フォーメーション
パーティのフォーメーション会議
パーティの人数が3人になったこともあり、冒険者ギルドを後にした帰り道、ひよが真剣な顔で口を開いた。
「そろそろ、ちゃんとしたフォーメーションを考えるべきだと思うの。」
ニックは「お、来たか!」という感じで腕を組み、じーは相変わらずキョトンとした顔で耳をピコピコ動かしている。ひよは咳払いをして説明を始めた。
「基本的には、前衛が敵を抑えて、中衛や後衛が火力を集中させる形が理想よ。ニックさんは前衛で盾兼アタッカーとしての動きが完璧だし、問題はないわ。」
「お、ありがとな!」
ニックが軽く笑って応じる。
「でも、じーは…」
ひよはじっとじーを見つめた。
「ん?僕?」
じーが首を傾げる。
「じーって、どう動いてるの?」
「うーん、特に考えたことないかも?敵がこっちに来そうだなーって思ったら叩いたり、敵が遠い場合は投げたりしてるかな!」
ひよの顔が微妙に引きつる。
「…投げたり?叩いたり?」
「うん!」
じーが自信満々に頷く。
「何を投げたり叩いたりしてるの?」
「ジャガイモ!」
その答えに、ひよは思わず声を上げた。
「ジャガイモ!?」
じーはさらにニコニコしながら説明を続ける。
「農園で育てたジャガイモだよ!この間のやつなんて、敵を倒すのにいい感じだったし。硬くてよく飛ぶんだ。」
ひよは頭を抱えた。
「待って、ちょっと整理させて。あなた、ジャガイモで戦ってるの?」
ここでニックが助け船を出す。
「まあまあ、驚くよな。でもじーのジャガイモ、めちゃくちゃ硬いんだぜ。下手な武器より強いっていうか。」
ひよは疑いの目を向けつつ、じーに問い詰めた。
「そのジャガイモ、どこから出してるの?戦闘中でもご飯のときでも、すごく自然に取り出してたけど。」
じーは「これだよ!」と嬉しそうに、自分のポーチから一つの袋のようなものを取り出した。
「アイテムボックス!これ、パンダ師匠がくれたんだ。中にいっぱい食材とか料理が入ってるんだよ!」
ひよは驚愕の表情を浮かべ、アイテムボックスから取り出されたジャガイモや人参を手に取る。その硬さに目を見開いた。
「これで敵を叩いてたのね…。確かに硬すぎて武器みたい…。」
ニックが笑いながら付け加える。
「だろ?あいつ、ジャガイモで敵を吹っ飛ばしてるの見たときは、俺もびっくりしたぜ。」
ひよは一旦深呼吸して気持ちを落ち着けた。
「…わかったわ。じーはオールラウンダーなのね。近距離でも遠距離でも、火力がすごいのは確か。じゃあ、これまで通りじーをサポートする形でフォーメーションを組みましょう。」
「おおー!」
「それが一番だな!」
じーとニックが声を揃えて頷く。ひよは呆れたようにため息をつきつつも、口元には少し笑みが浮かんでいた。
「本当に、あなたたちには振り回されっぱなしね。でも…悪くないわね。」
そう言うと、ひよは軽く杖を掲げて微笑んだ。そして3人は、新たな冒険に向けて歩き出した。