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51 手遅れにならないうちに(アラスター王太子視点)

 アラスター王太子は昼食を終えるとすぐに、キャサリン嬢の部屋に向かったが、そこには誰もいなかった。


「おそらくケンブル先生の所でしょう。オリヴァー様がいらっしゃいますし、私の母もお二人が一緒の方がお世話しやすいでしょうからね」


 本物のオリヴァーがケンブル先生の所にいる事は最小限の人しか知らないようになっている。


 そのため、エイダがキャサリン嬢とオリヴァーの二人を掛け持ちしなくてはならなくなったのだ。


 キャサリン嬢も部屋にこもっているよりはケンブル先生の所にいた方が気が紛れるのでそちらに行ったのだろう。


 そう納得するとアラスター王太子は自室に戻り、ケンブル先生の研究室に通じる扉を開けた。


 中に入るより先に、誰かの声が耳に入って来た。


「あなたの後ろに黒いもやが視えます。私には人の呪いが視えるんです」


 声の主はケンブル先生の夫であるロナルドだった。


 ロナルドに人の呪いが視えるとは知らなかったが、それならば解呪出来るのではないかと思い、期待を込めて尋ねてみたが解呪は出来ないと言われた。


 もっともそれは想定していた答えだったのでそれほどがっかりはしなかった。


 ロナルドに解呪が出来るのならば、もっと早くから噂に上っていたはずだからだ。


 それよりも誰か解呪が出来る人物に心当たりがないかと尋ねると、魔法使いのサイモンが出来るのではと告げられた。


 名前は聞いた事はあるが、アラスター王太子はその人物に会った記憶はなかった。


 エイダによると父上と宰相が知っているのではないかとの事だった。


 父上はともかく、宰相は今回の騒動の件で処刑される事が決まっている。


 だが、アラスター王太子には宰相の処刑がいつになるかは聞かされていなかった。


(早くしないと宰相が処刑されてしまうかもしれない。宰相しかサイモンの居場所を知らなかった場合は聞き出す事が出来なくなってしまう…)


 焦りを感じたアラスター王太子はキャサリン達への挨拶もそこそこに自室へと戻った。


「アラスター様、置いて行かないでくださいよ~」 


 ウォーレンの声が後ろから追いかけてくるが、そんな事に構ってはいられない。


 執務室へと続く廊下を走るような速さで足を進める。


 荒く息をするアラスター王太子とウォーレンに、執務室の扉の前に立っている騎士が目を丸くしていた。


 騎士が扉をノックしてアラスター王太子の到着を告げるのを押しのけるような形で執務室の中に入る。


「何だ? そんなに息を切らして…。何かあったのか?」


 アラスター王太子の焦りなど知らない国王は、のんびりとした口調でアラスター王太子に目を向ける。


 そんな国王の反応に少しイラつきつつも、アラスター王太子は問いかけた。


「父上、魔法使いのサイモンは今何処にいますか?」


「は?、サイモン?」


 いきなり問われた国王は、アラスター王太子に問われた名前をオウム返しに呟いたまま、戸惑っている。


「久しぶりにその名前を聞きましたね。サイモンがどうかしたのですか?」


 国王よりも先に近くにいたサリヴァン侯爵が口を開いた。


 質問に質問で返されたが、探している理由を告げれば納得してもらえるはずだ。


 そう判断したアラスター王太子は先程の研究室でのやり取りを伝える。


 話を聞き終えた国王とサリヴァン侯爵は、それぞれ得心したように頷いている。


「呪いの解呪方法を知っているらしいか…。確かにあいつは色んな魔法の研究をしていたからな。呪いの解呪方法も研究していたかもしれないな」 


「父上、それでサイモンは今何処にいるんですか?」

 

 最初の質問を再度、国王にぶつけたが。無情にも首を横に振るだけだった。


「私は知らん。何も言わずに姿を消したからな」


 ガクリと項垂れかけたアラスター王太子の耳に、次の言葉が届く。


「だが、今牢獄にいる宰相ならば知っているかも知れん」


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