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23 陛下からの伝言

 アラスター王太子には申し訳ないけれど、早急にこの王宮を出て行った方がいいだろう。


 とはいえ、クシャミで人間と猫を行ったり来たりする以上は、ケンブル先生の魔道具が出来上がらない事にはどうしようもない。


 一刻も早くケンブル先生には魔道具を作っていただきたいものである。


 けれど、王宮を出たところで、行く宛もないし、お金もないしのないないづくしだ。


 これからどうしよう、と考え込んでいると、扉をノックする音が聞こえてきた。


「アラスター王太子、こちらにいらっしゃいますか? 陛下からの伝言を言付かって参りました」


 アラスター王太子の合図を受けて、ウォーレンが扉を開けに行った。


 一人の従者が、ウォーレンと共にアラスター王太子の前にやってくる。


「失礼いたします。キャサリン様の王宮でのご滞在期間は一週間とさせていただきます。その間に次の行き先が見つからない場合は、王宮での下働きのお仕事についていただくとの事です。また、お食事はこちらでお取りいただき、無闇に王宮内を出歩かれないようにとの事です」


 つまり、実質的に私はこの部屋に軟禁状態になるって事ね。


 そして行き先が決まらなければ、王宮で下働きって…。


 今は平民なんだから、それも当然でしょうね。


 下働きとはいえ、王宮に勤められるなんてそうそう無い事だから、有り難く思わなきゃね。


 私は陛下の伝言には納得したけれど、アラスター王太子にとってはそうじゃなかった。


「ちょっと待て! この部屋から出るなだと! しかも食事もこの部屋でなんて! それに王宮での下働きなんて、僕は認めないぞ!」


「アラスター王太子。これは陛下のみならず宰相様もお決めになった事です。アラスター王太子の抗議は一切受け付けないと仰られました。まもなく夕食のお時間ですので、アラスター王太子はこのまま私と来ていただきます」


 有無を言わさぬ従者にアラスター王太子は歯噛みをしているが、ウォーレンは冷静に対応する。


「アラスター様。ここで陛下のご命令に従わなければ、キャサリン様がアラスター様を抱き込んでいるように周りには見えます。ここは大人しく陛下のご命令に従ってください」


 ウォーレンに諭されて、アラスター王太子は渋々と立ち上がった。


「エイダ、キャサリン嬢を頼むぞ! キャサリン嬢、申し訳ありませんが、これで失礼いたします。明日また、こちらに参りますのでそれまでお待ちください」


 私はソファーから立ち上がると、アラスター王太子と目線を合わせた。


「アラスター王太子、お気遣いありがとうございます。どうか私の事はお気になさらず、王太子の務めを果たしてください」


 期限付きとはいえ、王宮に滞在を許してもらえるだけ寛大な措置を取られていると思う。


 アラスター王太子は私に伸ばしかけた手をグッと握りしめると、ウォーレンと共に従者の後をついて部屋を出て行った。


 エイダと二人きりになった部屋でソファーにもたれかかり、私はふぅっとため息を吐く。


 アラスター王太子は明日以降もこの部屋に来るつもりのようだが、恐らく周りはそれを許してはくれないだろう。


 むしろ、これを機に他の令嬢との婚約話が浮上してくるかもしれない。


 今まで婚約者が決まっていなかったのが不思議なくらいだものね。


「キャサリン様、大丈夫ですか?」


 私が黙り込んだのを見て、これからの事に不安を抱いてると思ったのかもしれない。


 確かに不安はあるけれど、行き先が決まらなければ王宮で雇ってもらえるのだから、その点は心配していない。


 前世では普通にバイトをしたり、家で自炊をしたりしていたから、働く事には何の躊躇もない。


 …人前でクシャミが出ない限りはね。

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