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エリーヌ゙が斬る  作者: 中島
0章
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0章-3

 待ちに待った選挙運動解禁日。様々な人間や獣人が自身のマニュフェストを公言する中、その大群の中にエリーヌの姿があった。

 

 周りの立候補者が、「種族による差別のない世界」や「思いやりと正義感に満ち溢れた世界」といったマニュフェストを掲げる中、エリーヌは「人獣平等」というマニュフェストを掲げていた。

 

 観客は、愛想笑いを含めながら全員のマニュフェストに耳を傾けて聞く者、獣人のマニュフェストのみ真剣に聞く者など様々であったが、人間であるエリーヌのマニュフェストに対して、とある獣人が「おい、今の世界は人獣平等だろ。何勝手に人間優位の世界にしてんだ!」と声を荒げた。

 

 その言葉を聞いた瞬間、エリーヌは怒りが込み上げて来そうになったが、ぐっと我慢した。


 「おい、なんか喋ろよ根暗!どうせ自分たち優位の世界を作って、優越感にひたりたいだけだろこの陰険野郎」 

 

 獣人はエリーヌを罵り続ける。ただ演説しているだけなのに、何故このような事を言われないといけないのかとエリーヌは思ったが、そんな事を気にしても仕方がないので、演説を続けることにした。


 この姿を見た獣人の中には、エリーヌに投票することを検討するかもしれないというコメントを残す者も現れ始めた。


 というのも、今までの人間の立候補者は、獣人から罵られた際に、罵り返す者やすいませんと謝罪する者、気持ちが切れたのか翌日から参加しなくなる者ばかりだったせいか、彼女の精神的な強さにぐっと惹かれたのである。

 

 結局、エリーヌは獣人の観客から小石を投げつけられたり、罵詈雑言を浴びせられたりしたが、挫けたり怯んだりすることなく演説し続けた。精神的な強さの賜物である。


 ある獣人の観客はこう言った、「ロイさんは、人間と獣人が共生する差別のない世界を目指すとは公言していたが、あまりにも今の世界は獣人優位すぎる。昨年も議員だったのに、なにも改善されていないんですよ。

 ウレーニャさんは思いやりと正義感に溢れた世界を目指すと言っていたけど、今の世界に思いやりもクソもないし、良いことは良い、悪いことは悪いなんて一言も言える社会じゃないですよ。そう考えると、その点においてエリーヌさんは良いですね。人獣平等を掲げているけど、彼女の目は他人に何か訴えかけているように見えるし、彼女なら公言したことを普通に実行しかねん。

 というか、有言不実行の政治家が多すぎるんじゃ」と。どうやら獣人の中にも、獣人というだけで不当に優遇され、人間というだけで不当に冷遇されるこの世界をあまりよく思わないものもいるらしい。


 選挙運動1日目が終わったが、現状として〇〇に投票したいといった声は挙がってこない。どうやら今年は豊作の年だったのだろう。


 


 

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