0章-4
2日目が始まった。昨日と変わらず観客の殆どが獣人であり、エリーヌ゙に冷たい視線を向ける者もいるが、エリーヌ゙に対して期待の眼差しを向ける者もいない訳ではなかった。
観客の暖かい視線を見ると、エリーヌ゙は「応援されてるんだ」と感じ、活力が湧いてくるのである。
隣にいる「思いやりと正義感に溢れる世界」というマニュフェストを掲げる、ウレーニャという獣人が
「この世界は様々な差別と偏見で満ち溢れています。
例えば獣人の不当優遇、一部獣人の人間に対する高圧的な態度やそれを全く注意しない人々。
こういった行動は、他者に対する配慮や思いやりが欠けているし、そういった行動は無くしていくべきだと思います。
みなさんも、弱者を思いやる心と、駄目なものは駄目だとはっきり言える勇気を持ちましょう」
と演説するので、エリーヌ゙も負けるまいと
「この世界は獣人というだけで不当に優遇され、人間というだけで不当に冷遇されています。こんな理不尽、許されてよいのでしょうか。私は人間も獣人も、個人の実力で決まる世界を望みます」
と演説する。
その演説を聞いた瞬間、エリーヌとウレーニャが互いに互いを睨み合う。お互いの発言が、かなり似偏っているように感じたのだ。
「なんですかそのパクリみたいな文章は」
「そっちこそ」
と、小学生並に醜い口喧嘩を始めるが、宥める者は誰もいなかったし、観客も「元気があるなー」と感じながら、一歩引いた目線から見物しているだけであった。
結局、2人とも折れて謝罪したから良いものの、もし折れていなかったら、その人に対する観客からの信頼は間違いなく無くなるだろう。
政治家たる者、そこら辺のリスクを計算して動かなければならないのだ。感情で動いて口喧嘩など、はっきり言ってみっともない。
選挙活動2日目はこれといった進展も無く終わったが、エリーヌの目に後悔は無かった。毎日一生懸命演説しているからである。ウレーニャも同様だ。
ある観客はウレーニャとエリーヌ゙の演説を「ウレーニャさんは理性に、エリーヌ゙さんは感情に訴えかけている。優劣はつけられないが、個人的な意見としてはどちらも応援したい」と評価したが、その観客の中では何方を応援歌するかは既に決まっていた。




