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29 再会

 アラスター王太子と入れ替わるようにエイダがワゴンを押して部屋に入ってきた。


「キャサリン様、夕食をお持ちいたしました」


 美味しそうな匂いにお腹が空いている事を再認識される。


 ただ部屋でゴロゴロしているだけでもお腹は空くのよね。


 やっぱり私はただの穀潰しでしかないわね。


 エイダと一緒にテーブルに料理を並べて二人で食事をいただく。


 この一連の流れもすっかり定着したようだ。


 食事の後はエイダに手伝ってもらってお風呂に入る。


 一人でも大丈夫だと言ってもエイダは頑として聞き入れない。


「アラスター様に頼まれていながら、お世話が出来ないのですから、せめてこれくらいはさせてください」


 そんなふうに懇願されると、駄目だと言えないのよね。


 あれこれ世話を焼かれて、私は就寝のためにベッドに入った。




 次の日も朝食の後で、アラスター王太子が顔を見せた後、エイダも部屋を出て行き私一人になる。


(今日も本を読んで過ごそうかしら?)


 そう思いつつ本に手を伸ばすが、今一つ読書に身が入らない。


(こんなに良い天気なのに、部屋に閉じこもっていなければいけないなんて…)


 せめて庭園を散歩するくらいは許可をして欲しかったわ。


(猫の姿ならば、人目につかないかも)


 昨日のようにこっそりと窓から出入りすれば大丈夫よね。


 私は本を置くと窓を開けて外の新鮮な空気を吸い込んだ。


 少し冷たい空気が鼻を刺激してクシャミが出る。


「クシュン!」 


 ポンッと私の身体が猫に変わる。


 そのまま窓から庭園へと降り立った。


 出来れば人の姿のままで庭園を歩きたいけれど、この際贅沢は言っていられないわ。


 こうして外を歩けるだけマシだものね。


 他の部屋の窓から見られないように、植えられている植物の陰に隠れるように歩いていると、昨日の四阿の所に来た。


(今日もオリヴァーがいるのかしら?)


 ブリジットに似た顔立ちではあるけれど、可愛らしい印象のオリヴァーにまた会いたかった。


 そっと四阿を伺ったが、そこにはオリヴァーの姿はなかった。


(残念。今日はここには来ていないのね)


 昨日もブリジットが『勉強の時間だ』と呼びに来ていたから、今日も既に勉強させられているのかもしれない。


 がっかりして回れ右をしてもと来た道を帰ろうとすると、目の前に小さな靴を履いた足が見えた。


 ハッとして顔を上げるとそこには嬉しそうに私を見ているオリヴァーがいた。


「あ、昨日の猫ちゃん? 今日も来てくれたの? それにしても何処から入ってきたのかな?」


 ちょっと首をかしげながらも私に近付いて来て頭を撫でてくれる。


 この小さな手が妙に気持ちよくってたまらないわ。


 普通の猫ならば、ここで喉をゴロゴロと鳴らすんだろうけれど、私は元々人間だからね。


 そもそもどうやったら喉を鳴らせるのかしら?


 オリヴァーに撫でられるままになっていると、オリヴァーがポツリとこぼす。


「猫は気持ち良いと喉を鳴らすって聞いたけれど、君は鳴らさないんだね。もしかして気持ちよくないのかな?」


 がっかりしたような顔をするオリヴァーに私は申し訳なく思う。


 初めて猫になった時は喋ったつもりでも猫の鳴き声しか出なかったけれど、今はケンブル先生の魔道具のおかげで喋れるようになったのよね。


 けれど、その代わり猫の鳴き真似しか出来なくなったから、喉を鳴らす事も出来なくなった。


(喉を鳴らす真似ってできるのかしら? このまま私が黙って頭を撫でられていると色々と勘違いしそうだわ) 


 オリヴァーを悲しませないためにもと、私は喉を鳴らす音を出してみた。


「ゴロゴロ」


 けれど、出てきたのはどう聞いても人の声でしかない。


「え? 何、今の?」


 しまった!


 このままじゃ不味いわ、逃げなきゃ!


 けれど、逃げ出そうとした瞬間、オリヴァーにガシッと身体を掴まれた。

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