その名はじー
「世の中を救うには、冒険者ギルドに登録するのが一番だな!」
と、ニックが僕に言ってきた。どうやら冒険者ギルドってところに行くと、モンスター退治の依頼とか情報が手に入るらしい。それに、倒したモンスターによっては報酬がもらえることもあるとか。確かに、これから旅を続けるなら便利そうだし、何より合理的な感じがする。
「よし、それならギルドに行ってみよう!」
ってことで、僕らは街にある冒険者ギルドへ向かった。
ギルドの入り口に着くと、なんだか威勢の良い声や鎧のガシャガシャした音が聞こえてくる。中に入ると、いかにも冒険者っぽい人たちがあちこちで話していて、空気が活気に満ちていた。だけど、僕が一歩足を踏み入れると、ギルドの中が急に静かになって、みんなが一斉にこっちを見たんだ。
次の瞬間、誰かが叫んだ。
「モ、モンスターだ!?」
僕はびっくりして目をパチパチさせたけど、すぐに両手をバタバタさせて「違います、違います!僕、パンギンです!」と慌てて言い返した。でも、みんな疑いの目で僕を見てるみたいで、少し焦った。
そんな中、ニックが一歩前に出て、みんなに向かってニコっと笑いながら「こいつ、おっかねぇやつじゃねぇから、心配すんなよ!」ととりなしてくれた。なんだか面白そうに肩をすくめてるけど、僕が少しホッとしたのを見て、笑いをこらえてるみたいだ。
しばらくして、ギルドの職員さんが「さて、登録ですね」と笑顔で僕に近づいてきて、冒険者登録の説明をしてくれた。冒険者ランクにはGから始まって、最高ランクのSまであるらしい。なるほど、ランクが上がるとできることも増えるみたいで、ちょっとワクワクしてきた。
「それじゃ、名前と種族名をお願いします」と職員さんが用紙を渡してくれた。
僕は名前の欄に「パンギン」と書こうとしたんだけど、その瞬間、ニックが僕の手元を覗き込んで、「おいおい、それって種族名じゃないか?」って指摘してきた。…あ、確かに。僕、何も考えずにそのまま書こうとしてた。
「名前かぁ…」
僕は悩んだ。自分の名前って、なんだかよくわからなくなってきた。だけど、冒険者として最初のランクが「G」だって聞いたとき、ふと「じー」っていう音が頭に浮かんできたんだ。なんとなくシンプルでいい感じだし、覚えやすいかも。
「…じゃあ、僕の名前は『じー』でお願いします!」
そう言って職員さんに伝えると、ニックが「じー、か。そりゃまた単純な名前だな」と肩を揺らして笑っていた。でも、ニックはすぐに笑みを浮かべて僕に手を差し出し、「よろしくな、じー!」と声をかけてくれた。
僕もその手を握り返して、心の中で冒険者としての新しい一歩を踏み出した気持ちになった。