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20 ヤマトナデシコ2変化(へんげ)

 私の絵姿についてアラスター王太子の約束を取り付けると、エイダとウォーレンはやれやれと肩を竦めている。


「アラスター様。魔道具を作るのでしたらやはり、キャサリン様がどのように猫に変化するのかを見ておきたいです」


 祈りを捧げていたケンブル先生が、またしても私に近寄ってくる。


 その勢いにはたじろいでしまうけれど、魔道具を作ってもらうためには仕方がないだろう。


 エイダにコヨリで鼻をくすぐられてクシャミをすると、ポンッという音と共に私は猫へと変化した。


 着ていた服に埋もれていた私を、ケンブル先生がワクワクした顔で抱き上げる。


「まあ、本当に猫になってしまいましたね。ほおぉ、なるほどなるほど…」


 そんなにしげしげと見られると、いくら同性でもちょっと恥ずかしいわ。


「ケンブル先生、少しは遠慮してもらえませんか?」


 エイダにたしなめられて、ようやくケンブル先生は私を離してくれた。


 やれやれ。


「おや、普通の猫ならば、触られた後で毛づくろいをしたりするんですが、やはりキャサリン様が猫になったからか、毛づくろいはされないんですね」 


「ニャー(はい)」


「それに返事は猫の鳴き声になるというのは本当ですね。それでは人間に戻ってもらえますか?」 


 ケンブル先生は簡単に言うけれど、アラスター王太子とウォーレンがいる前で人間には戻りたくないわね。


「キャサリン様を人間に戻すのでしたらアラスター王太子とウォーレンには、席を外していただきましょうか」


 エイダに言われてアラスター王太子はちょっと口を尖らしかけた。


 けれど、私を含め女性陣にじっと見つめられて、アラスター王太子は『どこでも◯ア』のノブを掴んだ。


「自室に戻る」


 そう言って扉を開けると、先程のアラスター王太子の部屋が現れた。


 アラスター王太子はウォーレンを扉の向こうに押し込むようにして出て行った。


 バタン、と扉が閉まると、ここにいるのは私達女性陣だけになった。


 ケンブル先生が大きめのタオルを持ってきて猫の私を顔だけ出して包んでくれた。


 クシュン!


 クシャミと共に私は元の人間の姿に戻る。


 包んでいたタオルがずり落ちそうになって、私は慌てて手で押さえた。


 同性同士とはいえ、一人だけ裸っていうのはやっぱり恥ずかしい。


 銭湯だったら、みんなが裸だからそれほど恥ずかしいとは思わないんだけれどね。


「赤信号、みんなで渡れば怖くない」ってやつかしら。


 エイダに手伝ってもらって服を着た時はホッとした。


 こんな手間暇を無くすためにも魔道具は必要だわ。


「猫にも人間にも着いていて不自然でないもの…。声を出せるようになるもの…。なおかつ、服を着た状態に出来るもの…」


 ブツブツとケンブル先生が顎に手を当てて考え込んでいる。


 ケンブル先生の邪魔をしないようにしつつ、部屋の中をキョロキョロと見渡していた。


 すると、部屋の片隅にある『どこでも◯ア』が淡く光って、遠慮がちに薄く扉が開いた。


「キャサリン嬢。もう、そちらに行っても大丈夫だろうか?」


 私が服を着終えたタイミングを見計らっていたようで、アラスター王太子が声をかけてきたのだ。


「はい、もうこちらに来られても良いですよ」


 私の返事が終わらないうちに、扉が大きく開いてアラスター王太子が入ってきた。


 どれだけ待ち遠しかったのかしら。


 アラスター王太子は、私の姿を見て少しばかり口角を上げる。


「猫のキャサリン嬢も可愛いけれど、やはり僕はこちらのキャサリン嬢の方が好きだな」


 そんなおべっかを言われても、絵姿の件はきっちりと話し合いますからね。

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