新たな試練
仲間が増え、パーティとしての形が整ってきた。前衛にはじーとニック、後衛にはひよと魔法使いのレンとアムがいる。戦闘もそれなりにこなせるようになり、パーティとしての役割分担も見えてきた。
だが、じーは思った。今のままで本当に大丈夫なのか。
戦える仲間が増えたのはいい。しかし、増えたからといって、それが「強くなった」ということにはならない。実際、戦闘中にひよがてんてこ舞いしていたこともあった。魔法使いのレンとアムは強力な魔法を持っているが、戦闘のバランスを考えなければ、かえって全体の動きが乱れることもある。
今、じーたちに必要なのは何なのか。
じーは考えた。
こういう時は、パンダ師匠に相談すればいい。
パンダ師匠なら何かヒントをくれるかもしれない。今までも、重要な場面で導いてくれた存在だ。
「……パンダ師匠のところへ行こう」
じーがそう提案すると、ニックは「なるほど、それはいい考えだな」とすぐに賛成した。
「師匠なら、俺たちの今の状態を見て、何かアドバイスをくれるかもしれないな」
「モフモフの師匠……ちょっと興味ある」
レンとアムも、軽く頷いた。
「確かに、経験豊富な人の意見を聞くのは大事ね」
ひよも納得した様子だった。
こうして、じーたちはパンダ師匠のもとへ向かうことになった。
パンダ師匠の住む森へ到着すると、師匠はじーたちを見るなり「ふむ」とうなずいた。
「ずいぶん賑やかになったな」
じーは黙って頷いた。
「どうやら、お前は仲間を増やすことに成功したようだな」
師匠の言葉に、ひよやニックが少し驚いた顔をする。
強くなったかどうかではなく、仲間を増やしたこと を評価された。
「強さとは何か。それは、単に己の力を高めることではない。お前は今、仲間と共に戦っている。それこそが、お前が成長した証だ」
じーはその言葉を反芻する。自分一人ではなく、仲間がいるからこそ戦える。そのことに気づいたからこそ、こうしてパンダ師匠のもとへ相談に来たのだ。
「だが……」
師匠はじーたちをじっと見つめる。
「仲間を増やすだけでは、まだ不十分だ」
ひよが眉をひそめる。
「どういうことでしょう?」
パンダ師匠は静かに告げた。
「お前たちには試練が必要だ」
その瞬間、じーたちの背筋が伸びる。パンダ師匠の言う試練が、生半可なものではないことは明らかだった。
「お前たちの力を試すため、ある存在と戦ってもらう」
そう言って、師匠はじーたちを見渡しながら、ゆっくりと口を開いた。
「伝説のペンギン を倒してこい」
「伝説のペンギン?」
ニックが目を丸くする。
「ただのペンギンじゃないわよね?」
レンが呟くと、パンダ師匠は静かに頷いた。
「伝説のペンギンは、氷の魔法を操る強敵だ。その素早さ、知能、戦闘能力……どれも一級品だ。今のお前たちが、本当に一つのチームとして戦えるのか。それを試すには、うってつけの相手だ」
じーたちは顔を見合わせた。
確かに、今のパーティにはバランスの取れた役割分担がある。前衛、後衛、回復役。そして、魔法攻撃も加わった。しかし、それが実戦で本当に機能するのかはまだ分からない。
パンダ師匠の言葉は、じーたちに 「試されている」 という感覚を強く植え付けた。
「……なるほど」
じーは静かに頷いた。
目の前の試練を乗り越えれば、何かが見えてくるかもしれない。仲間とともに戦う意味、そして、真の強さとは何か。
「行こう」
じーのその一言で、パーティは動き出した。
次の目的地は、伝説のペンギンが住む氷の山。試練が待っている。




