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あの後、ショックを受けているように見えたのか「き、気にしないでくださいね、私は身長とか気にしませんから」と謎のフォローをされてしまった。
正直、傷ついているとかそういうこともなかったから彼女のそれで駄目になってしまったようなものだった。
で、何故か彼女は今日も泊まることにしたみたいでいまはお風呂に入っているということになる。
なんでこの家に泊まりたがるのかと、仮に彼氏的存在がいるのだとしても退屈過ぎて若い子であれば飽きそうなものだが……。
敢えて僕を選ぶぐらいだから逆張り的な精神なのだろうか? それでも得なことはあるかもしれないが損をすることの方が多そうだから止めるところだ。
「ふぅ、お風呂ってやっぱり気持ちがいいですね」
「全然拭けていない……」
「そうですか? いつも母や莉子から言われますが十分――あ、こうして私にタオル越しでも触れたかっただけですよね?」
「もうそれでいいからじっとしていて、また風邪を引かれたくないんだよ」
まあ、行ったときには元気だったがそれまでは調子が悪かったはずなのだ、彼女としても何回も風邪は引きたくないだろうから大人しく従ってほしいと思う。
で、そんなに面積があるわけではないからすぐに拭き終え、食事なんかも済ませてあるから自由な時間の開始となった。
窓を開けていることから外から入ってくるなんとも言えない風がいまは心地がよくて危うく寝そうになるぐらいだ。
「先輩、ぎゅーってしてください」
「ぎゅー」
「全然やる気がない……。いいですか? こうやるんです、よっ」
「ぎゃあ!? ち、力が強すぎだよっ」
危うくそのまま天国か地獄に逝ってしまうところだった。
別にいまのだってやる気がなかったわけではなく彼女を抱きしめたら余計に眠くなったというだけのことなのに酷い。
「莉音ってさ、こうして自分から触れているときでも心臓が速くなっているよね」
「……当たり前じゃないですか、好きな人を抱きしめているんですから」
「そっか」
いやそっかじゃないんだよ、冷静なふりをしているだけでだいぶやばい状態だ。
これならまだ亮介さんや莉子ちゃんがいてくれた方がよかった、二人きりになった途端にこれだと怖い。
ただ、依然としてこちらを強い力で抱きしめてきている彼女に対してこれまで我慢をさせてしまっていたからかという感想を抱く。
だからこんなことで満足できるということならいくらでもやらせてあげるのがいいのではないだろうかと意識を変えてなすがままとなっていた。
「ありがとうございます」
「いやいや、こっちこそありがとう」
先に言えなかったのは少し残念でもあるがこうしてお互いに言いたいことを言っていけたらいいなと思ったのだった。




