしまう。実にフォルティスは同性愛者ではないが、アスモデウスにすべてを魅了されかかっていた。それに気づいてレオンは人知れず、さえずりのような重低音を鳴らす。その音とともにフォルティスは我に返った。


「私は今なにを…」


 その先の言葉は羞恥心からしまい込み、フォルティスは雑念を振り払うかのように首を左右に強く降り、続ける。


「彼女は誰なんだセシリア…私が同性に魅了を受けるだとなど…セシリアはなぜ無事なんだ?」


「どういうことですか?なにも感じたことはありませんが…まあ今までお会いして中でも最上級の美貌を持たれている方ではあるとは思いますが…」


「大丈夫ならいいんだが…それより彼女は何者だ?」


 その問いに対する弁解をするためにレオンとセシリアが声を発しようとするのを嘲笑うかのように、彼女がその問に答えてしまった。


「ここはね私たちの肉欲の巣よ」


 柴眸は小躍りするかのように妖しく輝きを増す。この場の空気を凍らせながら。




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