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49 一瞬で消えた光明

「人の呪いが視える? ちょっと、ロナルド、どういう事? そんな事私に話してくれた事なかったでしょ!」


 ケンブル先生に詰め寄られてロナルドはしまった、というような顔をしてる。


 どうやらケンブル先生には内緒にしていた話のようだ。


「仕方がないだろ。俺が呪いが視えるって知ったら『解呪してくれ』とか『呪った相手を教えろ』とか言われるに決まってるだろ? 大体呪われる人間ってのはそれなりの事をしたから呪われるんだ。つまりはそいつの自業自得ってわけだ。それを解呪したら呪った人間に呪いが返ってしまうだろ? 辛い思いをさせられたから呪ったのに、その呪いが返ってしまうなんて、可哀想じゃないか」


 ロナルドに一気にまくし立てられて、ケンブル先生は虚を突かれたように仰け反っている。


 まあ、ロナルドの言う事も分からなくはないけれど、呪いをかける人はそれなりに覚悟を持っていると思うんだけれど違うのかしら?


「けれど、キャサリン様が呪われたのはどうもそうじゃないみたいだな。キャサリン様が邪魔でしょうがないから呪いをかけたみたいだ」


 私の後ろに視えるもやだけで、そんな事がわかるのかしら?


「呪いが視えると言ったな? それじゃ、キャサリン嬢の呪いを解呪出来るのか?」


 突然聞こえてきたアラスター王太子の声にびっくりして振り返ると、『どこでも◯ア』から研究室に入ってくるところだった。


 私が部屋にいなかったから、こちらに来たみたいね。


 突然のアラスター王太子の訪問にロナルドは慌てて頭を下げているが、ケンブル先生はまるで気にしていない。


 アラスター王太子の後ろから入って来たウォーレンに、エイダが猫になったオリヴァーを指差して何やら囁いている。


 きっとケンブル先生の魔道具で猫になった事を報告しているんだわ。


「これはこれはアラスター王太子。こんなむさ苦しい所へようこそ。何か… イテッ!」


「むさ苦しいとは何よ! 大体ロナルドの部屋じゃないでしょ! 嫌なら出ていきなさいよ!」


 目を吊り上げているケンブル先生に、はたかれた頭を押さえているロナルドが、慌てて捲し立てる。


「いやいや、ただの社交辞令だよ。それにまだ魔道具を直してもらってないのに出て行けるわけないだろ」 


 ロナルドはアラスター王太子の問いかけには答えずにケンブル先生のご機嫌を取るのに一生懸命だ。


 なんか、またさっきのラブラブな雰囲気に逆戻りしそうなんだけれど、いいのかしら?


 アラスター王太子はこの二人のイチャつきには慣れているようで、ロナルドの耳を掴んで頭を引き寄せた。


「ロナルド、もう一度聞くぞ。お前はキャサリン嬢の呪いを解呪出来るのか?」


「イテテ! アラスター様、とりあえずその手を離してください」 


 ロナルドに懇願されてアラスター王太子は手を離したけれど、その顔はいたく真剣だ。


 私もこの呪いを解呪出来るかも、と思うと早くロナルドの答えが聞きたい。


 はやる気持ちを抑えてロナルドの答えを待っていたが、ロナルドはゆるりと首を振った。


「申し訳ありませんが、私には解呪は出来ません。だからこそ、不用意に呪いが視えるとは言わないのです。今、キャサリン嬢に呪いが視えると言ったのは、キャサリン嬢の呪いが不当に呪われたものだからです」


 ロナルドの答えにがっかりしたけれど、視えるから解呪出来るとは限らないのだと、自分の心を納得させようとした。


「ならば、ロナルドは呪いを解呪出来る者を知っているか?」


「魔法使いのサイモンならば、解呪出来るかもしれません。ただし、まだ生きているならば、ですが…」 


 ロナルドの言葉に一瞬喜んだものの、後に続いた言葉に愕然とした。


 生きているならば、ってどういう事?


 もしかして、もう死んじゃっていないかもしれないって事なの?


 呪いの解呪に一瞬差した光明は瞬く間に消えて行った。


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