魔法使いレン
ギルドの受付で待つこと数分、現れたのは思ってたのと違うものだった。
前衛が二人、後衛が一人って聞いてたから、それなりにゴツい人たちが来るのかと思ったのに、そこにいたのは……。
「……なにこれ、めっちゃ可愛い」
つい口から出た言葉に、隣のアムが「レンが可愛いって言うの珍しいね」なんて笑う。でも仕方ないでしょ。こんなモフモフした生き物、見たことない。顔はパンダみたいで、体はペンギン? いや、違う。なんかもっと不思議な感じ。毛並みはフワフワで、ちょっとツヤがあって、手足がちょこんとしてる。
「えっと……じーです。よろしくお願いします!」
そのモフモフが喋った。あれ、もしかして人なの? いや、生き物? まぁどっちでもいいか。とりあえず触りたい。
「ねえ、じーくん。ちょっとだけ、モフっていい?」
「え? ……あ、うん、いいよ?」
許可もらった瞬間、すかさず両手でモフモフ。あー、これ、ヤバい。ふわっふわで手のひらが幸せ。ぬくもりがあって、ちょっと跳ね返る感じ。
「……モフモフ、最高」
「わわ、くすぐったいかも……」
じーくんがちょっと困った顔をしてるけど、気にしない。こんな素敵なモフモフを前にして、触らないわけにはいかないでしょ。
しばらくモフらせてもらった後、自己紹介を済ませて、とりあえずみんなで冒険に行くことにした。私は魔法使いだし、前衛が二人いるなら、火力重視で戦える。ちょっと楽しみ。
「スターバースト!」
魔法を放つと、前衛の二人――じーくんとニックくんがタイミングよく敵をまとめてくれる。いい感じに焼き払えて、すごくスムーズ。
「いいね、アム」
「うん、思ったより連携取れる」
私とアムの魔法が決まるたび、じーくんが「やった!」って嬉しそうにするのが、また可愛い。ニックくんも「前衛がしっかりしてると、魔法が映えるな!」って楽しそう。
……ただ、ひとつだけ問題があった。
「ちょっと待ってえええええ!!!」
後衛のひよちゃんの悲鳴が響く。うん、わかる。私たち、ちょっと張り切りすぎた。じーくんとニックくんが突っ込んで、私とアムが魔法をぶっぱなす。サポートのひよちゃん、めちゃくちゃ大変そう。
「……ひよちゃん、ごめんね」
戦闘が終わる頃には、ひよちゃんは肩で息をしながら、ジト目で私たちを見ていた。
「はぁ……全員、正座!」
あ、怒られた。
結局、ひよちゃんに怒られて、私たちは大人しく正座。じーくんとニックくんが無茶しすぎて、アムと私は魔法を撃ちすぎて、ひよちゃんがめちゃくちゃ忙しかったらしい。
「次からは、ちゃんと連携考えてやろうね」
「うん、ごめん」
ひよちゃんに謝りつつ、私は横にいるじーくんをチラッと見る。
モフモフのじーくん。戦ってる時はすごく強いけど、こうやって静かに座ってると、ほんと可愛い。今後の冒険も、このモフモフと一緒なら、絶対楽しいはず。
ひよちゃんには迷惑かけないようにしつつ、じーくんはできるだけモフりたい。
うん、いいパーティになりそう。




