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エリーヌ゙が斬る  作者: 中島
0章
1/7

1

  「すいません」

 

 とある人間の店員が小さな声を上げる。

  

 「なんや貴様、人間のくせに要望に応えることも出来ないんか」

 

 獣人の客が声を荒げると同時に、周囲の客も店員に向かってブーイングし始めた。


 「そうだそうだ」

 「ブーーーー」

 「ちゃんと温かいコーヒーを出せ」


 どうやら、人間の店員が淹れたコーヒーの温度が少し緩かったらしく、そのことに対して獣人の客が不満を述べた所、周囲の野次馬も客に同調したということだろう。


 実際、ブーイングだけでは飽き足らず、店員に対して中指を立てる者、店員に対して自身の私物を投げつけるものまで現れ始めた。

 

 「もうやめてください、反省してますから」


 人間の店員が謝罪の言葉を口にするものの、その言葉を聞き入れた者は誰一人としておらず、現場は謝罪する前と全く変わらなかった。

 

 「あ、ほんとに反省しとるんか?ほんとに反省しとるんならこの場で全裸になれや!」

 

 ぬるいコーヒーを出された事に激怒した獣人の客が声を荒立てる。周囲の状況を見ると、この場所に店員の味方は誰一人としていないと思われたが、そうではなかった。


 「あ?店員が気に入らないからって好き勝手すんじゃねーぞこのやろー」


 どこからかエリーヌの声が響く。獣人が声の主の方を向くと、そこには人間の女の顔があった。  

 その顔を見た瞬間、獣人は大きな声で「あ?人間の女のくせして、なに俺等獣人様にけちつけてんだよ」と捲し立てる。 

 

 周囲の野次馬も獣人の客に同調し、エリーヌに対してブーイングをし始めた。

 

 はじめのうちはこれと行った問題はなかったのだが、途中からエリーヌ自身の悪口や罵詈雑言などが飛び交う。

 この時点でエリーヌはかなり怒りを堪えていたが、野次馬の「身分を弁えろクソヤロー」という言葉に鋭く反応したのだった。


 「あ?獣人だからって何でもありなんですか?全く、獣人様はほんとに偉いんですねー。

 そんなに偉いんなら自身で沸かせや、種族に縋ってるだけの弱者が!」

 その言葉を聞いた瞬間、野次馬が全員店を離れていく。野次馬は全員金を払わなかった。

 

 その後、その場に残った店員が「ありがとうございます」とエリーヌに感謝を示したが、エリーヌは「いえいえ、大丈夫ですよ」と口にした。


 その後、エリーヌはコーヒーを注文、店員と談笑しながらコーヒーを飲んだ。

 

 人間に対して高圧的な獣人、話さえ聞いてもらえない人間、これが社会の現状である。

 

 

 

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