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59 サイモンのもてなし

「おいっ、何故扉を閉める! ここを開けろ、サイモン! 話があるんだ!」


 ドンドンとアラスター王太子が扉を叩いて呼びかけるが、扉が開くどころか返事すらない。


(まさか、顔を見るなり門前払いされるとは思ってもみなかったわ)


 こちらは名乗ってもいないのに、サイモンはアラスター王太子が誰だかすぐにわかったみたいね。


 あれだけ父親である国王陛下によく似ているのだから当然かもしれないわ。


 玄関先で立ち尽くすアラスター王太子の肩をロナルドがポンと叩いた。


「アラスター様、私がサイモンと話をしましょう」


 軽く息を吐くとアラスター王太子はロナルドにその位置を譲った。


 ロナルドは扉を三回、小刻みにノックをした。


「サイモン、久しぶり、ロナルドだ。ここは王都から離れているからまだ情報は伝わっていないだろう? ブリジット様と宰相は捕まった。今頃は既に処刑されているかもしれないな」 


 ロナルドの言葉に私ははっと息を飲んだ。

 

 私達が王都を出て既に三日が過ぎている。


 事情聴取が終わったならすぐに処刑されて然るべきだろう。


 私に国王殺害の嫌疑をかけられたとはいえ、直接何かをされたわけでもないし、それほど交流もない。


 それでも見知った人物が処刑されて既に生きていないかもとなると、少しばかり落ち着かない気分になる。


 ロナルドの言葉にサイモンは心を動かされたようで、カチャリと鍵を開ける音が鳴った。


 ゆっくりと扉が開き、扉の隙間にサイモンの顔が見える。


「あの女はともかく、ヘンリーが処刑だと? 一体何があったんだ?」


 低く唸るような声にサイモンは肩をすくめた。


「流石にこんな所で話すような内容じゃないね。不本意だろうけれど僕達を中に入れてくれないかな?」


「家に入れるのはいいが、全員が座れるほどの椅子は無いぞ。それでも良ければ入って来い」


「椅子なんてサイモンなら魔法でパパっと出せるだろ?」


 ロナルドの軽口にサイモンはフン、と鼻を鳴らして扉を大きく開けた。


 アラスター王太子は私をエスコートしようとしたが、普通の民家の扉なんて二人で通れるような広さではない。


 仕方なく一人一人扉を抜けてサイモンの家に入って行く。


 家の中にはテーブルと向かい合わせの椅子が二脚、部屋の片隅にソファーがあるだけの部屋だった。


「アラスター様を迎えるような部屋ではないな。少々模様替えをしようか」


 サイモンがパチンと指を鳴らすと、部屋は一気にその姿を変えた。


 先程までのみすぼらしい部屋は無くなり、豪華なお屋敷の居間に変わる。


 広々とした丸いテーブルにゆったりと座れる椅子が六脚、私達の目の前に現れる。


 その椅子も均等に配置されているわけではなく、一脚だけ離れた位置にあり、残りの五脚はまとまった形になっている。


 離れた一脚と対になる位置にアラスター王太子が腰を下ろした。


 その左隣に私とエイダ、右隣にウォーレンとロナルドが腰を下ろす。


「お茶を淹れさせよう」 


 またもやサイモンがパチンと指を鳴らすと、皆の目の前にソーサーに載せられたティーカップが現れた。


 同時に現れたティーポットから一人一人にお茶が注がれる。


 流石に魔法使いと呼ばれているだけはあるわね。


 皆にお茶が行き渡ったのを見届けると、サイモンが率先してお茶に手を付けた。


 それを合図としたかのように皆もそれぞれお茶を口にする。


 私も同じようにお茶を一口、口に入れた。


 魔法で出したとは思えないくらい香りの良いお茶が口の中いっぱいに広がる。


「流石はお茶にうるさいサイモンの淹れたお茶ですね」


 ロナルドがしみじみとお茶を味わいながら褒め言葉を口にする。


「今更褒められたって何も出ないぞ。それよりも詳しい話を聞かせてもらおうか」


 サイモンの言葉にピリッとした空気が部屋の中に訪れる。


 ロナルドがアラスター王太子に目を向けると、アラスター王太子は軽く頷いた。

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